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ミズホメディーの業績分析(2021.1.4)

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当記事はミズホメディーの業績を個人投資家の視点から分析したものです。
あくまでも、個人的に分析して備忘録を兼ねて記載したものであり、投資の助言や推奨を行うものではありません。
投資は自己責任でお願いいたします。

当記事は、ミズホメディーの業績分析を、現時点で開示されている情報、およびIR部門への問い合わせから得た情報をもとに独自に記載したものです。


<目次>
1.ミズホメディーの事業内容
2.2020.12期3Qまでの実績と通期会社予想について
3.2020.12期の業績予想を深堀する
・ミズホメディーの四半期における損益分岐点を類推
・新型コロナ検査薬の利益率を類推
4.新型コロナ検査薬について
・ミズホメディーの新型コロナ検査薬は厚生労働省お墨付き
・研究用にしか使用できないというのは誤解
・CT数は新型コロナ検査では妥当な水準
5.IR部門への問い合わせから得た情報
・スマートジーン出荷状況について
・新型コロナ検査薬の月10万テストへの増産体制構築について
・2020.12期の業績見込みについて
・2021.12期の業績見込みについて
6.2021.12期の業績について考えてみる
・インフルのミズホメディーから、コロナのミズホメディーへ
・最大値となった場合の破壊力は衝撃的なレベル
7.2021.12期の業績を左右する事象
・まずは、2020.12期の通期業績が重要
・新型コロナ検査機器購入の補助金制度は期間延長されるのか
・新型コロナ検査の保険点数の低下は利益を激減させる

(2021.1.16 追記)
8.ミズホメディーと国との約束ごと
・新型コロナ検査薬の増産体制の早期構築は国と約束した使命である

(2021.1.22 追記)
9.ミズホメディーの新型コロナ検査薬は「研究用」認可のみ、販売への影響はないのか
・「体外診断用」としては未認可である
・「体外診断用」未認可の製品を販売することに問題はないのか(IRへの問合わせ結果)
・新型コロナ検査薬の「体外診断用」と「研究用」の違いについて(厚生労働省問い合わせ結果)
・ミズホメディーの新型コロナ検査薬が「体外診断用」として未認可である理由(厚生労働省問い合わせ結果)
・「研究用」検査薬の販売や保険適用の考え方、今後の見通しについて(厚生労働省問い合わせ結果)

(2021.2.11 追記)
10. 2020.12期本決算の分析
・2021.12期の会社予想は、上場来の最高年商、最高収益を更新の見通し
・2020.12期の実績について考えてみる
・2021.12期の業績予想について考えてみる
・2021.12期の下期偏重の利益予想は、新製品投入の予感

(2021.2.17 追記)
11.今期業績予想等に関するIR部門への問い合わせ結果
・現在のスマートジーンの出荷状況について
・新型コロナ検査薬の今後の価格、新型コロナ検査の保険点数の見通し
・今期業績予想について
・新型コロナ迅速診断キット(抗原検査)について

(2021.3.10 追記)
12.2020年12月期決算補足説明資料に関するIR部門への問い合わせ結果
・問い合わせ内容と回答内容(QA形式で記載)
・問い合わせで得た要点の整理



1.ミズホメディーの事業内容

ミズホメディーは感染症抗体、ホルモンなどの体外検査用医薬品の専業会社であり、事業内容は下記の3つに大別されます。

(1)診断薬事業
医家向け体外診断用医薬品並びに体外診断用医療機器の開発製造販売、それにおける学術的・技術的サービス及び情報提供、輸出入
(2)ヘルスケア事業
OTC(薬局・薬店)向け検査薬の開発製造販売
(3)アグリ事業
植物(カンキツ)のウイルス検出試薬の開発・製造販売

最近の有価証券報告書における業績開示は、下記に大別して行われております。
(1)病院・開業医分野
①インフルエンザ検査薬
②その他感染症検査薬
(2)OTC・その他分野

なお、今後のミズホメディーの業績の鍵となる、2020.8に発売を開始した新型コロナ検査薬は、2020.12期3Qの有価証券報告書では、上記(1)②その他感染症検査薬に分類されております。

今後、新型コロナ検査薬の売上が伸びた場合は、②その他感染症検査薬から新型コロナ検査薬が分離して、「新型コロナ検査薬」という新しい項目ができるのではないかと思います。


