かく、ということ
私は文章を書くことを生業としている、はずだ。
幼い頃から本を読むことが好きでその続きを想像したり、書いてみたりするのが好きだった。
そうしているうちに少しずつ文章を書くことが人生の1部のようになってきて、私はいつかこれで生活するんだ なんて思っていた。
今私はフリーターをしている。中途半端に単位が取れず大学に通いながら週4-5で働いてひとり暮らしをしている。
社会人になるとひとは創作から離れてしまうなんて聞いていて、それを私は恐れていたけれど、おおむね、そのようになってしまった。
本当はやりたいことがたくさんある。書きたいものがたくさんある。描きたいものがたくさんある。
そのはずなのに"生活"で精一杯になって帰ってから創作をする余裕なんて気づけばなくなってしまっていた。
仕事を悪とは思わない。それは生きるために大切なものだ。今の仕事も嫌いではない。たまにいやなこともあるけれど、それでも環境に恵まれていると思うし好きだ。
ただ、ずっと、このままでいいのかという漠然とした不安だけが私を襲ってくる。
私が本当にしたいのはつくることなのに、という焦燥感と、どちらにせよ働くのであれば私はこのままフリーターでいいのだろうか、真っ当に正社員に就職した方がいいのではないかという焦燥感と。
今の生活は好きだ。職場も好きだ。今には概ね満足している。それに対していちばんやりたいことができていない現状と、フリーターという不安定な地盤が枷となって私を締め付ける。
かく、ということ。
つくる、ということ。
それがいちばん好きなはずなのにどうにも手が届かないものになってしまった。
昼から夜まで働いて、帰ってきたら家事をして、そうして次の仕事の時間まで眠る。休日は大学へ通って、自分で決めた生活を自分で責めている。
いま、に満足すればするほど、私の心の奥の私が本当にこのままでいいのかと問うてくる。
私、たった一年前、美大を卒業した時には創作で生きていきたいなんて、思っていたはずなのに。
好きな人に言われた、やりたいことをやったほうがいい、と、現状維持じゃなくて、と、本当に好きなことで生きている人に言われた言葉が私の心の奥の私を掻き立てている。
本当は、本当は、すきなもののデザインをしたいし、動画とかもつくりたいし、自主制作もしたいし、文章も書きたい。
その時間が無いというのは逃げで、働きながらも捜索している人はたくさんいる、けれどそれが私にはできない。ひとびとが眩しくて目が眩みそうになる。
かくことが生業のはずなのにその私から生業を抜いて、それでも生きている。
創作は逃げ場だと言う動画を見た。
創作というのは普通に生きられない、それでも才能のある人の受け皿だと。
創作でしか生きられないという使命感は人を生かすと。
くるしいけれどそれは確かにそうだと思った。
私も一時期は私には創作しかないと思っていたしこれでしか生きられないと思っていた、そのはずなのに私は今フリーターとして生きている。
本当は「フリーランスアルバイター」ではなく「フリーランスデザイナー」とかになりたいのにね。
自分に対して皮肉的な言葉を思ってはまた仕事へ行く。
なんの生産性もないのではないかという自責に対して創作も生産、ではないでないかとわらってみる。
お金が無くちゃ生きていけない、でも好きなことをしなくちゃ生きていないのと同じだ。
中学生の頃、外国人の英語の先生が授業で言っていた言葉を思い出す。
「私は昔、ITの企業で働いていた。その時は今の3倍のお給料を貰っていた。それでもわたしはやっぱり好きなことをしたいと思って先生になった。今は昔のお給料の1/3だけれど、それでも今が1番たのしいし今を後悔していない。みんなだったらお金と好きなこと、どちらをとる?」
中学生の意見はお金をとる、が大多数だった。
「好きなことをすることが幸せなんだよ」
その先生は私たちの卒業後しばらくして病気で亡くなったのだと後に聞いた。
彼はその人生に満足していたのだろうか、後悔していないのだろうか、お金より好きなことをとった人生はどうだったのだろうか。
たくさん聞いてみたいことがある。私も今からそれになれますか?
病院に行く道でこんなことを書いては電車で泣いている。
泣くなんてことは私は本当は現状に満足なんてしていないのではないか。
本当は絵もデザインも文章もぜんぶしたい。
つくることで生きて生きたい。
つくることで生きている好きな人間たちが眩しくて羨ましい。
彼彼女に羨望を抱くままではいたくない。
背中を押してくれる人が居るうちに、私は、前に進まないともう分岐点には戻れないのではないか。
安定性を求めて今の生活から就活をしようとしていたけれど、ほんとうにしたいことは作る方では無いのか。
もうなにもかも、どうしたらいいのかわからない。
すべての選択肢の人生を歩みたい。体が3つほしい。すべてをしてみて、すべてを経験して、そして最後にどれかを選びたい。
時間が足りない。やりたいことが多すぎる。
今のままの私と、就職した私と、創作をつきつめた私と、すべての未来が欲しい。
私って、どうすればいいですか?
かく、ということ。
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