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【ソフトテニス】2023年現地で見た個人的名勝負10選

去年まではまだ無観客・選手関係者や保護者のみ観戦可能という大会が多かったが、今年からはその制限も撤廃されて4年ぶりに気兼ねなく観戦に行けるようになった。
おかげで今年1年間で14大会23日現地に観戦に行くことができた(大会途中から観戦や途中離脱・中止含む)。
その中から特に記憶に残る個人的な名勝負10試合を今年の振り返りとして挙げていこうと思います。



名勝負① YONEXCUP2023札幌国際予選リーグ 永野大塚ペアvs水木端山ペア

2023年最初の現地観戦となった札幌国際。

札幌国際も現地で観ることができたのは2019年以来ということで、元々出場予定だったトップ選手が体調不良で多数欠場となり急遽代替選手が出場するというトラブルがあったものの、生でハイレベルなプレーを観られる喜びが大きく上回って非常にテンションが上がる大会になった。

その大会でまず初めにテンションが爆上がりしたのが、北海道の生きる伝説大塚選手がナショナルチームペアの水木端山ペアを倒すという事件。

今では絶滅危惧種の一本シャフトのラケットを操り、代名詞のコンパクトなスイングから放たれる変幻自在のショットで翻弄し、後衛前衛並行陣なんでもござれで大塚選手が大暴れ。急造ペアとはいえナショナルチームペアの水木端山ペア相手にまだこんなプレーが出来るのかという驚きと興奮でついつい笑いが溢れるほどのインパクトの強さだった。

惜しくも決勝トーナメント進出は逃したが、次の札幌国際の出場権も得ているため、次はどんなプレーを見せてどんな結果を残すのかとても楽しみ。


名勝負② YONEXCUP2023札幌国際決勝戦 林歐ペアvs水木端山ペア

今年の札幌国際は久しぶりに中華台北から参戦があり、ともにA代表入りしている林歐ペアが出場。林選手は余選手とのペアで国際大会で活躍していて世界最強選手の1人に数えられる程の選手。

その強敵相手に水木端山ペアが挑んだ決勝戦だが、第1ゲームから素晴らしいプレーの応酬でロングデュースの激戦に。勢い満天のパワフルな歐選手と、とんでもないキレと強さの林選手のダブルフォワードの猛攻と、取って取って取りまくる水木端山ペアの守備力というホコタテな攻防はとんでもなく熱かった。

お互いとってとられての熱戦は、最後に股抜きショットから繋いで決めた林歐ペアが勝利し優勝。林選手は札幌国際3度目の優勝となった。

例年前年優勝枠がある札幌国際だが、次もこのペアで挑むのか、それとも別のペアで出るのかは不明だが、また世界レベルのスーパープレーを見せてくれることに期待したい。


名勝負③ 国体北海道予選成年の部ダブルス決勝リーグ 内海榊原ペアvs佐藤岡田ペア

観戦しながらつけた採点表

北海道内の大会から唯一選んだ試合で、北海道の絶対王者内海榊原ペアが2023年度の道内の大会で最も追い詰められた試合だった。

対戦相手は2022年のインターハイで個人戦5位、団体戦3位となった成年の部1年目の佐藤岡田ペア。高校1年生の頃から組み続けた見事なコンビネーションを見せるダブルフォワードで、札幌国際では内海榊原ペアから白星を奪っているだけに国体予選の最注目カードだったが、期待通りの熱戦となった。

この日の会場の砂川は超強風が吹き荒ぶかなり難しいコンディションで双方共にミスが多く見られたが、特に内海榊原ペアの方が厳しい場面が多く、ゲームは取るもののデュースまで競る苦しい展開が続いた。

相手だけでなく会場とも戦うような激戦はシーソーゲームを繰り広げてファイナルに突入。

ファイナルでは佐藤岡田ペアがダブルフォワードの強さを出してリードを奪いマッチポイントを握ったが、そこでの惜しいプレーから内海榊原ペアが流れを掴み、最後は連続ポイントでフィニッシュ。
国体代表内定を掴むと共に、道内無敗も継続される結果となった。

