2021年 蠍座の空模様

小鳥は木の上に巣を作ります。
モグラは地中に穴を掘ります。
群れで暮らす動物もいれば、
単独で生きる動物もいます。
それにも似て、
人間も実に多様な「住み方」をします。
一人が好きな人もいれば、
大家族で暮らしたい人もいます。
世話好きな人、
世話をされたい人、
放っておいて欲しい人。
暮らし方はみんな様々で、
「住処」も「ともに暮らす相手」も、
人それぞれです。

たったそれだけのことが
なかなか理解されないこともあります。
この年齢になったら結婚しろとか、
子供を持たないのかとか、
家を持つのが普通だとか、
借家の方が合理的だとか、
親と一緒に住むなとか、
親の面倒を見ろとか、
実に様々な「意見」があるものです。
どんな住処と暮らし方がその人に合うのかは
本人にしか解りません。
もとい、
本人にも「まだ」、
どんな暮らし方が幸福なのか、
解っていないことも多いようです。
いくつかの暮らし方を試してみて
やっと「これだ!」と思えます。

2021年、蠍座の人々は、
「今の自分に合った暮らし方」を、
真剣に追求していくようです。
これまでの自分には合っていても
これからの自分には合わない、
という暮らし方もあるでしょう。
ヤドカリが貝殻を取り替えるように、
人間も、自分の人生のフェーズに併せて
「住処」「暮らし方」を
どんどん変えていくことができるはずです。
もちろん、
ずっと同じ暮らし方を守って、
そこで幸福を育てる人もいます。
「その人に合った生き方」は、
その人の暮らしの中に見つかるのです。

2021年、あなたは暮らしの中で、
「これが自分の住む世界だ!」
という手応えを得て行くでしょう。
もしそれが得られず、
息苦しい生活を強いられているなら
そこから脱出する術を
探し当てられるだろうと思います。
もちろん「暮らし」は、
自分一人の都合では変えられない場合もあります。
家族や愛する人、
人生の一部をシェアする相手との間で、
調整や議論が必要になります。
理想の住処を構想しても、
その構想を実現できるかどうかは、
別問題です。
条件に合う住処を見つけるのは、
なかなか難しいものです。
パートナーを見つけるのと同じくらい、
「住処」に出会うのは、
運命的で、奇跡的です。

それでも2021年、
あなたは「自分の城」を目指し、
ぐんぐん突き進むでしょう。
そして「その場所」を見いだすでしょう。
そこは、建物なのかもしれませんし、
あなたを取り巻く人の輪なのかもしれません。
あるいは、
誰かひとりの「心」なのかもしれません。

家族や住処を
「人を縛り、制限するもの」
と考える人もいます。
でも、少なくとも2021年、
蠍座の人々が見いだす「自分の世界」は、
「自由」というテーマと不可分です。
この時期のあなたは、
真に自由な個人として生きるために、
住処を構築したり、
家族に出会ったりするのだと思うのです。
これは矛盾しているように見えるでしょうが、
2021年を生きてみたあなたには、
その意味が深く了解されるはずです。
人は、一人でいれば自由、
というものではありません。
本当に自由になるためには、
誰かの心が必要になることもあれば、
居場所が必要になることもあるのです。

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[時期について]

1月から2月にかけては、
人間関係に熱がこもります。
刺激的な出会いがある一方で、
タフな交渉に臨む人もいるでしょう。
また、ずっと話し合えずにいたことを
この時期、
思い切って議題にできるかもしれません。
「家族会議」を盛大に開き、
思いをぶつけ合えるかもしれません。

2月後半から3月は、
とても楽しい時期となっています。
声をかけられたり、
誘われたりする場面も多いでしょう。
人がなにかと提案してくれたり、
チャンスを
「持ってきてくれる」気配があります。
受け取れるものは遠慮なく受け取り、
「これから」に活かしていけるでしょう。

4月から5月は、
公私ともに出会いが多い時期です。
人と会う事が楽しく感じられるでしょう。
物理的に会うことが難しくても、
リモートなどのかたちでも、
出会いはあるはずです。
人間関係が外がわに拡がります。
また、5月から6月は、
学びに熱がこもる時期でもあります。
状況が許せば、
遠出する人も多いでしょう。
行動範囲が拡大する時期です。

5月半ばから7月は、
非常にクリエイティブな時期です。
創造的な活動に取り組んでいる人には、
一大チャンスが巡ってくるでしょう。
2012年頃から頑張っていることが
「ブレイク」する可能性もあります。
この動きは、2022年に跨がって続く、
スケールの大きな物語です。
この時期は、愛も進展します。
愛の悩みに意外な解決策が見つかります。
素敵な出会いもあるでしょう。

6月中旬から8月は、
非常に忙しい時期です。
仕事や対外的な活動において、
「勝負」に出る人も多そうです。
チャレンジできる時です。
特に8月から9月前半は、
ともにチャレンジできる
「戦友」に恵まれるでしょう。
喜びも苦難も分かち合い、
その後も長く付き合って行けそうです。

9月から10月、
「過去との邂逅」が起こる時です。
懐かしい人と再会したり、
思い出の場所に出かけたりする中で、
未来への手掛かりを掴めそうです。
10月は経済面で
嬉しいこともありそうです。

10月末から12月前半は、
活力に溢れる、
とてもアクティブな時期です。
自分からガンガン動いて、
状況を進展させていけるでしょう。
持ち味を出しやすいときです。

