山の記憶(7) 金時山

仕事で、プライベートで、何度も歩いている山。

金時山は、富士山の展望台として、そして金時娘のいる山として、人気の高い山です。私がいつも歩くのは乙女峠バス停から乙女峠を経て山頂に向かい、金時神社に下山するルート。歩き始めに富士山がきれいに眺められ、妖精のいるような針葉樹林を歩いて標高1000mちょっとの乙女峠までたどり着けば、外輪山に囲まれた箱根が見えるようになります。ちょっとした岩場があったり、富士山や箱根の展望ポイントを眺めながら歩くうちに山頂。裾野をきれいに広げた大きな富士山の出迎えに、誰もが声をあげてしまいます。

山頂にはふたつの茶店があり、ひとつには金時娘と呼ばれるお下げ髪の、娘と呼ぶにはややお年を召された女性がいらっしゃいます。寒いときには店の中で味わう味噌汁が嬉しく、晴れているなら外のテーブルで食べるカレーうどんも美味。おみやげもいろいろあります。個人的には金太郎飴がお気に入り。

景色が変化に富み、そこそこ歩きごたえのあるルート。私が受け持つハイキングの講座でもよく歩きますし、雑誌の仕事でおすすめルートを…と聞かれたら必ずこの山、このルートを紹介します。

山頂からの富士山は本当に絶景。大きく、美しいのです。…しかし、ひとたびガスってしまうと、あるいは雲が多くなってしまうと、こんなに大きな富士山が全く見えなくなるのです。だからこそ…、金時山は晴れ予報のときに登るに限るのです。雨やガスの中を歩いても、たぶんただの「修行」。

ですが、、今まで訪れたなかで、一番思い出深いのは、その「修行」のとき。もう10年近く前の2月、SNSのオフ会登山を金時山で行いました。天気予報は曇りだか晴れだったのに、歩き始めたら曇り、歩いていくうちに雨が雪になり、山頂では横殴りの雪。もちろん全員雪山装備なんて持ってない。こんなはずじゃなかったと、這々の体で下山し、山麓でちょっと打ち上げをし、雪で遅れた電車・バスを使って帰宅をしたのでした。

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