最終的にこの2ペアは国体の代表を掴み、国体本番では6位入賞を果たして北海道のレベルの高さを見せた。


名勝負④ インターハイ男子個人戦決勝戦 坂口野本ペアvs根岸中尾ペア

自身初めてのインターハイ観戦となる、地元開催の北海道インターハイ。
それまでにも数え切れないほどの熱闘激戦名勝負はあったが、その頂点を決める個人戦決勝戦は期待を超えてくる別格の試合だった。

決勝戦は東北高校として2年連続の決勝戦となった根岸中尾ペアと、現高校最強尽誠学園のエース坂口野本ペアの対戦。

根岸中尾ペアは6回戦からこれで4戦連続で尽誠学園との対戦で、坂口野本ペアは準々決勝・準決勝と2試合連続で相手に3ゲーム奪われてからの逆転勝ちで、両ペアとも疲労はピークを迎えている……はずなのだがそんなことを一切感じさせない素晴らしいプレーの応酬。

根岸中尾ペアがまず先制すると、坂口野本ペアが反撃してリードを奪い、根岸中尾ペアが再び巻き返して先に王手をかけるも、坂口野本ペアがプレッシャーに負けずにこの試合も劣勢からファイナルまで持ち込む精神力を見せるという大熱戦。

ファイナルになってもこの大接戦は続き、ファイナルデュースに突入。
先にチャンピオンシップポイントを握ったのは根岸中尾ペアだったが、決めに行ったスマッシュが際どいコースとなり協議の末アウトの判定に。
その後は命拾いした坂口野本ペアが連続ポイントで日本一を掴んだ。

高校最強を決める舞台に相応しい、両ペアとも優勝でいいんじゃないかと思うくらい素晴らしい試合だった。

色々と物議を醸したチャンピオンシップポイントでの判定についてはかなり微妙なところで、自分は丘の上という少し離れた場所から見ていたのでアウトでもインでもおかしいとは思えなくて、映像に残っているシーンでもはっきりとどっちとは言えないような映像なので、審判の判定を信じて従うしかないが、最近のソフトテニスの道具の進化と身体的・技術的なレベルの向上によるボールスピードの上昇で、高校レベルでももう人間の目では判定が難しいところもあると思っていたので、これを機に少しでも審判制度の改善や、ビデオ判定の導入なども検討されてほしいなとも思ったり。
数は少ないし球技では無いかもしれないけど、高校スポーツでもビデオ判定が導入されてる競技もあるみたいだし、せめて決勝戦だけでもより多くの人が納得できて、審判も守れる環境が作れる時代が来るのが待ち遠しいです。というか跡の付きにくいオムニや、そもそも付かないインドア・ハードコートでいちいち審判に詰め寄って抗議するのは時間の無駄だし、そういうことが多いと見てて心象が悪くなるから、そういうのが消えてほしいというところでも、なんとか頼む。


名勝負⑤ インターハイ男子団体戦準決勝 尽誠学園vs三重

2面展開は絶対に悪だと思っていた自分の考えを揺るがすほどの衝撃を与えた対戦。

ソフトテニスの団体戦は大会が進むにつれて2面展開での対戦が前提となっているところがあり、それは選手や応援団はもちろん観客的にも望ましくないことだなと常々思っていて、可能なら日程増やして団体戦全対戦を1面展開で行ってほしいと願っていたし、今もその考えを変えるつもりもないが、この対戦のような展開の時だけは2面展開の方が面白いし興奮すると思わされた。

尽誠学園と三重の対戦カードは、第1試合藤崎小山ペアvs若林中内ペアと、第2試合坂口野本ペアvs南竹内ペアが同時に開始。

坂口野本ペアは前日個人戦で優勝した勢いのまま強さを見せて南竹内ペアを圧倒していく。
藤崎小山ペアの方も競ったゲームがあったがリードを広げて、両コートとも3-1で尽誠学園がリードしていた。

