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【尾形百之助生誕祭企画2021】金カム尾形&杉元「互いが互いの影であり、光なのだから」②:裏切りこそ強さか

尾形生誕祭2021記念作品、計3話構成の第2話です。混乱の網走から遁走し、キロランケ、アシリパとともに樺太の地を踏んだ尾形と白石。その中に“殺人者”がいることは、もちろん知らない筈の旅の面々。しかし白石の心に抱えるもの、そしてそれを受けた尾形。“杉元”の存在をきっかけに、ふいに尾形の記憶に蘇ったのは……。それぞれの解釈、それぞれの想い。原作に描かれずとも、「彼ら」の想いはどんなに強く思えても時に揺らぎ、信頼と不信、憎しみと愛情を行ったり来たり。それこそが『ゴールデンカムイ』の魅力でもある、そう思えてなりません。次回最終話。どうかご期待ください。

「ふーッ、 寒ゥッ」

トレードマークの縞半纏の背中を丸め、
白石由竹は欠伸にも愚痴にも聞こえる
ため息を吐きつつ、
酒場の扉からのそり、と出てきた。

同時に、衣嚢(ポケット)から早速取り出した
舶来の角瓶を、ぐっとあおる。

「ぷはっ! きっついな――さっすが、ロシア産はモノが違うな。

何日ぶりかなァ、酒。
どう?尾形ちゃんも」

「……いらねェよ、こんな真っ昼間から」

酒場の入り口に背を持たせかけたまま、
顔も向けずに尾形は言った。

「ふんだ、昼だろうが夜だろうが、
俺の酒、
もらってくれたこと、ないじゃんよォ。

てか、網走まででも
飲んでる所自体、見たことねぇな。

――尾形ちゃん、下戸なの?」

「必要な時には飲む。……まぁ、
言う通り、特に好きじゃねぇな」

――酒が、というよりも、人前で
酩酊した姿を晒すのが。

こうして幾分くだけた姿勢で
壁に持たれてはいても、
指はいつものように、
肌身離さない三八式小銃の銃身に掛けたままだ。

「……まだ、良く知らねぇもんなぁ、
そういえば、
尾形ちゃんのこと」

うーん、と伸びをして白石は
扉から連れだって出てきたロシア人達に
早速何事か親しげな軽口を叩かれ、
調子よく笑顔で挨拶をしながら、
尾形を振り返った。

きついウォッカの香りが
酒場を行き来する地元人たちから
匂い立ち、残り香としていつまでも
酒場の周りに漂っている。

アシリパとキロランケは、隣に位置する樺太アイヌのコタンで
今後の宿の交渉と、北を目指す旅路についての
相談を行っていた。

近くの村に酒場があると聞き、
アイヌのことだったら二人に任せておけばいいでしょ、
俺らは俺らで情報収集しようぜ――と
尾形を誘って出てきたのは、白石だった。

「寒いだろ?
一緒に中に入れば、少しは暖まったのに」

白石は独り言のように呟き、
幾分、ジトッとした目で、尾形を見る。

「俺と二人きりは、イヤなのかもしんないけどさ……。
キロちゃんとの旅――これから、凄く長い旅に
なるだろうし。

少しはさぁ、打ち解けようよ? 俺らも」

身を乗り出し、外套の肩をぐっと掴んだ白石に
眼をすがめつつ向き直った尾形は、

「……日本軍の軍服姿でこんな店に入って、
面倒な事になりたくなかっただけだ。

――いちいち、深読みすんな」

「あ、そう。――じゃあ、二人が来るまで――

(※交渉が終わり次第、一行の防寒着の買い出しを兼ねて
キロランケ達が迎えに来るはずだった)

ちょっと、お喋りしようか?
俺らの、共通の話題でも」

「……はっ、俺とお前の、”共通の話題“?」

思わず、嗤いが飛び出す。

「そう。――例えば、杉元の話とか」

事も無げに言って、白石は、ニッと笑った。


(こいつ……)


