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狙われたおはようございます。【shortエッセイ】

男は毎朝その道路地に立つ。

5分に1人ペースが通る疎な道で男が狙うのは、ただひとつ。「おはようございます」だ。

男は空気や雑音、騒音に消されないように周波数を上げて少し甲高い声色でおはようございますを放つ。

最初の5.6週間は良かった。

「今の時代に自分から見知らぬ人に挨拶をする人が居るなんて、珍しいなぁ」

物珍しさと、挨拶をされる喜びがあり毎日が過ぎる。

しかし、ある日からそのやり取りが億劫になる。自主的におはようございますをしていた男に、通行人も応え、そのうち関係性が芽生えた。

"おはようございますを、返さねばならない"

毎日繰り返されたおはようございますは、いつの間にか気持ちのいいものから、シガラミに変わっていたのだ。

義務感が生まれ、返さなければ罪悪感が生まれ、通行人はやがてチラホラ少なくなっていく。

男が狙っていたのは、まさにそのシガラミだった。


狙われたおはようございます。完

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