先に試合を決めたのは坂口野本ペア。ここでまず1勝を挙げて尽誠学園がリーチをかけて、藤崎小山ペアの勝利を待つだけだったが、ここから三重も執念を見せて粘り続ける。

藤崎小山ペアvs若林中内ペアの熱闘が続く中、第3試合の塚本豊田ペアvs伊藤板舛ペアが始まったが、第1試合がリードしている影響もあってか塚本豊田ペアは少し乱れた入り。対する伊藤板舛ペアは逆転勝利への望みをかけて最初からフルスロットルで攻めまくる。

そうすると第1試合では少しずつ若林中内ペアが追い上げを見せ、勝利まであと一歩という藤崎小山ペアを振り切ってファイナルまで持ち込む。

第1試合がファイナルで競った展開の中、第3試合は終始三重のペース。伊藤板舛ペアが猛攻で相手に持ち味を出させる前に得点を奪って3ゲーム連取。この時点で第1試合はファイナル4-2で若林中内ペアがリード。

このあたりで試合を見ていた全員が、もしかしたらこのまま行けば三重の逆転勝利があるのでは!?とざわつき始め、ドキドキと興奮が高まっていく。

先にマッチポイントを奪ったのは第1試合の若林中内ペア。その間も伊藤板舛ペアも相手を突き放して勝利目前。これは三重が同時に勝って決めるのでは!?というドキドキで手汗と動悸が激しくなってくる。

しかし藤崎小山ペアも王者の意地を見せてマッチポイント握られてからも粘り続けてファイナルデュースに持ち込む。

どうなる!どっちが決める!どっちが勝つんだ!?という激しい緊張の中、先に試合を決めたのは伊藤板舛ペア。第1試合より先に第3試合が決着してこれで1-1に。ファイナルデュースを制した方が決勝進出で盛り上がりは最高潮に。

藤崎小山ペアが土壇場からの連続ポイントで逆マッチポイントを奪うと、若林中内ペアも再度取り戻してアゲイン。しかし藤崎小山ペアがまたしてもマッチポイントを掴み、最後は若林中内ペアがこらえきれずにゲームセット。

死闘を制した尽誠学園はこの勢いで決勝戦も勝利してインターハイ団体戦4連覇という偉業を成し遂げた。

王者尽誠学園を絶対絶命まで追い込んだこの対戦は、今年の団体戦で最も盛り上がったのは間違いなくこの対戦だと断言できるくらいとんでもない展開と熱だった。

ソフトテニスで、野球の9回裏同点二死満塁くらいの一球ごとに心臓が張り裂けそうなくらいの緊張感を味わうという経験がいまだかつてなかったので、こういうドキドキとワクワクが味わえるのなら2面展開も悪くないのかもなと少し思わされました。


名勝負⑥ インターハイ女子団体戦決勝戦 三重vs広島翔洋

今までソフトテニスを見てきた中で1番泣いた試合。

3大会連続で準優勝中のシルバーコレクター状態の三重と、常に優勝候補に挙げられていたが思うような結果を残せていなかった広島翔洋による決勝戦。

もうすでに辺りが真っ暗でナイターゲームとなった19時頃。「ああ、これが噂に聞いていたあの夜遅くの地獄のインハイ女子決勝戦か!」と場の雰囲気に酔うような謎の高揚感に包まれながら決勝戦が始まった。

エース対決が避けられたような形で、第1試合は三重のエース大槁岡ペアvs広島翔洋スーパールーキーの塚本前川ペアが入り、第2試合は準決勝で死闘を制した内田青木ペア(三重)vs広島翔洋の絶対的エース佐藤杉本ペアの対戦になった。

