2021年 魚座の空模様

たとえば学生時代の親友と、
社会人になってから
だんだん会わなくなり、
連絡も途絶えて、
長い時間が経った後で
「久しぶりに会う」
ことになったとします。
「昔どおり、息の合った二人」
として再会できるのはおそらく
相当貴重なケースです。
長いこと会わず、
別々の人生を送るうち、
私たちは自分でも気づかぬうちに
どんどん、変化していきます。
長く会わない期間を経て
「再会」するのは、
ほとんど「新しい出会い」です。
ただ、二人の間に共有された記憶があり
その記憶が、プラスに作用する場合もあれば
マイナスに作用する場合もある、
ということなのだろうと思います。

長い時間を経て、
昔の友だちに「再会」すると
相手の変化に驚かされると同時に
自分もまた、変わったのだ
ということがわかります。
あるいは、
自分だけが取り残されて
相手がもうずっと先を歩いている
と感じられる場合もあるでしょう。
似たような出発点と、
大きく違っている現在の姿。
「再会」は、私たちの人生を、
良くも悪くも立体的に捉える、
神秘的な、鏡のような機会です。

2021年、魚座の人々は
自分の歩んできた過去を
おおいに振り返る機会を得るでしょう。
長く会わなかった旧友と
コンタクトを取り合う人も多いはずです。
あなたが「そうしたくなった」理由は、
何なのでしょうか。
もし、働きかけが向こうからだったとしても
それに応じるのは、動機があるはずです。
過去はこの時期、あなたに向かって
特別な声でささやきかけます。
「そこに何かがある」と暗示します。

一方、ずっと用いてきた武器を2021年、
「リリースする」人も多そうです。
自分を守ってくれていた鎧、
成功パターンを保証してくれた武器が、
いつのまにか古くなり、壊れ、
もはや役に立たなくなっている
ということに気づかされるのです。
新しい武器を手に入れるためには、
古いものを手放さなければなりません。
武器や防具を手放すのは怖ろしいことです。
無防備な自分になってしまえば、
危険に晒されます。
ですが、思い切って手放したとき
「自分を守ってくれていた鎧」が
実は、自分の行動を制限していた
ということがわかるのかもしれません。
「最強の武器」が、本当は、
闘いの自由度を損なっていたことに
気づかされるかもしれません。

大企業の重役をつとめ、
周囲からとても尊敬されている人が、
新しい習いごとを始めた、
という話を聞きました。
最初は自分より若い「先生」に
教えを請うたり、
ミスを指摘されたりするのが、
かなりの苦痛だったと言います。
「どんな顔をしていいか解らない」
という気持ちだったそうですが
やがて、その関係に慣れてきて、
素直に助言を求めたり、
指摘を受けて自分を見直したり、
ということが
自然に出来るようになりました。
すると、会社での周囲の態度が、
だんだん変わってきたそうです。
部下や取引先の人々に笑顔が多くなり、
フランクに話してくれるようになり、
人から得られる報告や情報にも、
自然、厚みが出てきたというのです。

鎧や武器を手放したとき、
その人のコミュニケーションが変わる
ということの、これは好例です。
2021年の魚座の世界には、
そんな仕組みの変化が起こりやすいのです。
自分を守っていたはずのものが、
実は、自分を縛っていた、
と解ったとき、
一気に世界が拡がります。
新しい情報や知識が流れこみ、
人の気持ちに触れやすくなり、
より、のびのびと動けるようになります。

慢性的な問題を解決したり、
後悔の種に向き合ったり、
コンプレックスからの脱出をはかったり、
といったことができる時期です。
これらのこともまた、
「心のハードル」の向こうにあって、
触れるには、多大な勇気が必要です。
でも、2021年の魚座の人々は
自分の心のハードルを、
思い切って越えていけるでしょう。
その問題を解決し、
そのテーマに向き合ったとき、
自分がより自由に、幸福になれることが、
わかってくるからです。

私たちの苦しみや不幸は、
第三者から見れば
「全く理解できない」
ような構造をしていることもあります。
「なぜそんなことを気にするの?」
「それはあなたのせいではないよ」
「どうしてわざわざ自分の傷を、
自分でえぐるようなことをするの?」
こうした「正しいアドバイス」も、
当事者の心にはたいてい、
ほとんど響きません。
本来、解決しておかしくない問題なのに、
長い間、問題が問題のままになっているのは、
どうしてなのでしょうか。
2021年、その謎がいきなり、
怒濤のように解けるかもしれません。
そして、その向こうに、
手に入れられる本当の幸福の光が、
あなたをしずかに待っているのが
見えるだろうと思います。

