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CMは給湯室で生まれた。

第59回宣伝会議賞でCMゴールドをいただいた。

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受賞してから有難いことに、いろいろな飲み会のお誘いをいただく。
コピーが好きな人たちと飲む酒の美味しさは格別だ。
たいてい開始1時間もすると、ほろ酔いを通り越して酩酊状態である。
そんな会が温まったころになると必ず、

「あのCMはどうやって生まれたんですか?」
「『させてる』の切り口をどうやって見つけたんですか?」

と聞いてくださる方がいる。
CMゴールドをいただいた身としては、「できるだけイイ感じに」「少しでも参考にしてもらえるように」お話しするべきだ、と勢い込む。
ところが。

「そぉですねぇ…え~っと…なんでしょうねぇ…」

誰だ、こんなフワフワした話をし出したのは。
……私だ。
酔っぱらって頭も舌も回らない私だ。
この間も同じ失敗をしたのに馬鹿か、私は。
完全に役立たずな回答をした次の日、二日酔いの頭を抱え、顔から火を噴きまくり、冷や汗を流しながら反省する。
次こそは、次こそはしっかりと答えねば。
酒は控え、理路整然と話をするぞ。
そう決めたのに、次の飲み会でも楽しく日本酒を飲み(しかもジョッキで)、同じ過ちを繰り返している。


そんな失敗を繰り返した結果、私は決めた。
そもそも飲み会で酒を控え、しっかり受け答えするなんてことは、私には到底無理なのだ。
だから、noteに書くことにした。
CMでもよくあるではないか。
「詳しくはこちらをクリック!」
そうしておけば、「詳しくはnoteに書いてあるので…」と言える。

(そもそもソフトドリンクにしたらいいんじゃないかって?でも春先の日本酒っておいしくないですか。絶対に飲みたいので無理。)

さあ、美味しいお酒を飲むために、CMが生まれた日の話を書いていこうと思う。

あのCMを思いついたのは10月28日の昼休みだ。
10月1日の募集開始から毎日38個の課題と格闘し、もはや頭の中がカラッカラになっていた頃。
ちょうど仕事も期末を迎え、仕事的にも忙しい時期だった。
飽和した頭で会社の給湯室の壁にもたれかかり、順番を待っていた。
給湯室の中には2人の後輩がいて、下のような会話をしていた。

後輩A:最近マジで仕事やばいんだよね~。
後輩B:あ~、〇〇の締切そろそろだよね。
後輩A:△△(某アイドル)のライブTシャツもさぁ…毎日帰り遅すぎて、再配達になるからさぁ。今日も遅くなるし、ライブに間に合わないかも。
後輩B:え~、最悪じゃん!Aちゃん、かわいそう。私もさぁ…(以下略)

この会話をぼんやり聞いていた私は、その瞬間「それ、『再配達になる』んじゃなくて、『再配達させてる』んでしょ。」と思った。
こう思ったのは、確実に「ユニソンの宅配ボックス ヴィコ DB」の課題のことが頭にあったからだ。
席に戻って、すぐに手帳を開いて、この会話をメモした。そこから下のように書き換えた。

女A:最近仕事が忙しいんだよね。
女B:大変だね。
女A:毎日帰りが遅いから、宅配便とか全部、再配達になるんだよね。
NA:いいえ、それは「再配達をさせている」が正解です。やめよう再配達。ユニソンの宅配ボックス ヴィコ DB。

書いてから、後輩2人の顔を思い浮かべた。なんか違うな。これじゃ、たぶん後輩Aは絶対に再配達に罪悪感を抱かないし、一生再配達させるわ。
そこで横に座っている上司の肩をたたいた。

私:宅配便が再配達になることに罪悪感ってあります?
上司:え~、特にないかな。再配達も業者の仕事の一部でしょ。
私:でも再配達が多くて、労働時間とか環境問題的に課題になってるって。
上司:あ~、言われればね。でも、そこまで考えないでしょ。
私:指摘されたら気分悪い?
上司:それは関係性によるんじゃない?

そうか、友達(後輩B)に指摘される(叱られる)なら、まだ後輩Aにも響くかもしれない。今度は下のように書き換えた。

女A:最近仕事が忙しいんだよね。
女B:大変だね。
女A:毎日帰りが遅いから、宅配便とか全部、再配達になるんだよね。
女B:させてる。
女A:え?
女B:それ、再配達させてるんだよ。
NA:再配達させない日本を目指そう。ユニソンの宅配ボックス ヴィコ DB。

そこからは、口に出して読んだものを録音し、聞き直しては何度もリズムや語尾を変えたり削ったりして、最終的に、

女A:最近仕事が忙しいんだよね。
女B:大変だね。
女A:毎日帰りが遅いから、宅配便とか全部、再配達になるんだよね。
女B:させてる。
女A:え?
女B:再配達をさせてる、んでしょ。
NA:再配達させない日本を。ユニソンの宅配ボックス ヴィコ DB。

とした。

これがCMゴールドをいただいたCMの生まれた日のお話である。

この作り方が正しいのかどうか、参考にしていただけるかどうかは謎だが……ひとまずこれで、飲み会の初めから思う存分日本酒が飲める。
さっそく日本酒を買ってこようと思います。

ちなみに…
上司には贈呈式の帰りにドラえもんのお菓子を買ってきた。(291円)
自分たちの会話を勝手に使われているなんて、夢にも思っていない後輩AとBには、突然チョコを差し入れた。(なんで?と言われたけれど適当にごまかした)
もしかしたらこのnoteを読むかもしれないけど、これでチャラ、ということで…。

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