【ソフトテニス】2022年現地で見た個人的名勝負5選

2022年のソフトテニス界は、全日本選手権を始め数年ぶりに開催される大会もあり、多くの名勝負が誕生した熱い1年になりました。その中で自分が現地で観戦することの出来た数少ない大会の中から特に印象に残っている名勝負5つを今年の振り返り兼備忘録として挙げていきたいと思います。


名勝負①
JAPANGP2022準決勝 船水上松ペアvs内本内田ペア

12月17日に愛知県のドルフィンズアリーナで行われたJAPANGP2022の準決勝で実現した日本代表ペア同士による最高峰の試合。
とにかくひとつひとつのプレーのレベルが高すぎて、これが今の日本最強のプレーヤー同士の試合なんだ、そしてこれを現地で見ることが出来たんだという感動と興奮と感謝を覚えた試合だった。
試合の序盤は内本内田ペアが持ち前の攻撃力で船水上松ペアからどんどんポイントを重ねていきリードを奪う展開。しかし天皇杯チャンピオンの船水上松ペアは流石の守備力で内本内田ペアの攻めを粘って防いで自分達のペースに持っていき一気に逆転に成功。ゲームカウント3-2で船水上松ペアのリードで迎えた第6ゲームからは両ペアのギアが最高潮に。船水選手と内本選手の力強いストローク合戦と、それに絡んでいく両前衛のスーパープレー、そしてそれを当然のようにフォローして次のプレーに繋ぐ4人の執念が混ざりあったゲームは最高のエンターテイメントだった。
最終的には船水上松ペアが内本内田ペアに5-3で勝利を掴んだが、ほんの少し何かがズレていたら逆の結果になっていたと思わせる本当にギリギリの大熱戦だった。


名勝負②
JAPANGP2022決勝戦 船水上松ペアvs上岡丸山ペア

前述の試合に勝利した船水上松ペアと、決勝までの2試合で失ゲーム0で絶好調の上岡丸山ペアによる、天皇杯決勝戦の再戦となったプロプレーヤー同士の決勝戦。こちらも準決勝の内本内田ペア戦に負けず劣らずの大激戦で至高の勝負だった。
JAPANGPの決勝戦は他の試合と違って5ゲーム3セットマッチで行われるため長丁場が予想される対決となったが、実際期待通りにフルセットまでもつれる1時間超えの熱闘となった。
第1セットは、ここまでの試合は後の先を取るような展開を繰り広げていた船水上松ペアが序盤から攻めて第1ゲームをとると、その勢いのまま一気に3ゲーム連取。このままの勢いで船水上松ペアが優勝に手を掛けるかと思われたが、2セット目は上岡丸山ペアが反撃を開始。上岡選手得意のパッシングやダウンザラインの強烈なストロークが決まり、丸山選手がどんどんアジャストして得点を重ねて試合を優位に進める。しかし船水上松ペアも負けじと応戦。殴り合いのようなハイレベルな応酬の末にファイナルゲームに突入。ファイナルゲームでは上岡丸山ペアが怒涛の連続ポイントでリードし、勢いそのまま攻め続けて第2セットを奪った。迎える第3セット。この時点で試合時間は既に50分を超え全選手の疲労がピークに達しているはずだが、このセットは序盤から上松選手の疲れを感じさせない活躍で船水上松ペアが突き放しにかかる。上岡丸山ペアも力強いプレーで1ゲーム返したが、最後まで上松選手が暴れ続けてセットカウント2-1で船水上松ペアが見事優勝を輝いた。
インドアではオムニコート程の結果を残せていない印象の船水上松ペアだったが、インドアでのプレーもやはり最強だった。上岡丸山ペアは準優勝だったが、天皇杯に続いての活躍は疑いようもない実力を見せ付ける結果となった。今後は船水上松ペア・内本内田ペア・上岡丸山ペアの3ペアが中心となって日本ソフトテニス界を引っ張っていくんだろうと予感させる、未来に期待を持たせるような素晴らしい試合だった。


名勝負③
ハイジャパ男子ダブルス準々決勝 野口菊山ペアvs齋藤安部ペア

2022年の高校生の主要全国大会である選抜・ハイジャパ・インハイ個人戦・インハイ団体戦・国体の5つ大会全てで決勝戦に進出し28戦無敗という驚異的な結果を残した野口菊山ペア。その野口菊山ペアがファイナルにまで迫られた試合は3試合あるが、最初に追い詰められたのがハイジャパ準々決勝の齋藤安部ペアとの試合だった。
齋藤安部ペアは大会前はあまり注目されるようなペアでは無かったが、パワー全開で攻めまくるストロングスタイルのプレーで尽誠学園の中川宮田ペアや、前年インハイ個人戦ベスト16の大牟田の長友澤田ペアなどの強敵を倒して勝ち上がってきた。
試合序盤は野口菊山ペアの前に持ち前のパワープレーが発揮できず0-2となった齋藤安部ペアだったが、徐々に攻撃の威力が増していき野口菊山ペアのミスを誘うように。1ゲーム返したところから火が付いたように齋藤安部ペアの攻撃が激しくなり、特に前衛の安部選手の読みが冴え渡り得点を量産し始め一気に3-2に逆転。第6ゲームもマッチポイントを奪うところまで追い詰めたが、あと数センチ違っていればという本当に惜しいアウトやネットで決めきれずファイナルゲームにもつれ込んだ。ファイナルでも互角の勝負を繰り広げたが、ほんの僅かなミスが大きく響き野口菊山ペアが勝利を手にした。
惜しいミスで勝利を逃したものの、中盤以降は常に齋藤安部ペアが主導権を握り続けマッチポイントまで野口菊山ペアを追い詰めたというのは後の野口菊山ペアの不敗神話を考えるととてつもないことだった。
会場でも多くのギャラリーがこのままジャイアントキリングが達成されるのか、本当に野口菊山ペアがこのまま負けてしまうのかという期待と不安が混ざった緊張感の中、ひとつひとつのプレーで盛り上がりながら観戦していたことは記憶に残っている。何年もハイジャパを見続けているが、準々決勝でここまでの熱気に溢れた試合はそう多くない。素晴らしい試合だった。