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[時期について]

1月から2月は、
コミュニケーションが活性化する
とても賑やかな時期です。
懐かしい人から連絡があったり、
旧年中に話しきれなかったことを
「改めて語り合う」
ような場面もありそうです。
2020年中、陰で支えてくれた人に、
お礼を言えるかもしれません。
心の中で、誰かのために
「これは、しておかないと」
と気にしていたことを、
どんどん実行できるでしょう。

2月後半から3月は、
とてもフレッシュな雰囲気に包まれます。
楽しいことが多そうですし、
注目される場面もあるでしょう。

3月から7月頭にまたがって
「居場所が動く」気配もあります。
引越や家族構成の変化など、
生活環境が大きく変わるでしょう。
身近な人が人生の転機にさしかかり、
サポートする必要が出てくるかもしれません。
あるいは、
あなた自身の新しい挑戦のために、
周囲に応援をお願いするのかもしれません。
というのも、
5月なかばから7月は、魚座の
「一大ターニングポイント・前編」
なのです。
この時期、たとえば転職や結婚など、
人生の転機となるような、
重要な出来事が起こりやすいのです。
この展開は、ここだけで終わらず、
2022年の前半に、
さらに本格化していきます。

6月は心ときめくことが多いでしょう。
愛に恵まれる、とても楽しい時期です。
忙しい時期でもありますが、
人から必要とされる喜びがあるはずです。

7月下旬から9月は、
人間関係が大きく動きそうです。
交渉事も発生しやすい時で、
しっかりと自己主張し、
権利と利益を守る必要があります。
この時期の交渉は、場合によっては
自分のためのものではないかもしれません。
だれかのために交渉役を引き受けて、
「代理として闘う」
ことになる気配もあるのです。
こうしたとき、
誰よりもタフな交渉ができるのが、
魚座の人の才能です。

10月は素敵なチャンスが巡ってきそうです。
この時期、だれかに預けていたものが、
どーんと殖えて返ってくるかもしれません。
「恩返し」のような形で、
嬉しい申し出を受ける場面もあるでしょう。

11月から2022年3月頭は、
「人に恵まれる」時期です。
特に、2020年に
苦労してネットワークを作り、
人を育てていた人は、
あの努力がついに実ったことを、
実感できるだろうと思います。
かつてあなたが守った人々が、
こんどはあなたをもり立ててくれるのです。
素晴らしいチームワークが望めますし、
「親友」を得る人もいるでしょう。
とても嬉しいことが起こりそうです。

12月末から2022年5月上旬、
「一大ターニングポイント・中編」
が始まります。
あるいは、「本編」とも言えます。
あなたの元に、支配星・木星が帰還し、
同じく支配星の海王星と同座して
あなたの中に眠る最もあなたらしいあなたを
ぐいぐいとリアルの世界に、
引っ張り出してくれるような時期なのです。
2012年頃から感じていた、
モヤモヤとした思いが、
ここで一気に形を得るでしょう。
「自分はどう生きていくべきか」
という問いに、
ここから2022年の中で、暫定的にでも、
答えを出していけるはずです。

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[愛について]

2021年、愛に追い風が吹くのは、
2月下旬から3月中旬、
6月、7月下旬から8月です。
また、11月から2022年3月頭にも、
爽やかな追い風が感じられるでしょう。
愛について嬉しいことが多い時期です。

2021年は、
愛する気持ちが「蘇る」
ような年となりそうです。
「愛が蘇る」いえば、
「復縁」が思い浮かぶかもしれません。
確かにそうしたこともあるかもしれませんが、
それ以上に、
「愛する感情が息を吹き返す」
「懐かしい気持ちで胸が一杯になる」
「倦怠期を脱して、
新鮮な愛が心に満ちてくる」
「人を愛する勇気を持てる」
といった変化が、
起こりやすい年だろうと思うのです。

憧れやトキメキ、恋の激情は、
ごく華やかな衝動ですが、
変わりやすく、儚い気持ちでもあります。
一方、愛する人を助けようとする気持ち、
または愛する人に救われたときの気持ちは、
非常に深く、濃く、
少々の風雨にも負けません。
2021年の魚座の愛の世界には、
後者のような深さ、濃密さがあります。
「この人は自分を解ってくれた」
「自分はこの人のことを解っている」
という気持ちは、
自分と相手を強く結びつけます。
それが幻想である場合も、
決して少なくないわけですが、
その一端に真実が含まれているとき、
愛の関係は頑丈になります。
2021年は、
そんな発見ができる年なのかもしれません。
「いいところを見せ合う」のではなく、
弱さや欠点を理解し受け止めるところから、
愛が「生まれる」か、または
「よみがえる」のだろうと思います。

