なぜ歯を削る時「キュイーン」という音が発生するのか?

皆が苦手な「キュイーン」という機械音

歯を削る時の「キュイーン」という音が苦手・・・これも問診表によく記載のある言葉です。そうですよね、あの甲高い機械音。黒板を爪でひっかく音並みに不快といわれる音の代表です。気持ちは理解できます。私たちは慣れていますが、久しぶりに歯科医院に来院する方には身構えてしまう音かもしれません。ついでに、音以外ですと歯科医院独特のあのツンとした薬品風のにおいも苦手という人も多いですね。

あの「キュイーン」音が発生する理由は?

そりゃ、無音の切削器具があれば私もぜひ採用したいです。あの歯を削る機械の名前は「タービン」とか「コントラエンジン」と言います。他にもいくつかありますが。人間の天然の歯ってすごい固いんですね。だから歯を削るチップ(バー)には、とっても硬いダイヤモンドの粒子がコーティングされています。ダイヤモンドの粒子を身にまとったチップを高速回転させるパワーを用いて、ようやく人の歯ってなんとか削れるようになるんです。歯が、いかに固いかが理解いただけるかと思います。すごいでしょ?だから高速回転させるにはパワーが必要なんです。その時に発生する音が、例の「キュイーン」音なのです。

痛さを増幅する?

あのキュイーン音を聞いているだけで痛くなるとおっしゃる方もいます。もちろん、音に痛みを誘発する実成分なんてないのですが、痛みのある処置は切削を伴っている時の場合が多く、音が痛みを誘発しているという錯覚に陥りやすいのでしょう。梅干しを見ると唾液が出る・・・みたいな。

「キュイーン」音の有効な対策は?

あの「キュイーン」音は回転数にある程度比例します。完全な無音にはできませんので、可能部位では、回転数を下げて行うことがあります。あとは少数派でしょうが、ヘッドフォンで好きな音楽(もしくはリラックス音)を聴きながら治療を行う歯科医院もあります。大きな音には大きな音で制するということですね。ただ、そういう防音の準備が歯科医院側にあっても、実際は「そこまでは結構です」と遠慮される患者さんが大多数です。それに、音は多少マシにはなっても根本的な、歯に伝わる振動や痛みの加減には関りませんので気休め程度なら必要ないとのことです。ただ、今の所本当にあの苦手な音を無くしたいという一番現実的かつ効果的な方法は「笑気麻酔」ですね。音を無くすというよりは、音を聞いている自分を音に平気にしてしまうという状態に近いです。笑気麻酔を取り入れている歯科医院であれば、これが一番効果的です。笑気麻酔の詳しい機序やお話はまた別の機会にしたいと思います。

以上のように、最近の歯科医院では様々な手法や麻酔を用いればある程度の音や痛みは軽減できますので、歯科医院からしばらく遠ざかっている人はぜひ少しの勇気を振り絞ってお越しいただきたいものです。

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