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YouTube参考資料)ベトナム語基礎講座⑤ ベトナム語は漢字で書ける 「注意」「武器」通じる言葉も

 フーおじさんのベトナム語基礎講座をご視聴いただき、ありがとうございます。今回ご説明したいのはベトナム語の6〜7割は漢字で書くことができる、ということです。発音が難しく、日本人からはハードルが高く思えてしまうベトナム語ですが、漢字でイメージすると一気に理解が容易になります。

 まずベトナム語が現在のラテン文字(アルファベット)で表記されるようになった歴史的経緯をおさらいしましょう。ベトナムは1884年にフランスの保護国となり、1887年にはカンボジア、ラオスと共に「仏領インドシナ」として植民地化されました。これを機にベトナムではアルファベットを使った表記法(Chữ quốc ngữ=チュ・クオックグー)が広まっていきました。

ベトナム語とベトナムの主な歴史.001

 文字を変えるというのは大転換で、国民の猛反発を喰らいそうです。もし米国が大戦後に日本でローマ字表記を要求したとしたら、大変な騒動になったことでしょう。もちろん、ベトナムでも反発はありました。フランス政府は建前上、難しい漢字を使った表記法(Chữ Nôm=チュ・ノム)では識字率が低いままであるからアルファベット表記に変えると説明したようですが、根底には将来のフランス語公用語化がありました。

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 20世紀に入り、ベトナム人の考え方は変わってきます。チュ・クオックグーを敵視するのではなく、識字率を高めれば国民の学力、知性も向上し、フランスに対抗し得る人材を育成できると考えるようになってきました。1906年には初めての漢文、チュ・クオックグー併記の新聞『大越新報 (Đại Việt tân báo)』が創刊され、ベトナムの識者によるチュ・クオックグー教育も普及していきました。

 ベトナム教育訓練省によると、2020年時点のベトナムの識字率は97.85%。東南アジアでは一人当たりGDPが日本を上回るシンガポールと並びトップクラスです。東南アジアで最も文字を変えなかったカンボジアは81%(2015年、世界銀行調べ)にとどまります。 

 ベトナム語は言語学的には「南アジア語族」「オーストロアジア語族」と言われますが、源流は間違いなく中国語です。漢字と、漢字をベースにしたチュ・ノムを長年使い、民族的にも文化的にも中国の影響を強く受けています。中国南部で話される広東語と特に似通っており、「不動産(bất động sản)」など発音が似た単語も多いです。

 ベトナム語の6〜7割は中国語由来の「漢越語」です。漢字がわかる我々日本人にはこの点は大きなアドバンテッジとなります。以下の表を見てください。

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 ベトナム語と日本語は母音も違うし、全く同じというわけには行きません。しかし、だいぶ覚えやすくなると思いませんか?上の表では日本語と意味も発音も同じになるものを選びましたが、そうはならない単語も多いです。例えば「零」も「冷」も「礼」も日本語の音読みでは「レイ」と読みますが、ベトナム語では零がlinh、冷がlạnh、礼がlễと読みます。こうしたベトナム語特有の読み方の癖は上達するに従って自然に覚えられます。

 ベトナム語の単語は発音が難しい上、記述する上でも母音記号と声調記号が合わさって複雑です。しかし、漢字をイメージすると不思議と記憶しやすくなります。まずはベトナム語と思わずに、漢字なんだと思うことで拒否反応をなくすことができるはずです。私もいまだに新しい単語に出会うと語源の漢字を調べます。その方法については改めて説明します。

*フーおじさんのベトナム語基礎講座⑤ベトナム語は漢字で書ける 「注意」「武器」通じる言葉も



 

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