エルデシュ 004




エルデシュは数学のために最大限の時間を割けるよう生活を作りあげていた。かれを縛る妻も子供も、職務も、趣味も、家さえ持たなかった。粗末なスーツケースひとつと、ブダペストにある大型百貨店セントラム・アルハズの、くすんだオレンジ色のビニール袋ひとつで暮らしをまかなっていた。
すぐれた数学の問題と新たな才能を探す終わりのない旅を続けながら、エルデシュは四大陸を驚異的なペースで飛びかい、大学や研究センターを次々と移動して回った。知り合いの数学者の家の戸口に忽然と現れ、「わしの頭は営業中だ」と宜言する。そして、一日か二日、かれが退屈するか、かれを泊めてくれている数学者が疲れきってしまうかするまでいっしょに問題を解く。それから次の数学者の家へ移るという具合だった。

ポール・ホフマン『放浪の天才数学者エンデシュ』、訳平石律子、株式会社草思社、2000年、10ページより引用



これは導きの星の参考になりうる。このくらいの生活スタイルを表現する。芸術家として。


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