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『艦女バトルライン』第四話

第二拠点・軍病院最上階の病室
うつろな目のムサシがベッドに横たわる。
「やれやれ、ウチの主戦力が病気療養か…」
花束を持って病室に入るキョウジ。
花瓶の花を手慣れた手つきで変える。
棚には子供達とムサシとナガトの写真。

扉絵・アニメ系イラストのように、
寮の大部屋で思い思いにくつろぐ
トルーパーズ。

「何?この忙しい時に探し物だって?」
第二拠点・参謀室。
司令官参謀のミツヒデ名誉少将のデスク。
「はい、これがシンゲン名誉大将の依頼書です」
マコトが数枚の書類をミツヒデに手渡す。
「あぁ〜艦女サマの案件ね。
 ウチは口出し出来ないから勝手にやってよ」
手早く半を押すと、書類を返すミツヒデ。
「いいご身分だね、ホント」
小さく嫌味を言うミツヒデ。
参謀室を後にするマコト。

第二拠点・人間軍基地(屋外)
マコトとナガトが歩いている。
「なんだありゃああぁ!むっかっつっくぅー!」
怒りをあらわにするナガト。
「うん、部屋に入らなかったのは正解だったね」
表情を変えずに書類を見るマコト。
「キミは思う所ないの!?同僚でしょ!?」
マコトに食ってかかるナガト。
「苛立ちをぶつけて解決出来るならそうしてる。
 あぁ、ここだ」
マコトは立ち止まり、見上げる。
マコトにぶつかりむぎゅってなるナガト。
建物の入り口に「兵站部」と書いてある。

「ロケット」
と、兵站部の男性隊員。
「ロケット」
と、マコト。
「首にかける方です」
「あぁ〜!はいはい」
男性隊員が書類を何枚も出しガサガサやる。
「あーホントだ。
 ムサシ大佐の荷物と取り違えてますね。
 これもう持ってっちゃってるな…
 一筆書くんで、
 これ持っていって取り替えてください」
マコトはロケットひとつと書類を渡される。
「六五一四番!第十二兵舎まで案内して」
呼ばれた少年兵がピッ!と敬礼する。

三人で基地内を歩く。
「そういえばトルーパーズの兵舎は、
 行ったこと無いな〜」
ナガトがポツリとつぶやく。
「あまり楽しい所ではないですよ」
先頭の少年兵が笑顔のまま言う。
「でも部屋の使い方って個性出るじゃない」
とナガト。
「ここですね」
壁に囲まれた広場の前で立ち止まる。
広場には寝袋がきれいに並んでいる。
「え?兵舎だよね?」
動揺するナガト。
「ええ、書類上は。おーい」
寝袋に入っていた数人の少年兵と、
六五一四番が二、三言葉を交わす。
帰ってくる六五一四番。
「ロケットを持っていた兵士は
 戦死したみたいですね。
 片付けた時も
 それらしい物はなかったそうです」
「じゃあ処理場かな」
「それしかないですね」
マコトと六五一四番が言葉を交わす。

第二拠点・死体処理場。
「ゔっ…」
「マスクは外さないでくださいね」
ナガトが臭いに顔をしかめる。
念を押す六五一四番。
三人はマスクと胴付長靴を着け、
場内を歩く。
トラックで運ばれてきたトルーパーズの死体が、重機で焼却炉に放り込まれる。
「何これ…ゴミ処理場と間違えてない?」
「いやまぁゴミではあるかも」
「ゔっ…」
ナガトの問いに六五一四番が返す。
えずくナガト。
三人は詰所に向かう。

「…で」
こわばった表情のナガト
「ホントにここから見つけるの…?」
処理場の一角、目の前には死体の山。
「週末までの戦死者はここだけですからね」
「人死にが少なくてラッキーだね」
「いやそうじゃなくて」
六五一四番とマコトにツッコミを入れるナガト。
「ムサシのためなら
 なんでもするって言わなかった?」
表情を変えず山に手を突っ込むマコト。
「ここまでしなくても…
 うまくいくとも限んないし…」
立ちすくむナガト。
掘り返しながらマコトが口を開く。
「昨日気づいたんだけど」
マコトの言葉に首をかしげるナガト。
「調子が狂うんだよね、
 あの悪辣で無邪気な笑顔が見れないと」
「それって…」
ナガトの目の色が変わる。
「てか
 これくらい大したことじゃないんじゃない?」
死体の山を前に笑顔を浮かべるマコト。
ナガトの血の気が引く。

第二拠点・街中
マコトとナガトが歩いている。
「あ〜苦しかった…空気がおいしい…」
涙目でナガトが言う。
「で、これがムサシちゃんのロケット…」
ナガトが開くと、子供達の写真が入っている。
「こっちは?」
ナガトが開くと、カプセルがひとつ。
「あぁ、ダメダメ、それは処分するから」
マコトがナガトからロケットを受け取る。
「なんか…トルーパーズの扱いってあぁなの?」
そっぽに目線だけ向け、
唇をかみしめてナガトが言う。
「艦女が知るべきことじゃないかもね」
平然と返すマコト。
「それよりマコトちゃん
 人間軍のこと詳し過ぎない!?」
ナガトが人差し指を立ててマコトに詰め寄る。
「それはまぁ…うん…」
両手をかざし、
バツが悪そうにそっぽを向くマコト。
「でもまぁ、
 これがあればちょっとは違うかもね」
ロケットをかざして言うナガト。
キラッと光るムサシのロケット。

第二拠点・軍病院最上階の病室
ベッドの上で半身を起こし座っているムサシ。
マコトとナガト、キョウジもいる。
ムサシがロケットを開く。
ロケットは中空に映像を映し、音声を再生する。
映っているのは第一拠点の子どもたち。
「むさしおねーちゃんのかつやくみたよ!」
「かっこよかったー!」
「こわいじゅーじんから
 まもってくれてありがとう!」
無言で涙を流すムサシ。
(いつ撮ったの?最近の映像だよね?)
(ついさっき通信して送ってもらった)
(やるじゃん)
小声で話すナガトとマコト。
「い…行かなきゃ」
つぶやくと、べッドを飛び出し走り出すムサシ。
ナガトが一足飛びで追いつくと、
モップをフルスイングして首筋に叩きつける。
粉砕するモップ。
バランスを崩して転ぶムサシ。
「バッカあぶねーだろ!殺す気か!」
仰向けでナガトに顔を向け叫ぶムサシ。
「いったいどこへ行くつもりだったのよ」
ため息をつくナガト。
「憎まれ口叩けるならもう大丈夫よね」
折れたモップの柄を投げ捨て言うナガト。
「おぅ!人間軍全員、守ってやるぜ!」
倒れたままガッツポーズをして笑顔のムサシ。

第四話 "病める"艦女と"歩く"艦女 完

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