2021年 天秤座の空模様

生まれて初めて
友だちと二人だけで遠出する時。
あるいは、
生まれて始めてデートする時。
だれもが緊張し、ドキドキワクワクします。

これを送り出す保護者は、
さらに輪をかけてドキドキします。
危険な目に遭うのではないか、
相手はちゃんとしているのか、
誰かに騙されるのではないか、
仲違いして傷つくのではないか。
それでも、
人間として成長するためには
それらのリスクを引き受けて、
世界に飛び込んでいかねばなりません。
危険のない安全な場所に居続けては、
一人で生きていく力は
養われないのです。
それを知っているからこそ、
危険への恐怖を胸にしまって、
保護者は「生まれて始めて」の人を、
手元から外界へと送り出すのです。

大人になって、
自分で自分をある程度
守れるようになってからも、
私たちは常に、
こうしたリスクを引き受けています。
挑戦すれば、失敗のリスクがあります。
人に出会えば、
摩擦や衝突のリスクがあります。
才能を発揮しようとすれば、
作品をけなされたり、
他の才能に負かされたりするリスクがあります。
人を愛したら、
傷つくリスクを引き受けねばなりません。
出産には大きなリスクが伴いますが、
今生きている人間達はみな、
そのリスクを引き受けた人がいるからこそ
ここに存在しています。
自分を外界に出し、
外界に向かって自らをひらくとき、
私たちはリスクを負うのです。
どんな「名人」も、
最初の一歩はふるえながら踏み出します。
その一歩に、どんなに勇気が要るでしょう。
その一歩があったからこそ、
後の成功があるのです。

2021年、天秤座の人々は、
意欲や、情熱や、衝動や、愛や、
才能や願望や、その他様々な
「善い力」によって、
世界に向かって自らを、
大きくひらいていくことになるでしょう。
あるいは、自分という存在を、
外界に解き放っていくことになるでしょう。
それは、
楽しいだけのことではないかもしれません。
なぜなら、リスクがあるからです。
作品を作るのは楽しくても、
それを発表するのは、怖いことです。
誰かを好きになるトキメキは甘くても、
告白するのは、
ほとんど決死の覚悟が必要です。
それでもあなたは、
そこを乗り越えていくでしょう。
そして、あなたが願ったことを
期待以上のかたちで、
きっと叶えることができるでしょう。

2021年は、天秤座の人々にとって
「愛と創造の年」です。
心から愛せる対象に出会えますし、
没頭できる活動にも出会えるでしょう。
既に愛する人がいる人、
没頭できるテーマがある人は、
その物語が急激に進展し、
新たなステージに立てるはずです。

愛の行為やクリエイティブな活動は
外側から見れば、
実に美しく、楽しげで、
幸福そうに見えます。
充実していて、
生命力に溢れていて、
本当に魅力的です。
でも、渦中にある本人は
「それどころではない!」
ということがほとんどです。
産みの苦しみ、愛の切なさは、
そのど真ん中にいる人にしか解りません。
たとえ過去に経験していても、
実にキレイに
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」
ものなのです。

2021年の天秤座の人々は、
いつになく勇敢です。
外界に自らを開いていくと、
外界から、他者から、
強い影響をダイレクトに受けることになります。
影響を受ければ、
変容せずにはいられません。
愛を通して、
あるいはクリエイティブな活動を通して、
2021年のあなたは、
内側から大きく変わっていくでしょう。
その変容には、ほとんどの場合、
大きな喜びが伴うはずです。
ただ、上記の通り、
「ひらかれた」状態はとても無防備です。
だからこそ、あなたの審美眼や、
理想の高さや、
愛への生真面目さが重要になります。
物事を見つめる純情な眼差しこそが、
弱いようでいて、実は、
熱い衝動に伴うリスクを少しでも緩和し、
より望ましい方向に自分を差し向けるための、
だいじな羅針盤です。

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[時期について]

1月から3月は、
前述の「愛や創造によって、
己が外界に開かれる」
というプロセスが、
急ピッチで展開します。
この年明けからの3ヶ月は、
星座を問わず、
アクセル全開で前進する、
非常に勢いのある時間なのです。

また、1月から2月は
経済活動が大きく動くタイミングでもあります。
特に、普段取引している相手の状況が変わったり、
パートナーの経済状態に変化が起こったりし、
それにあなたも対応していくことになるでしょう。
この時期から、新しいリソースを
使えるようになる気配もあります。
何が必要なのかを把握しておき、
機会があれば遠慮なく申し出る、
というスタンスが大切です。

3月から4月は、
熱い学びの季節です。
旅や遠出は、
まだ世の中の状況が許さないかもしれませんが、
特に必要が出てきて、
出向くことになる可能性もあります。
未知の人々に出会い、
行動範囲を拡げていけるときです。

5月半ばから7月は、
かなり忙しくなるでしょう。
特に、新しい役割を得たり、
転職したりする人が多そうです。
この動きは2022年に跨がって続いていく、
かなりダイナミックなプロセスです。
また、この時期は
「人に恵まれる」傾向があります。
積極的な仲間、熱い友だち、
好意を持ってくれる人々が、
あなたを力強く支えてくれるはずです。

8月は人から見えないところで
非常に忙しくなるかもしれません。
隠れた問題を根本解決できそうです。

8月半ばから9月前半は、
きらきら光るような、
とても楽しい時期となるでしょう。
「自分らしさ」の感覚を取り戻せる、
のびのびできるタイミングです。

9月後半から10月は、
少しペースダウンするかもしれません。
先を急がず、柔軟に対応し、
時間は常にたっぷり使うようにすると、
この時期だけに見つかる
「特別なルート」に出られます。
体調を崩したら、
遠慮なく休養をとることも大事です。
スケジュールにこだわることは、
この時期は、全く意味がありません。

