肉盛溶接とは?方法と事例を解説

■肉盛溶接とは
肉盛溶接(肉盛り溶接)とは、溶接とは異なる部材同士を継ぐ、部材同士を接合し、合体させることです。
肉盛溶接は基盤材料の上に異なる金属を盛り上げる技術です。
ちなみに肉盛溶接を英語で書くとbuild up weldingと書きます。

肉盛溶接を行う目的には表面改質や形状復元(補修)が挙げられます。
腐食や摩耗により損傷した部材の形状復元や、耐摩耗性や耐食性を付加することで
耐久性の向上や性能アップが図れます。
全体を高価な金属で製作するよりも安価で済みます。
肉盛溶接は、溶射やめっきに比べて厚い層が形成できることや、母材と肉盛層とが冶金的結合することから、耐久性の高い表面改質効果があるようです。

★ポイント
合金化とは異なり、母材への肉盛金属の希釈をあまり発生させない母材に約1mm以上の厚さの肉盛金属を作る方法です。
肉盛金属と母材との接合界面は溶融しているので、強固な接合部が得られます。
しかし、接合部に脆弱な金属間化合物が生成する場合には注意が必要です。

★摩耗部品の肉盛溶接事例
摩耗部品の肉盛溶接事例になりますが、下記の方法で形状復元が可能です。

・摩耗部の補修
摩耗して使用できなくなった部品を復元

・亀裂の補修
ガウジングにより亀裂部分を除去した後、肉盛溶接により除去部分を復元

・欠損ギヤの補修
ギヤの摩耗欠損部分を肉盛溶接により復元します。
肉盛後はグラインダーにより成形をして復元可能です。
また、復元部分に表面改質を施すこともいいかもしれません。

・ロールの補修例(波状肉盛)
摩耗して使用できなくなったロールを復元

・キルンタイヤ損耗部の補修
ロータリーキルン(回転窯)
キルンタイヤの溶接補修作業キルンタイヤの溶接補修作業
補修後 検査補修後 検査


■肉盛溶接の加工法

1.母材の耐熱性や耐食性などの付加価値を高めたい部分をレーザで加熱します
2.耐熱性や耐食性などの付加価値を持つ金属粉末をその部分に供給します
3.金属粉末が溶融して母材と金属結合します
4.レーザ加熱をやめると溶融金属が固化して肉盛り層ができます

★挑戦的な肉盛溶接を使った溶接修理を考えたベルギー溶接研究所の論文 
PWHTを回避することによるグレード91チューブの挑戦的な溶接修理
https://www.researchgate.net/publication/229019149_Challenging_weld_repair_of_grade_91_tubing_by_avoiding_PWHT

既存の発電所の新規および改修の設計の標準的な材料になっています。
これらの新しいクリープ強度強化(CSE)鋼の製造後にいくつかの大きな故障が発生し、
主に不適切な慣行が原因です。しかし、溶接の修理に関しては、別の重大な状況が発生しています。
ガスバッキングと必要なPWHTは、溶接修理スケジュール全体で時間のかかる要素です。
PWHTは正しい微細構造を得るための前提条件ですが、発電機は発電所のダウンタイムを減らすためにこの熱処理を回避する傾向があります。
共同研究プログラムでは、BWIとLaborelecは、ガスバッキングとPWHTを使用せずに修理T91チューブを溶接するために、
冷間溶接修理方法の実現可能性を調査するという課題に取り組みました。
これまでの実現可能性調査は、不一致の消耗品の選択と制御された堆積手順に基づく修復方法が、
許容可能な微細構造、したがって固有の特性をもたらす可能性があることを示しました。
研究論文の結果は、ボイラーの格納容器内でのT91チューブの一時的な修理溶接に非常に有望です。


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