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スプリングハンガーで音が変わるのか

結論、変わった気がする。
この記事は素人が仮説を立ててギターの課題点を改善する過程を記録したものです。

Overload Custom Guitars Rea7

なにこれかっこよ

到着から5年になるので、そこそこ付き合いが長くなってきた。
僕にとって初めてのカスタムオーダーであり、色々な要求をゴリ押しで成し遂げてもらったギターである。少なくともフロイドローズの搭載、ナチュラルバインディングとパーフリングンのコンビネーション、ボディにインレイを入れ、かつそれがコンター加工の曲面に差し掛かる位置に来る、などなど・・・このギターの制作がされた時点では他に見ない仕様が多い。それゆえ、このブランドの本領を発揮しきれていない部分も感じられ、良い面悪い面含め貴重な経験になった。
 このギターの詳細はこのページに書いた・・つもりなんですけど到着直後に気合を入れて撮った写真がハードディスクの破損で失われ、それ以来オーダーの経緯のみ記録している未完成ページのままになっている。おのれシーゲイト製ハードディスクめ。(バックアップを取ろう)

改めて考える不満点

そしてこの見た目最強ギター、自分がギターを弾く限り永く使う覚悟のもとで買ったものなのだが、ブランドの得意不得意を無視して己の要求を通したためブランドの良さが100%生きていない部分があることを白状しましょう。そしてそれは主に以下の通りである。

  1. 各弦の分離感がイマイチ

  2. コイルタップの音がイマイチ

  3. 弦が落ちやすい

1,分離感の悪さに関する仮説

主に歪ませたときの話。ハードテイルのギターと持ち替えると特に顕著に、音の腰が引けて聞こえる。この点からトレモロ機構が分離感の悪さに1役買っているかもしれない。加えて以前Tom AndersonのHollow Drop Top Classicを弾いたときにも似た感触を抱いた経験がある。トムアンのホロウボディのモデルはかなりの体積をくり抜いているので、ほぼセミアコみたいな感じだ。デメリットとして箱の構造に近いギターほど歪ませたときの粒が散らばりやすい印象がある。よってこの点も考慮に入る。

2,コイルタップの音に関する仮説

このRea7、ベアナックルのHolydiverとEmeraldを積んでいるので出力は不足無しのはず。そしてベアナックルはコイルタップしてもシャリシャリ、カリッカリの使いやすい現代的なクランチサウンドを出力する製品ばかりだ。しかし、手持ちのベアナックル搭載機でハードテイル仕様のMayonesVellmorと比較すると明らかにコイルタップの粒立ちが悪い。過去所有したSkervesenと比較しても明らかに負ける。一方フロイド搭載のESPギターにベアナックルのジャガーノートを搭載したときもコイルタップ音がイマイチだった。一応共通項はトレモロ機構。

3,弦が落ちやすい原因

Mayonesと比較して測ってみたら、指板エンドの幅が3ミリ狭かったよ。ナットとブリッジの元の位置は決まっているので、どうしようもない。なにか改善作はあるのでしょうか。指板の両端に木を足すとか?

総合すると

木材や回路などの素材は一級品を使っているようにみえる。そして組み込みのクオリティもハンドメイドゆえの粗さはある。2016年前後は、Overloadはオーダー価格が比較的安い工房だったし、柔軟なオーダー項目を要求できるということで、好きで小規模工房を選んだわけなので、量産メーカーのような均一な品質・納期管理でなくとも文句は言えない。
で、上記の課題を根本的に・完全にクリアするのは難しいのだが、ひとまずブリッジ周りの堅牢さを増すことが策の1つであると結論づける。

今回の施策

といって次回があるか分からないが、タイトル通りスプリングハンガーを変えてみることに。

これの黒バージョン

Creatifinity Parts ブラス製の太いやつ

思い立ったときに黒しか在庫がなかったけど、黒も格好良い。
もちもの:はんだ、はんだごて、濡れ雑巾、ドライバー、ブリッジ用の3mmレンチ いざ作業開始。

初期状態
うなじ

このRea7、フロイドローズにはHotRodシリーズという、ステンレスのスクリュー類とブラスの太いトレモロブロックが付属したモデルにしてくれている。さて既存のパーツを外す。

ブラスネジが付属したが、ネジ山の間隔が違った。今回はオリジナルのネジを使いまわし


厚みの差がすんごい
諸々セットしてコントロール側からアース線を引っ張って余分なたわみをなくす

で、完成のはずがトラブルが発生する

トレモロのベースプレートを平行に保とうとするとハンガーをギリギリまで下げることに。

また、バネを引っ掛ける部分周辺が背面側に飛び出てしまい、干渉して蓋が閉まらなくなる。これが数あるメーカーがスプリングのキャビティの蓋だけ落とし込まない理由でしょうか。まぁツライチにはできないながらごまかして蓋はしたのでよし。ギターによって起きる現象のようだ。

10-のゲージの弦を張っていたところを09~に変更。これでスプリングを増やさなくても調整レンジが真ん中に寄る。これで今回の改造は終了。検索すると、同種のスプリングハンガーに交換したものを周波数から分析した記事もあったので、主観より客観が優先だという人はぜひ複数のソースを参照くださいませ。

結論

音の輪郭が僅かに際立った。
分離感、コイルタップのイマイチさは残った。

今回の変化は、不満のうちの5%ほど改善してくれた感じ。まぁ分離感とか他の要素を改善したかったらピックアップ交換が一番近道なんでしょう。

以下、あくまで主観による感覚的な話をします。
トレモロブロックの視覚的な印象である「分厚さ」のイメージが音にも連想されそうなものだが、そう思い込んで聞かない限り、このパーツの見た目と同様に音が「分厚く」なるわけではないかなと思う。
あくまでトレモロ機構の中で、バネの振動をボディにうまく受け渡すことが目的(?)のパーツということで、このスプリングハンガーが「振動しやすい」か「振動せずどっしりと鎮座する」か、それはで振動伝達の良し悪しではなく、伝達の方法論が変わると考えるのが妥当だろう。まあ元の薄いスプリングハンガーだってぶるんぶるん振動しているわけではないので。
アコースティック楽器の発想であれば、ある程度振動するほうが迫力が増すもんですけど、いざエレキ楽器になると振動しすぎるとハウるとか、電気信号に変換されたときにはさほど影響がないとか、ちょっと違う要素が入ってくる。
このスプリングハンガーは、ネジと接する面積が増えたり、重量を増やす点から、ボディと一体化させる・振動伝達効率を上げる目的のもとに設計されているものではと思う。この商品はとても優秀な品質で、その目的は達成できている。で、すべてのギターがこれで問題点を「改善」できるかといえば、先程の通り、良し悪しの次元の話ではないように思うので、万人が想定した結果になるのかはわからない。だからごちゃごちゃ書いたまとめとして、シンプルにこう落ちをつけよう。

堅牢でヘヴィ☆デューティで安定したパーツが搭載されていることは、悪いことには思わない。SevenString.orgでOrmsby guitarの主宰ペリー・オムスビー氏はこう発言した。

(小規模工房は)なぜ木材にはとことんこだわるのに、ハードウェアをケチるのかわからない。(サウンドを決める極めて大事な部分だというのに)

どこだかわすれたけど、こんな感じにかいてあった気がする

(まぁエキゾチックウッドに目が行っちゃうのはすごくわかるんだけど)
そう、ペラペラな質の悪い合金よりも、分厚いソリッドな金属が乗ってる方が良いに決まっている。
ごっついパーツが載っているのはかっこいいのである。

これでいいと思います。ありがとうございました。

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