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文字や古文書を持たない社会においては、神話の目的とは、未来が現在と過去に対してできる限り忠実であること - 完全に同じであることは明らかに不可能ですが - の保証なのです。
ところが私たちは、未来はつねに現在とは異なるものであるべきだ、またますます異なったものになってゆくべきだ、と考えます。
(中略)
しかしながらこの断絶は、歴史の研究によっておそらく打ち破られるでしょう。ただしそれは、歴史を神話から切り離されたものとは見なさず、神話の延長として研究することによって可能になるのです。
(レヴィ・ストロース『神話と意味』みすず書房)

過去の自分と今の自分、そして、未来の自分。
それらが「同じ自分である」というこの感覚は、どこから来るのでしょうか。
生まれた時の自分と今の自分では、姿も、自分を構成する材料も、全く変わってしまっているのに、私たちは「一貫した、自分」という感覚を持って日々を生きています。いくつになっても若い頃の栄光を披瀝せずにいられない人もいれば、ごく若い頃の恥ずかしい失敗やささやかな悪事を、老人になってからも後悔し続ける人も、少なくありません。

時間はどんどん先に進み、世の中は変化し、物事は常に新しいもので上書きされていきます。確かに私たちは「未来はつねに現在とは異なるものであるべきだ、またますます異なったものになってゆくべきだ」と考えています。
そんななかでも、私たちは「変わらない」と感じるものもあります。たとえば「自分が自分である」という感覚がそうです。特殊な病を得た場合は別ですが、基本的には、自分の痛みは自分の痛み、過去の自分と今の自分は、ひとりの自分です。

「自分が自分だ」という感覚は、「アイデンティティ」とか「自我」「セルフイメージ」「自意識」など、様々な言い方で語られます。
レヴィ・ストロースが歴史と神話の関係について語るように、私たちの「自分が自分である」という感覚も、過去の記憶によって作られた、ひとつの「神話」のようなものなのかもしれません。このお話は、人生の中で時々、書き加えられたり、上書きされたり、書き換えられたりすることもありますが、基本的にはひとつのストーリーで、死ぬまで携えていくことになります。

2021年、魚座の人々はそんな、自分のための「神話」に深く手を入れることになるのかもしれません。自分がたどってきた道のりをふり返り、未解決の問題を解き明かし、気がかりだったことをただし、必要な要素をできる限り揃え、不要の者は捨て去って、新たに「自分はこういう人間だ」という一本の神話を編み上げるのです。これは「ゼロから書き上げる」作業ではなく、「再編」「再構成」のような作業なのかもしれません。

もちろんこの「作業」は、机に向かってものを書くような活動ではないはずです。あるいは「自分史」を書く人もいるかもしれませんが、それ以上に、ある種の体験によって、再編された神話が心の中に「書き込まれる」のではないかと思うのです。

たとえば、誰かを無心に助ける体験。誰かに全力でサポートしてもらう体験。損得抜きであるテーマに打ち込む体験。誰かの心に触れる体験や、自分の弱さを受け止めるような体験もあるかもしれません。
心が直接コミットして、「自分とはこういう人間なのか」ということを深く感じたとき、そこに過去と未来を重ね合わせるための「神話」のようなものが生じます。
実際、ホロスコープという物自体が、一人の人の過去と未来を重ね合わせるための「神話」のようなものだと考えることもできると思うのです。

私たちは常に未来に向かって生きていくのに、なぜ過去の記憶が必要なのか。危険を避け、利益を得るための「学習」のような合目的的な記憶以外に、私たちはどうしても、自分だけの物語を必要とします。
少々フライングになりますが、2021年の初夏、そして2022年に、魚座の人々は「新しい自分」に出会うことになります。そのまえに、自分の「神話」を見つけることには、大きな意味があるはずです。

「未来が現在と過去に対してできる限り忠実であること」。たとえば「今、自分は自分らしく生きている」という実感は、その条件からもたらされます。
もし、自分の過去が怖ろしく辛く、思い出したくないようなものであったとしても、その中で生き延び、今現在の自分につながっている、英雄のような「自分」がきっと、どこかに見つかるはずです。その「自分」の物語を携えて、2021年から2022年という新しいスタートの時間を、「自分のもの」にできるはずなのです。