――尾形は一切表情を変えぬまま、
小銃にかけた指に一瞬、無意識に力を込めた。

白石由竹は、尾形にとって 
脅威とはならない。

キロランケと随分と情が通じているようだし、
何よりアシリパとは、杉元と同じ密度で
長い旅路の間、行動を共にしてきた。 

あの娘を懐柔する為にも
助かりこそすれ、邪魔にはならない
存在のはずだ。

けれど。

あくま“で世間話”の体で、
さりげなさを装い、突然切り込んでくる
この感じは――流石だ。

(伊達じゃねェな。……腐っても、
あの監獄で確かに、【刺青囚人】の1人だった奴…)

「どしたのォ、恐い顔してさ」

白石は砕けた表情で再度尾形を覗き込むが、
その眼の奥は、笑ってない。

――そうか。

妙な気はしてたが、
ここへ一緒に連れてきたのも、そういうことか――
合点のいった尾形は少しばかり苛立ちつつ、

シライシ。 頭は相当、切れ者だ。
……もちろん、「アイツ」なんかより。

「ねぇ、尾形ちゃん?」

「いや、流石だと思ってな、“脱獄王”……」

ノッて見せた尾形は、前髪をかきあげつつ、笑った。

「お前にとっちゃ、いい“賭け”だったろう?
――杉元と組んだのはよ」

一瞬、さすがの白石も黙る。
だがすぐに破顔して、

「……まぁ、そう思われても仕方ないよな」

酒なのか寒さなのか、頬まで染まった赤ら顔のまま、
鼻を啜った。

「俺は杉元達に賭けたんだ。

あのとき、あの旭川の飛行船でも――そう言ったろう?
いたよな、あの時、オガタちゃんも。

金塊の行方、
土方歳三、
独りで動くことの利点も難点も、全部――
――アンタのお仲間だった“第七師団”に狙われることだって
ぜーんぶ、天秤にかけて、
それで俺は――杉元に賭けたんだ」

ピュウ、とウィンクしつつ尾形を打つ
いつもの”真似”をしてみせながら、

「でも、だから何だ?
……杉元が、それを一番良く知ってる。

俺が、打算で生きてる男だってことをよ」

自嘲気味に笑い、最後は自分でも無意識なのか何なのか、
「あーー、さみぃな」

また鼻を啜り上げるついでに横を向き、尾形から顔を背けた。

(シライシ……!)

アイツの声がする。

(俺の足が止まったら……白石、お前がアシリパさんを……)

(白石、何かあったら俺の代わりに……アシリパさんのこと、頼んだぞ)

何度でも頭に響く。
忘れることなんて、出来るはずねぇ。

(……返事はしてねぇもんな)

俺は。
――横を向いたまま、坊主頭を掻く。

(面倒なことになった……って、
あの時、思っちまったのも本当だ。悪ィな、杉元)

今まで俺にそんなことを
頼んでくる奴は、いなかったから。

“信頼”したくれた野郎なんて、いなかったから。

(だから……戸惑っちまったのも、本当なんだよ)

白石の長い沈黙に尾形は、

「何だよ――テメェから振ってきた話だろうが」

白石は、今だ、とばかりに向き直って、

「アイツ、最期どんな、だったんだよ?」

眼を背けたいものに向き合うように、平素とは
違う強い眼で、真っ直ぐ――尾形に向き合う。

「『死んでいるのを確認した』、アシリパちゃんの前で、俺ら前で――
そう、言ったよな?」

一瞬、殺気を帯びるほどにわなないた声を
くるりと又、おどけた調子に反転させて、

「教えてよ、尾形ちゃん。――全部、いま」

「……言ったろ、あの時。
あれ以上でも、以下でもねぇ」

尾形は用心深く一度息を吸い込んでから、言葉を継いだ。

「杉元は流れ弾に当たって、死んでいた。
……のっぺら坊と一緒に打たれていたから、師団連中の仕業だろう。

おおかた、ヤツから情報を聞き出されたとでも
思われ、あえて狙われた可能性もあるな。

……俺の居たあたりにも弾が飛び交って、
最後の大混乱だった。
脱出してお前らの方へと向かう途中、
倒れている杉元に駆け寄って確認した。

――ああ、確かに、……死んでたぜ」

「撃たれてたのは、何処だった?