2.2020.12期3Qまでの実績と通期会社予想について

それでは、2020.12期の業績分析から記載します。
ミズホメディーの2020.12期3Qまでの実績と通期会社予想は以下のとおりです。

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3Qでは赤字幅が2Qから拡大しましたが、同日に発表された通期会社予想では黒字での着地が予想されています。

上記を四半期ごとの業績に分解すると以下となります。

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4Q単独では大幅な黒字予想となっています。

ミズホメディーの今後の業績を予想するうえで、2020.12期の通期会社予想は大きな鍵となります。

2020.12期のミズホメディーの業績が落ち込んだ理由は、新型コロナの流行により、病院への受診控えがおこり、患者数減少による検査薬全般の売上が減少したためです。

ミズホメディーが4Qの予想をどのように算出し、通期会社予想を出したのか。算出根拠は妥当なものであるのか。

これを解明することが、今後の業績予想の第一歩となります。

2020.11.9に開示された「通期業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ 」によると、通期会社予想の前提は以下のとおりです。

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つまり、ミズホメディーが通期予想を行う際に4Qの業績予想の前提とした事項は、以下のとおりです。
①インフルエンザ検査薬は前年同期の30%程度
②その他感染症項目の検査薬は前年同期の50%程度
③2020.8に発売を開始した新型コロナ検査薬は月当たり3万テスト

既存薬に関しては、前期までミズホメディーの売上の50%程度を占めていた主力商品であるインフルエンザ検査薬は前年同期の30%、その他検査薬は50%という、かなり抑えた前提です。

また、新型コロナ検査薬については、3Qの決算短信で開示された約1か月間の売上実績2億4900万円(3万テスト)×3か月が4Qの前提となっています。

この前提に対して、実態はどうだったのかは、後述するIR部門への問い合わせのところで記載していますが、ここで、もう少し2020.12期の業績予想に関して深堀を行ってみます。


3.2020.12期の業績予想を深堀する

この分析を行う目的は、以下の2点です。
①ミズホメディーの四半期における損益分岐点を類推する。
②新型コロナ検査薬の利益率を類推する。

2020.12期3Qまでの業績(実績)を、売上と営業利益について、有価証券報告書から四半期ごとに分解したものが以下の表です。

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この表からわかることは、ミズホメディーの四半期の損益分岐点として、1Q実績が参考になるということ。
つまり、四半期で10億円ちょっと(うち、インフル検査薬4億円程度、OTC1億円程度)を売り上げて、四半期の営業利益がトントンであるということです。
(純益ベースでは、もう少し売上が必要です。)

この損益分岐点から、3Qまでの2020.12期の業績が赤字であるのが納得できます。検査薬専業も楽な商売ではないなというのが第一印象です。


次に2020.12期の通期会社予想をもとに、上表に4Qの数字を独自に加えてみます。

4Qの数字を入れる際の仮定は以下のとおりです。
①売上と営業利益は会社予想のまま入れる。
②売上の内訳は開示資料(インフル検査薬は前年同期の30%、その他検査薬(コロナ除く)は前年同期の50%、新型コロナ検査薬は月3万テスト×3か月間)のとおり算出する。
但し、算出した数字のままだと、逆算で算出されるOTC分が大きくなり過ぎるため、インフル検査薬とその他(コロナ除く)、OTCの数字は微調整して入れる。
(OTC分とは妊娠検査薬など主に薬局などで売られている商品のことですが、前年、当年の実績から四半期売上1億円前後で安定しているため、3Qと同程度の数値としました。調整したといっても各項目の調整幅は最大数千万円程度であり、全体から見れば大きなズレではありません。)
③損益計算の内訳は、研究開発費は3Q並み、売上原価と販管費、一般管理費は3Q比1億ちょい増としています。
(損益計算の内訳は実態と乖離がある可能性がありますが、売上高と営業利益は開示資料のまま入れていますので、内訳が異なっていても業績を予想するうえでの大きな障害とはなりません。)

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この表からわかることですが、1Qと4Q(予)の数字に着目して下さい。
1Qの営業利益は-1でした。4Qの営業利益(会社予想)は474です。
1Qと4Qの売上においては、インフルとその他(コロナ除)、OTCは、大差のない数字ですので、4Qの営業利益が激増する理由は、新型コロナ検査薬によるものであることが明らかです。

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