日々是神経診察 -Adie瞳孔-
強直性瞳孔や瞳孔緊張症とも呼ばれる。障害部位は、毛様体神経核とその神経核より抹消の神経繊維(毛様体神経節)やその後の短毛様体神経の障害による副交感神経の障害とされるが、発生機序には諸説ある。
・輻輳および調節の経路(脊椎脊髄 2015;28 ⑷:344-346より)
この図では、視蓋前野(前域)を通っているように見えるが、Argyll-Robertson瞳孔でも見た通り、輻輳反射の経路は視蓋前域の腹側を通ることによって、対光反射と近見反応の解離が起こるとされる。
毛様体神経節はどこにあるかというと、眼窩後部にあって視神経と外側直筋の間にある(下記図参照:Visual anatomy)
https://visual-anatomy-data.net/nurve/illusts-large/ophthalmic-2.JPG
Adie瞳孔の特徴して下記が挙げられる。
① 片側瞳孔の散大(瞳孔不同あり)
② 対光反射の減弱または消失
③ 接近視に際して極めて緩慢で持続的な縮瞳(再拡大も緩慢)
④ 調節障害
⑤ 低濃度ピロカルピン(0.05-0.1%)に対する縮瞳の過敏反応
明るい場所では健側と比べて散大しており、暗所では健側の方が大きくなるという面白い特徴がある。患側瞳孔は散大しており光の刺激では固定されていると考えると理解しやすい。
・明所:患側瞳孔中 > 患側瞳孔小
・暗所:患側瞳孔中 < 患側瞳孔大
Adie瞳孔は光への反応はほとんど無いが、近見反応に対する縮瞳は可能であり、近くを見ると緩慢な縮瞳がみられる。この対光反射がなくて近見反応ありの症候を、対光-近見解離( light-near dissociation)と呼ぶ。
※近見-対光解離と逆にすると、近見反応に対する縮瞳はできず、対光反射は可能という逆の意味になる。歴史的には、von Economo 昏睡型脳炎でみられる症状をいうようだが、近年は「患者が至近距離にある物体に焦点を当てようと努力しないことを意味している」とされる。(マクギー身体診断学)
なお、膝蓋腱・アキレス腱反射の低下・消失が合併するとAdie症候群と呼ばれる。
<Adie瞳孔の原因>(脊椎脊髄 2015;28 ⑷:344-346より)
UpToDateを見れる方は、「tonic pupil」の項も参照されたい。Argyl-robertson瞳孔とは違って、この症候だけで鑑別を絞るのは難しそうですね。
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