旭川で鯉登ちゃんに、あんな至近距離から二発くらった時も、
ヒグマと闘った時だって、死ななかったんだぜ、アイツ……
そんな、アイツが…」

「――相手が悪かったのさ」

尾形はこともなげに言い、

「……はッ、刀ならともかく、
鯉登の銃なんかでアイツが殺せるわけねぇだろ」

飛行船での“ボンボン”のいきり立った顔と猿叫を久々に思い出したのか、
愉快そうな表情を見せた後で、

「打ち抜かれていたのは、頭だ」

尾形は続けた。

気づけば――北海道よりも更に大粒に感じる
雪の華が、積もるように重く舞い降りて来た。

尾形は外套の前をかき合わせつつ、
さりげなく続けた後の言葉の方は、この雪に混じるように溶けて
白石も、深くは考えないだろう――と願っていた。

気づく筈はない。この流れで、白石も……

「……“相手が悪かった”」

「は?何だ、」

「尾形ちゃん、そう言ったな?」

「――あぁ」

「【流れ弾】に当たって…あいつは、死んだんだよな。

“運が悪かった”って、俺なら言うけどな――そんな時」

――ドクン。

柄でもなく、尾形の心臓は脈打った。

「まるで、……」

白石は構わず続ける。その目は
先般からのおどけた気配を残しつつ、
尾形から、目を逸らさない。

「”誰の仕業か”…知ってるみたいに聞こえるなぁ、」

「――鶴見中尉だろう」

白石が言い終わらぬうちに、被せるように尾形は言った。
ことの他大きくなった声に、苛立ちと緊張を悟らせぬように。

「”ご本尊”ではなくても、おおかた月島軍曹か――
これも言っただろう、
俺が去って離れてから、杉元の様子を見に来ていた谷垣が
鶴見達に捕らえられるのが見えた。

杉元殺害の時も、近くにいたはずだ」

「そうか、鶴見中尉ね。……”死神"、ね」

ゲンジロちゃん達、大丈夫かな…
心細そそうに心配な表情を見せる白石に、
奴の興味が【核心】に迫ることをあわや回避できた安堵より、
突然の”死神”という言葉へ――鶴見の姿が重なった。

(私は、お前の死神だ)

鶴見のお気に入りの文句。そして、真実、そうだった。

死神の命令は絶対だ。特に月島。
そして鯉登も、宇佐美も二階堂も――

『神』から語られる言葉、教えられる教義は、彼らの行く先を照らす
絶対的な灯りなのだ。……それが、どれほど昏いものであっても。

(俺は違った)

尾形は、今更のように追憶する。

(”死神”の指示など、受ける必要もない――
そんな風に自らを定義できるようになるずっとずっと前から、
俺は、俺こそが、”死神”だった)

「――何だよ、何笑ってんの?
それにしても、あんな狂った上司についてて、よく平気だったよな。

……イヤ、平気じゃねぇか。
にしても、谷垣だって、鶴見信奉者だったわけだろう?

あんな真面目すぎる奴とは水と油というか……わかんねぇや。
それが、カリスマ性ってやつなのかな」

「谷垣が入隊したのには、
軍だなんだという以上に、個人的に別な目的があったからな」

「そうなのかよ?」

「その出来事自体は勿論鶴見とは関係がないが、その奴の懊悩を
うまく――利用するんだ。まるで心底、本気の同情をするように。

いや、「本気」じゃなかったと誰が言える?