名勝負④
春季北海道学生選手権決勝戦 加藤新谷ペアvs荒川鈴木ペア

2022年の北海道は多くの大会が関係者・保護者のみ観戦可能で、一般の観客の入場が認められない状況だったが、唯一入場制限を設けずに行われたのが大学生の大会だった。そのため年内最初の現地観戦が叶ったのが5月に行われた春季北海道学生選手権となった。
北海道の大学生の大会を見られるのも数年ぶりで、そもそも現地観戦すらも1年ほど出来なかったため、久しぶりの生のプレーはどれもより素晴らしく感じ、大学生のレベルも高さも実感した良い体験だった。
その大会の最後を締めくくる試合となった北海道の絶対王者札幌学院大学の1番手加藤新谷ペアと、名将の指導で実力を伸ばしている北翔大学の若きエース荒川鈴木ペアの決勝戦は見応えのある対戦となった。また、加藤選手と荒川鈴木ペアの3人は高校時代はとわの森のチームメイトで、加藤選手と鈴木選手は元ペアということでより面白い対戦に。
試合序盤は荒川選手の強力なストロークを中心に押して鈴木選手がしっかり決める流れで有利に進めたが、徐々に加藤新谷ペアが対応していく。ゲームカウント1-2でリードを奪われた加藤新谷ペアだったが、第4ゲームあたりから加藤選手の鈴木選手の裏をかく配球がハマり始め、新谷選手もどこに打球が来るのか完全に理解しているかのようなポーチボレーを連発し一気に逆転。その後は加藤新谷ペアのミスが非常に少なく安定してコースを攻めるプレーが崩れることなく進み、5-2で今年最初の大学王者に輝いた。
この試合だけでなく大会を通じて、高校時代から何度も活躍を見ていた選手たちの成長を感じるとともに、レベルの高い試合を見ることができて非常に面白い大会だった。
また、この大会はインカレ出場がかかっていることもあり、たびたびチームメイトの応援に熱が入り大きな声が出てしまう場面があり、本部側からの注意が入ることが数回あった。その中で本部からのアナウンスの「先程も注意しましたが、声を出しての応援は止めてください。注意されるまではやってもいいというのは子供の論理です。」という一言は、今のご時世の中で少しでも安全で良い大会にしようという気持ちが伝わってきて、自分自身もより気を付けなければならないなと身が引き締まるようなアナウンスだった。


名勝負⑤
北海道学生新人大会選手権決勝戦 岩城高橋ペアvs田畑福田ペア

今年の全国大会に出て爪痕を残した選手も多く出場する学生新人戦。既にチームの主力として活躍している選手と、これからの北海道大学ソフトテニスを引っ張っていくだろう選手たちの対戦はどれも熱かったが、やはり決勝戦は素晴らしい試合となった。
札幌学院大学同士の決勝戦は同校対決ながらも緩さはなく真剣勝負の様相を見せる。
序盤は田畑福田ペアが田畑選手のコースを突くストロークと長身前衛の福田選手のプレーがハマって2-0でリードを奪う。しかし岩城高橋ペアがキレキレのカットサーブから変幻自在のフォーメーションを展開して相手を揺さぶって主導権を握り返して3ゲーム連取で逆転。そこからは両者持ち味を活かして取って取られてのシーソーゲーム。田畑福田ペアが追い付き先に追い詰めるが、岩城高橋ペアもすぐに取り返してファイナルゲームに。ファイナルに突入しても熱戦は続きデュースの末に岩城高橋ペアが決めきって見事優勝を果たした。
今年の全日本王座とインカレ大学対抗はどちらも全国の強豪校相手に僅かに勝利に届かなかった札幌学院大学だったが、今回の新人戦で活躍した選手を中心に来年、再来年の全国大会で上位進出を果たしてくれることに期待を持ちたくなるような大会だった。


以上、2022年に現地観戦できた中で特に印象に残った名勝負5選でした。これ以外の試合ももちろん素晴らしい試合ばかりで、現地観戦の回数は少なかったが久しぶりに生のプレーを見ることができて満足度の高い1年となりました。しかし高校以下の選手が出場する大会はまだ入場制限が続いており、数年前から楽しみにしていた北海道全中も観戦が叶わなくなるなど悔しい思いも多い1年でした。2023年はどうにか状況がもっと良くなって、もっと多くの大会に不安なく足を運べるように戻ってほしいと願います。