11月から2022年3月頭は、
コミュニケーションがとても楽しくなる、
賑やかな時期となっています。
新しい出会いもあり、
発信力が強まり、
ネットワークが拡大しそうです。

12月から2022年1月は、
経済的に得るものが多そうです。
頑張って来たことが、
形を伴って「報われる」はずです。

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[愛について]

5月半ばから7月、
あなたは大スケールの
「愛の季節」に足を踏み入れます。
この「愛の季節」は、さらに
12月末から2022年前半に
本格化していきます。
愛を探している人は、
これらの時期に出会いを得られるでしょう。
既にパートナーがいる人は、
この時期、愛が大きく育つでしょう。

特に、2012年頃から
愛について深い疑念を感じたり、
愛のために多くの犠牲を払ったり、
悲しみや渇望、切なさを通して
愛の本質に触れてきた人もいるはずです。
もしあなたがそんな体験をしてきたなら、
この時期、あなたの愛の器に、
たっぷりの愛が流れ込みます。
これまでの疑念や不安、犠牲に、
肉付けがされ、中身が充填され、
「今までの思いが一体、
どういう意味を持っていたのか」
ということが、
現実的に理解できるようになります。
おそらく、
これまで悲観的に捉えていたことが、
実は非常に前向きで純粋な
「愛の本質」だったということが、
この初夏に解ってくるでしょう。
あるいは年末から2022年の体験が、
あなたに答えをくれるはずです。

2021年、
他に愛の追い風が吹きそうなのは、
2月後半から4月頭、
4月半ばから5月中旬、
9月中旬から10月頭、
10月末から12月前半です。
さらに、
11月から2022年3月頭は、
愛のコミュニケーションが活性化します。
愛を伝えること、
愛を語り合うこと、
愛について学ぶことに、
勢いが出る時期です。
片思い中の人はこの時期に、
膠着状態を打開できるかもしれません。

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「…海の魚は河に入る可からず、河の魚は海に入る可からず。駄目だ。早く帰つて心と心をしやりしやりと擦り合せたい。寂しいよ」

パリに留学した高村光太郎は、こんな手記を残しました。芸術家としての彼は、パリに魅了されました。しかし、一人の人間としての、フランス人との交流は、彼にとっては苦痛なものだったのです。

芸術や文化という面では光太郎は巴里ではじめて自分を知り、巴里の文化にひきつけられている。しかし日常の生活の中で付き合うフランス人との間には金網が張ってあるように感じている。
(阿部謹也『阿部謹也自伝』新潮社)
「心と心を通い合わせたい」というのではなく、また「心と心を一つにしたい」というのでもなく、「心と心をしやりしやりと擦り合せたい」という時、そのいずれでもない、心と心の接触の際の抵抗が表現されている。心と心は日本の「世間」の中ではすんなりとは通い合わず、多少の抵抗を受けながら、擦り合わせるようにして接触している状態が描かれている。
(同上)

憧れのパリに留学し、そこで「早く帰りたい」とさびしがっている光太郎。彼の正直な気持ちを前にして、「人が生きていくべき場所とは、どこなのだろう」という疑問が浮かびます。
「海の魚は河に入るべからず」と彼は書いていますが、海の魚は川に入ってみて始めて「なるほど、自分は海の魚なんだな」と気づくものではないかという気がするのです。

光太郎の「心と心をしやりしやりと擦り合せたい」という表現に、阿部謹也は、かならずしも故郷・日本が「安楽で居心地が良かった」わけではない、という心情を読み取っています。摩擦もデコボコもあったけれど、心が「擦り合う」ほどの距離の近さがあって、その近さが恋しい、ということなのでしょうか。
私たちが今、生きている日本には、「心と心をしやりしやりと擦り合せ」る状況があるだろうか、と、少し考え込んでしまいました。

居場所や住処を作る条件に、「心の距離」「他者との接触の感触」があるように思われます。保険やホームメーカーのCMに描かれるような「温かな家族」は、違和感なく心を一つにして生きているように見えます。
でも、現実の生活の中では、心と心は摩擦を引き起こしたり、衝突したりし、けっして「溶け合う」ばかりのものではありません。「しゃりしゃり」と音を立てて擦れ合っているのが、生活を共にする人々の心なのでは、という気もします。

2021年、蠍座の人々は、様々な形で「自分の生きる場所」を再発見することになるでしょう。それは光太郎のように、「ここは自分の居場所ではない」と認識するところから始まるのかもしれません。あるいは、「もっと自分に合う場所がある」と気づくところからスタートするのかもしれません。
いずれにせよ「新たな居場所」は、「ここではないどこか」「出会ったことのない人々」との邂逅がなければ、認識も再構築もできないものなのかもしれません。海の魚が川に出るような体験が、「居場所」への入り口なのかもしれません。

2021年、あなたはごく個性的な人に出会い、その人との出会いを通して、「自分が生きる場所」を発見するのかもしれません。
または、その人とはすでに、2019年頃から出会っているのかもしれません。
その人との関わりを通して、光太郎がフランス人と接して自覚したような「自分はどこに生きる生き物なのか」ということへの新しい認識が、電撃のようにあなたの胸を打つのかもしれません。
あるいはその人物の存在自体が、あなたの住処となるのかもしれません。

あなたを待っている「場」「住処」への入り口は、そんなふうに、意外なところに見つかる可能性もあるのです。