アイツの力は鶴見にとって必要だった、だから確かに、
奴等には利害の一致が―あったんじゃねぇのか。

兵士としては勿論のこと、優秀だったさ。
鶴見の元を離れずにさえいたら、
上等兵になれる機会だって直ぐに与えられただろう――
……今の谷垣の方が、俺にはよく分からん。

まぁいずれにしても、心配することはねぇ。
”情報将校"として鳴らし
いまこの瞬間もアシリパ奪還計画について
動き出している筈の鶴見が、
せっかく”巣”に舞い戻ってきた、
お気に入りの谷垣を殺すはずはねェよ」

「ふぅん。尾形ちゃん、
谷垣のことは随分、気に掛けていたんだね。

――優しいとこ、あるじゃん」

「苛々するんだよ、ああいう奴を見ると。
占い女の色仕掛けにも、あんなに簡単に引っかかりやがって」

「何言ってんの、それがゲンジロちゃんの優しいとこじゃん。

――わかった、尾形ちゃんは、優しい奴を見ると苛々すんのね?
だから、杉元とも合わねぇんだよな」

あえて”現在形”で語りつつ、白石は話を戻し、
いくぶん柔らかな表情を
尾形に向けた。

「アイツが優しいってか? 
アシリパの保護者代わりで張り切ってるのはそう思うが、

……そうか、オマエはあの時いなかったな?

凄かったぜ、鈴川聖弘を囚えたときの、
偽アイヌコタンでの惨殺事件はなぁ」

「あぁ、牛山からちょっとは聞いてる……
でもそれも、アシリパちゃんのためだから、だろう?

――優しい男なんだよ、アイツは、馬鹿みたいに。
なんたって、シカも殺せねぇんだから」

「シカ?」

その話の何かが、尾形に引っかかった。

「今じゃアシリパちゃんのおかげで、随分猟にも慣れたけどよ。

子供時代にゃ近所の犬猫の世話まで一手に引き受けていたくらい、
アイツ、とくに動物は大好きで心の優しい奴なのよ。

殺すなんてとんでもねぇ……でもそれで
手負いにしたまま苦しませちまって、
それは随分、辛かったみたいだけどね」

「手負いのシカ……
動物が殺せない、男」

「あん?なんだよ、尾形ちゃん。
コレそんな気になる話だったら、
俺よりアシリパちゃんが詳しいから……」

「……いや、なんでもない、
ふと思い出したことがあるだけだ」

それを潮に、尾形は漸くもたれた壁から体を起こし、
外套に降り積もった重たい雪を払い落とした。

雪のせいで曇りを増した空のせいで、外気はますます冷たくなっている。

「しょうがねぇな――キロランケ達が来るまで、
俺にも一杯奢れよ、白石」

「えぇ!?? カネ持ってねぇよ、俺。
尾形ちゃんこそ、土方の爺さんからいっぱいもらって――」

「俺は狙撃手だぜ。いつだって、弾薬用のカネが要る」

白石は口を尖らせつつも、

「まぁいっか、寒いし……
こうして尾形ちゃんから誘ってくれるのも初めてだし……
奢っちゃうよっ。
――その代わり、聞かせてよ?」

「何をだよ」

「ホラ、今、思い出したって言ってた……
恋のお話、聞かせて?」

「アホか、そんなんじゃねぇ。

幾つだったか覚えてもいねぇ、ガキの頃の話だ。

虫も殺せねぇのにやたらガタイが良くて威張ってて、
お人好しで自分勝手でおせっかいなヤツと
そういえば何か……あった気が、してな」

「なぁに、それ」

酒場の扉を勢いよく開きながら、白石が堪えきれず笑う。

「まるっきり、杉元じゃん」

酒場の中には突然の雪のおかげか、
先程よりも幾分と増えた村人達がそれぞれ寄り集まって、
カードゲームに興じたり
この代わり映えしない日常の中での――
代わり映えのないお喋りに興じたりと、
どことなくほっとさせる、賑やかで穏やかな雰囲気が漂っていた。

