エルデシュ 007



身長一六八センチ、体重六〇キロのエルデシュは、薬物中毒者特有の、しなびた張りのない顔をしていたが、友人たちはかれの様子がアンフェタミンを常用する前から虚弱そうでやつれた感じだったと言う。髪は白く、縮れた頬ひげが変な角度ではえていた。たいてい、灰色のピンストライプの上着に暗い色のズボン、赤かカラシ色のシャツ、あるいはパジャマの上着を着て、サンダルか穴がたくさん開いた妙なハンガリー製の革靴を履いていた。この革靴は扁平足で腱の弱いエルデシュのために特別にあつらえられたものだった。手持ちの衣装はすべて小さなスーツケースひとつに収まり、さらに時代遅れの大きなラジオが十分入るほどのスペースが残った。持っている服があまりにも少ないので、かれを泊めた人たちは一週間になんどもかれの靴下や下着を洗わなければならなかった。
「もっと買いたすか、自分で洗うことだってできたはずなんだ。だって、洗濯機の使い方を学ぶのにIQは全然必要ないんだからね」と仲間のひとりは言った。だが数学以外のことに、エルデシュはかかずらおうとしなかった。こう言ったことがある。「フランスのある社会学者が、私有財産を持つのは盗みに等しいと述べておる。わしに言わせりゃ、私有財産はわずらわしいたけさ」

ポール・ホフマン『放浪の天才数学者エンデシュ』、訳平石律子、株式会社草思社、2000年、11ページより引用



とりあえず、エルデシュの人となりは参考になりそうなのでメモっておく

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