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相続法が40年ぶりに改正されています Part2

40年ぶりに相続法の大きな改正がなされました。Part1で概要をお伝えしていますが、網羅しきれなかったところをPart2でお伝えしていきます。

配偶者短期居住権の創設 2020年4月1日施行

Part1の配偶者居住権のところでも少し触れましたが、配偶者が相続開始のときに遺産に属する建物に住んでいた場合には、一定の期間(たとえば、その建物が遺産分割の対象となる場合には,遺産分割が終了するまでの間)は、無償でその建物を使用することができるようにしています。

相続された預貯金債権の払戻しを認める制度の創設 2019年7月1日施行

預貯金は遺産分割の対象となるため、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要がある場合にも、遺産分割が終了するまでの間は、口座の名義人が亡くなると凍結され相続人全員の同意がなければ引き出すことができませんでした。

改正後は相続人全員の同意がなくとも、凍結口座から仮払いができるようになりました。その方法は、以下のどちらかになります。

1.家庭裁判所に仮分割の仮処分の申し立て
  調停の申し立てが前提であり手間と時間がかかります。
2.金融機関の窓口で直接依頼
  法定相続分の三分の一または同一の金融機関で150万円までは他の相続    人の合意を得ずに払い戻しを行うことができます。

遺留分制度に関する見直し 2019年7月1日施行

① 遺留分減殺請求権から生ずる権利を金銭債権化する

改正前は、遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生じ、相続不動産について、遺留分権利者が、遺留分相当の共有持ち分を取得し、以後共有としていました。

改正民法では、遺留分に関する権利の行使によって物権的効力が発生するのではなく、遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることになりました。

改正民法施行後は、遺留分減殺請求権の行使によって、その権利は、金銭債権となることが明らかとなり、遺留分権利者としては、遺留分相当額の金銭請求をすることができるようになりました。

② 金銭を直ちには準備できない受遺者又は受贈者の利益を図るため、受
遺者等の請求により、裁判所が、金銭債務の全部又は一部の支払につき
相当の期限を許与することができるようにする

改正前は不動産など「物」に関する贈与を、遺留分減殺請求により効力を一部失わせた場合には、遺留分減殺請求者が現物で返還を求められる権利を得ることを原則とする一方、贈与を受けた側が「物」ではなく「金銭」で支払うこと(価額弁償)を選択した場合にのみ、金銭を請求できるものとしていました。

また、遺留分の算定に含める贈与について、相続人以外の第三者に対する贈与は相続開始前1年間に限られ、相続人に対しては「特別受益」に該当するものは無制限に算入されていました。

改正により遺留分減殺請求という名前を改め「遺留分侵害額請求」とされました。「物」自体の返還の権利を原則としていた遺留分減殺請求権を「金銭」での返還を求める権利に変更しました。

そして、相続人に対する贈与について、“期間に限定がないこと”が問題視され特別受益に該当するものでも、相続開始10年以内にされた「物」に限定されました。

相続の効力等に関する見直し 2019年7月1日施行

「相続させる」旨の遺言等により承継された財産については、法定相続分を超える分についても対抗要件なくして第三者に対抗できていました。

この点、改正により遺言があったとしても、法定相続分を超える部分については、対抗要件(登記)がないと第三者には自己の持分を対抗できないことになりました。

また、改正前は「相続させる」旨の遺言等により相続人の一部が自らの相続登記をして第三者に売却してしまった場合にも、他の相続人の債権者等は対抗できませんでしたが、改正後は相続登記される前に差押え等登記を行えば、他の相続人の債権者等は法定相続分で請求を行うことができるようになりました。


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