バイト話2【三橋雄斗】


21歳くらいのとき、二人で同じスーパーでバイトを始めました。


僕は、鮮魚部門。
ひかりちゃんは、鮮魚部門の横にある、寿司部門。



両部門は一心同体で、
鮮魚部門で捌いた魚を、隣の部屋の寿司部門に渡す用の小窓がついているほど。


小窓から、ひかりちゃんがやる気無さそうに寿司を作っているのをよく見ていましたね。





ある日、業者さんから、「鮮魚部門の皆さんで試食してみてください」と、酢ダコが届きました。



早速切り分け、部門みんなで試食しました。


これは旨い!いい酢ダコだ!


何年も鮮魚に携わってきた社員さんたちが口を揃えて言うのです。


僕も、今まで酢ダコを特に好んでは食べませんでしたが、あの酢ダコは、あと引く美味しさでした。


社員さんは優しい方で、「三橋くん若いんだからもうちょっと食べなよ」

と言って頂いたので、もう一枚頂きました。


何枚食べても美味しい。



社員さんは、
「これは寿司部門の人たちにも食べさせてあげよう。」

といって、小窓から寿司部門の人たちを呼び、ちょっと食べてみてと酢ダコを差し出しました。




ひかりちゃんの他は、パートのご婦人が二人いて、
そのお二人は、一枚ずつ食べ「あら美味しい!」とやはり口を揃えて言いました。




最後にひかりちゃんが「じゃあ、あたしもいただきます」と酢ダコを一枚取りました。


「たしかにうまいっすね」
と満足そうに食べていましたが、

社員さんが「一枚でいいの?もうちょっといいよ」
と、僕と同じように、ひかりちゃんに言うのです。


それを聞いたひかりちゃんは、また酢ダコに手を伸ばしました。


でもひかりちゃんは、一枚どころか五枚ほど一気に取りました。


それをほおばり、「何枚食べてもうまいっすねー」と満足そうでした。


それを見た社員さんが、
「天野さん、がめついねー!」
と笑いながら言ったのです。




でもその発言に、ひかりちゃんの表情が少し曇ったのを僕は見逃しませんでした。



バイトが終わったあと、ひかりちゃんがタバコを吸いながら、
「なんであれで、がめついって言われなきゃなんないんだ」

「あの人『もうちょっといいよ』って言っただろう。一枚だけなら『もう一枚いいよ』っ言うべきだろう」

「みんな絶対バカにしただろう」

などと愚痴っていたのですが、


さすがに五枚いくのは、がめついと僕も思っていたので、ただ黙っていました。


いまでも、タコを食べるときにはその話になりますが、そのときばかりは本音を隠しています。


ここに書いたことで、本音がバレてしまいますね。怖いですがなんか清々しい気持ちです。


【相方へ】
本当に言葉足らずであった点につきましては、お詫び申し上げます。
「よかった」という気持ちを、文字に上手く起こせませんでした。


冷盛り、正解です!僕も正解しましたね。今度、冷えっ冷えのつけ麺食べに行きましょうね。


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