ソーシャルインパクトボンドの課題と事例

ソーシャルインパクトボンド(SIB)とは、社会的課題の解決のための仕組みの一つです。SIBでは、従来行政が担ってきた公共性の高い事業の運営を民間組織に委ね、その運営資金を民間投資家から募ります。民間組織は、事業の目標を達成するためにサービスを提供します。行政は、サービスの効果測定を実施し、その成果に応じて資金提供者へと報酬を支払います。

SIBの特徴

SIBの特徴は、以下の3点にまとめられます。

  • 成果連動型:報酬は事業の成果に応じて変動します。事業が成功すれば、資金提供者は元本に加えて利益を得られます。逆に失敗すれば、元本の一部や全部を失う可能性があります。

  • 事業効果の可視化:事業の目標や評価指標、測定方法などが事前に明確に定められます。行政は、サービス提供者や第三者機関と協力して、事業効果の測定や検証を行います。

SIBのメリットと課題

SIBには、以下のようなメリットと課題があります。

メリット

  • 行政:予算や人員などの制約がある中で、社会的課題に対処するための新たな手段となります。事業効果が確認された場合にのみ報酬を支払うため、財政的なリスクを低減できます。また、民間組織から学ぶことで、自らもサービス改善やイノベーションに取り組むきっかけとなります。

  • 民間組織:事業運営に必要な資金を確保できます。また、自らのサービスが社会的課題にどれだけ貢献しているかを客観的に評価されることで、信頼性や知名度を高めることができます。

  • 資金提供者:社会的課題への関心や貢献意識が高まります。また、事業が成功すれば、社会的なインパクトとともに経済的なリターンも得ることができます。

課題

  • 行政:SIBは複雑で時間やコストがかかる仕組みです。事業目標や評価指標などを設定する際には、多くのステークホルダーとの調整や合意が必要です。また、事業効果の測定や検証には、専門的な知識や技術が求められます。

  • 民間組織:SIBは成果連動型であるため、事業運営には高い責任が伴います。また、事業効果の測定や報告には、多くの時間や労力がかかります。さらに、資金提供者や行政との関係性を管理することも重要です。

  • 資金提供者:SIBは高いリスクを伴う投資です。事業が失敗すれば、元本の一部や全部を失う可能性があります。また、事業の成功確率や見込みリターンなどを判断するためには、十分な情報や分析が必要です。

SIBの各ステークホルダーの存在意義

  • 行政:課題や対象事業の評価方法を定義する役割。こちらを見る限りでは行政が発起人ともなっています。

  • 民間組織:社会課題解決の実行を担います。

  • 資金提供者:社会課題解決のために必要な資金を提供する役割。

上の課題にもあった通り多くのステークホルダーの調整がSIBでは大変なので、1団体が上の3つの内2つを担えるとよりスムーズになることが考えられます。例えば民間組織がそもそも資金力がある、資金提供者が評価方法を、民間組織が課題を既に持っている、など

SIBの事例

SIBは、世界各国で様々な分野や課題に応用されています。日本では、2017年に初めてSIBが実施されました。以下は、日本で実施されているSIBの事例の一部です。

  • 子どもの貧困対策:東京都とNPO法人フローレンスが協働して、子どもの貧困による学習格差を解消するための教育支援サービスを提供しています。資金提供者は、株式会社ベネッセコーポレーションなどです。

  • 高齢者の在宅介護:神奈川県と株式会社LITALICOワークスが協働して、高齢者の在宅介護を支援するためのサービスを提供しています。資金提供者は、みずほ銀行などです。

  • 障害者の就労支援:大阪府とNPO法人エイブルが協働して、障害者の就労支援を行うためのサービスを提供しています。資金提供者は、三井住友海上火災保険などです。

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