「……? どうしたのさ、尾形ちゃん」

酒場の入り口に突っ立ったまま、
棒になったように動かない尾形には
その時点でまだ、白石の声さえ届いていないようだった。

「―――!!」

酒場の主人が眉間にシワを寄せ、ロシア語で何事かわめきながら
腕を大きく振ってゼスチャーする。
冷気が吹き込むから、早く中に入って戸を閉めろ、というのだろう。

「ホラ、尾形ちゃんってば早く…。
どしたの、奢るの止めちゃうよ?」

「――あぁ、何でもねぇ」

三八式を外套で包んで
なるべく目立たないようにしながら、
カウンターで白石に並び腰掛けた尾形はもう、いつもの尾形だった。

「どうする、強い酒から行ってみる?」

「なんでもいいや、腹からあったまりゃぁ……」

既に馴染みの店主と身振りを交え
嬉しそうに酒の選定をする白石の横で、
尾形はその場に溶け込みながら、誰にも触れさせない
その心を、遠く過去へと飛ばしていた。

(可哀想だろ、いくらなんでも……
殺す、なんて……)

(――何とかなんねぇのかよ、他に、方法はねぇのかよ、なぁ?)

まだ正月の気配の残る、1月の寺の境内。
雪交じりの凍えるようなあの日の寒さも、
ここ樺太に比べれば別天地だ。だが――

寝静まった闇に顔を付き合わせて、むきだしの素足のまま
向き合った“アイツ”の顔は、吐く息の白さで染まるほど凍えていた。

そんな中でも、目に強い熱を灯し、強がる威勢の良さとは
正反対の、意気地のねぇ台詞ばかり吐きやがって――

”まるっきり、杉元じゃん”


「尾形ちゃん、はい!これ」

目の前に滑らされたグラスに、そこから先の思考は止まる。
まろみを帯びた琥珀色の液体に、尾形はもうこれ以上、”あの日”を――
考えるのは、止める。いや、止めたかった。

ひとまずぐっとあおり、目を落としたグラスの中の
液体に映るのは、見慣れた自分の瞳――
ではない。

どうにもならない事への怒りと、
それを自分以外の誰かへの”優しさ”――「正しさ」なのだと、
信じて疑わない、アイツの瞳が見える。映っている。

(殺すなんて……他に、方法はなかったのかよ?)
(一度寝返った奴は、何度でも寝返るぜ)

――ああ、そうだな。

"あの日”から十何年と経った今も、
この先だってきっと――俺は、変わらねぇよ……


「……お、珍しいじゃねぇか。尾形も飲んでるのか?」

「寒い中、待たせて悪かったと急いで来てみたら……
白石、またそんなに酔っ払って、尾形まで…
旅はまだ始まったばかりなんだぞっ、お前ら、少しはカネを大事にしろっ」

「うふふ、アシリパちゃんに良い毛皮捕ってもらえれば…ねぇ?
大丈夫だもん♪」

「仕方ねぇな、先にコタンで飯食わせてもらってきたから、
買い出しは俺らで行ってくる。

――相当冷えてんだろ、二人とも、もうちょい暖まってろ」

行くぞ、アシリパ、と肩に手をかけられ、
甘やかしすぎなんだ、キロランケニシパは……!と
アシリパは、ぷっと頬を膨らませる。

「―アシリパちゃん、少しずつ元気になってきたみたい。
コタンのあの女の子とも仲良くなれて、
きっと段々、もっと笑えるように
なってくれるといいな、ねぇ?」

眼をトロンとさせながらそう問いかける
白石への返事の代わりに、

「――お代わりだ。
もうちょい、強ぇヤツにしろ」

”過去”の詰まった琥珀の液体を飲み干すと、
尾形は何かを断ち切るように勢いよく、グラスを滑らせた。

【続く】

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