11月から2022年3月頭にかけて、
家族や身近な人との関係が、
深い愛に包まれるでしょう。
特に2017年の終わりから2020年、
家族や住処に関することで、
苦労を重ねた人も少なくないはずですが、
あの時のあなたの頑張りが、
この時期、とても嬉しい形で、
大きく報われるはずです。

12月末以降、2022年前半にかけて、
「役割、日常生活」が、
大きく変化する時期となっています。
今の自分に合った暮らし方、
働き方、ライフスタイルなどを、
楽しくクリエイトできる時間に入ります。

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[愛について]

2021年は天秤座の人々にとって、
あらゆる意味で「愛の年」です。
冒頭から書いたことが全て、
恋愛やパートナーシップに当てはまります。
愛を探している人は、
愛に出会うでしょう。
既に誰かと愛し合っているなら
その愛の形が、
さらに成長を遂げるでしょう。
愛に悩み苦しんでいる人は、
より望ましい愛の世界へと、
「脱出」できるかもしれません。
歪んだ愛と向き合い、
そのゆがみをただして、
愛を「仕切り直す」人もいるはずです。
結婚を望む人は結婚できるでしょうし、
子供を授かる可能性もあります。
星占いで扱う「愛の部屋」は、
恋愛だけでなく「子供」をも管轄します。
愛の対象を得て愛を注ぐ
という願いを抱いている人には、
その願いが叶いやすい年なのです。

愛への責任、
愛における義務、
人生という長い時間から見た愛、
人間愛、人を育てる愛、
愛とともに老いること。
そうしたことも、
2021年のテーマと言えます。
キラキラした刹那的なトキメキだけでなく、
もっと長い時間を越えていく愛、
ともすれば自分の人生をも越えて、
もっと先まで続いていく愛のことを、
2021年のあなたは、
真剣に考え、
行動に結びつけていくのかもしれません。

特に強い追い風が吹きそうなのは、
1月から3月前半、
3月下旬から4月中旬、
5月から6月頭、
8月半ばから9月上旬です。
7月下旬、8月下旬にも、
愛の転機の気配があります。

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たとえば張彦遠(847年頃)は次のように言っている。
「精神を集中し、思考を無限界に向かって遊びまわらせるとき、人は繊細な感覚で自然の秘密のなかに入り込む。ものも自分も、どちらも忘れてしまう。人は身体を離れ知識を捨てる。[…]これは神秘的な原理への到達ではないだろうか。これが絵画の<道(Tao)>と呼ばれているものだ。」
(中略)
また『苦瓜和尚画語録』のなかで石濤は語っている。
「五十年前には私の<自我>が<山々>や<川>と共にあるという意識(co-naissance)はまだなかった。それらに価値がなかったというわけではないが、私はただそれらが、それら自身であるにまかせていたのだ。でもいまや山河は、彼らに代わって語ってくれと私を追い立てている。彼らは私のなかに生まれ、私は彼らのなかに生まれた。私は奇怪な高峰を絶え間なく探し、それらをスケッチした。山々や川は私の精神と出合って、その刻印は変容し、ついには私自身へと帰着したのである。」
(ピエール・アド『イシスのヴェール』小黒和子訳 法政大学出版局)

引用が長くなりました。
この2つの引用は、絵画を描くときの没入と、自己の変容を語ったものです。
2021年の天秤座は「愛と創造の年」なのですが、その「愛と創造」の体験はどんなものだろう、と考えたとき、この二文が思い浮かびました。

何かを愛するとき、またはなにかをつくり出そうとするとき、私たちはほとんど、自分自身の事を忘れてしまいます。愛や創作の対象に夢中になり、惚れ込み、いつしかその対象と一体になったかのような錯覚を得ることもあります。
そこでは、「自分」が一瞬、失われます。

「愛し愛されること」「才能を発揮すること」などは、「自分自身のこと」だと思われています。愛は自我と切っても切れません。愛のワガママ、愛のエゴは多くの人の悩み苦しむところです。愛する人に自分を「よく見せる」ため、多くの作為が試みられます。
才能を発揮して何かを生み出そうとする人もまた、「自分には本当に才能があるのだろうか」「イイ作品を作るにはどうしたらいいか」「評価されるためにはもっと頑張らなければ」などと考えがちです。

ですが、引用の二文は、そうした「自分」が見失われた状態を語っています。本当の想像の境地、究極の愛の境地では、「自分」はすでに、どうでもよくなってしまい、そのかなたで「自分自身に帰着」できる、ということなのでしょうか。

2021年、天秤座の人々は、たとえばそんな体験ができるのかもしれません。本気で花を見たとき、人は花に「なって」しまうものなのかもしれません。「自分」がなんなのかと考える間もないほど、愛するものや創作の対象に没入することができるのかもしれません。そのとき、前述のような「リスク」は、意識の上から消え去っています。守るべき「自分」が、意識の上にないからです。
それこそが「世界に向かって自分がひらかれる」ことの、本質なのかもしれません。

自分が何かを生み出すということは、自分が世界に向かって、無限の延長を遂げたということになります。画家が死んだ後もずっと見つめられ続ける絵があります。親が死んだ後、子供は更に子供をなして、未来に命が受け継がれます。
愛と創造は、自己の延長と拡張の体験でもあります。「ひらかれる」リスクは、そのために引き受けられます。
自分の人生の一部を自分以外のものに投げかけ、そこに橋が架かります。2021年のあなたの体験には、おそらく、そんな要素が組み込まれているだろうと思うのです。