君の肌を噛む

命の一番外側を噛み締め、力む口元とは裏腹に、
目元は幸せを愬える様に笑みを浮かべる。
謝罪と感謝の混在。僕は君が欲しい。
「全てが欲しい」とはよく言ったものだ。
鼓動を側に感じたいから、君の心臓が欲しい。
濡れる瞳が愛おしいから、君の眼球が欲しい。
柔い口づけ独り占めたいから、君の唇が欲しい。
迸る夜も、明け射し込む朝も、
咲き乱れる春も、生い茂る夏も、
木枯らす秋も、銀積もる冬も、
解れる過去も、紡ぐ未来も、辿る現在も、何もかも。

その一番外側の、君の肌を噛む。
僕の中に君を含む。どんな味?
君で満たした僕の元気は百倍?
いいえ、それ以上。
滴る涙も飲み込んで、溢れる涎も受け入れる。
君が僕に変わる。君が僕を変える。
君で育ち、君を欲する。君は君だから、
僕は君が好きで、君も、君になる。

僕は、君の肌を噛む。君は怯えてる?
噛まれた君は、内に血を溢れさせ、
色が変わっても泣いても笑っても君だ。

僕が、君の肌を伝う。肌から僕が、君に伝える。
僕と肌が、君と歯が、僕と君が、時を伝う。
時が、僕が、流れて、君の涙が流れて、
肌に残る傷が、歯に残る食感が、
君や僕を忘れないで、君は流れないで、
僕の中に留まって、君と僕は…。

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