しかし意外にも両試合とも三重が序盤から流れを持っていき、第2試合は三重が3-0リードを奪う展開に。

しかしここからが佐藤杉本ペアの強さ。追い込まれてから相手の裏をかくプレーが増えてきてジワジワと追い上げていき、なんと0-3からファイナルまで持ち込んだ。
それとほぼ同時に、第1試合は大槁岡ペアが4-2で勝利を挙げて優勝に王手をかけた。

先に始まっていた試合がファイナルになり、第3試合が始まるこの展開で男子準決勝の尽誠学園vs三重が脳裏に浮かんだが、この対戦はそこまでギリギリまではならず、まずは佐藤杉本ペアが0-3からの大逆転勝利を収めた。これで成績は1-1のタイに。

正真正銘今年のインターハイラストマッチとなった第3試合は、三重の下級生ペアの林浦野ペアと、当日の選手変更でメンバー入りし組むこととなった田畑宮前ペアの対戦となった。

序盤から両前衛が活発に動いて仕掛けて攻めてポイントを奪いあう殴り合いで、ゲームを取って取られての大激戦。

先に王手をかけたのは林浦野ペアの方だったが、最終学年の田畑宮前ペアも粘って粘ってファイナルに持ち込んだ。
この時点で20時丁度。こんな遅くまで試合見るなんてことはそうそう無いし、それが内容も良くて、しかも日本一がかかった大舞台の最後の試合ということで、疲れもピークなはずだけど謎のスイッチが入って、次の日仕事だけどもう終わらないでくれ!もっともっと最高の試合を見せてくれ!とテンションはMAXに。

ファイナルに入ってからも両ペア譲らずシーソーゲームの様相を見せたが、第8ポイントから林浦野ペアがハマったプレーを見せて一気にチャンピオンシップポイントを握り、そのまま優勝を決めた。三重が3年連続準優勝の悔しさを晴らす結果となった。

この決着がついた瞬間に全員で抱き合い喜びを分かち合う三重の姿と、あと一歩で悲願が逃げていった悔しさから立ち上がることもできずに涙を流す広島翔洋のこの残酷なまでの対比が目に入った瞬間に、急に涙が溢れて止まらなくなった。
マンガやアニメで泣いたり、ライブを見るたびに号泣してる涙腺ガバガバオタクの自分だけど、今までスポーツを見て泣くということはあまり無く、それもソフトテニスでというのは記憶になかったが、この時ばかりは涙腺が終わった。試合終わったあとの写真撮影や、もう21時近くになる時間の表彰式まで見てずっと泣いてた。場の雰囲気に飲まれたのはあったけど、本当に良い体験だった。
でも正直、もう2度と翌日仕事なのに夜9時まで大会見るなんて経験したくないし、選手も応援も観客もみんながしんどい思いをするのも事実なので、本当インハイの団体戦も2日に日程分けてください……。お願いします高体連様……。

あと、初めて丸一日女子の試合だけを見続けるということをしたけど、高校女子が想像していたよりも前衛がよく動いているし、色んな陣形を混じえて戦うペアも増えていて、見ていて男子並みに面白いなと思うところも結構あった。特に三重、和歌山信愛、昇陽あたりは前衛が特に積極的で、こういう前衛がよく絡む試合が多かったら女子ももっと見てみようかなと思えた。今後もっと前衛が活躍するようになってほしい。


名勝負⑦ 全日本選手権男子(天皇杯)5回戦 増田竹田ペアvs西本黒須ペア

今年の全日本選手権は、初めてハードコートでの開催となり、更に初日の悪天候の影響で試合進行が遅くなり、選手にとってかなり対応が難しい環境での戦いとなった。

しかしそんな厳しい状況下でもどこもかしこも素晴らしいプレー連発で名勝負だらけではあったが、初日・2日目で自分がフルで見ることができた試合で1番だと思う試合は、8決めの増田竹田ペアと西本黒須ペアの対戦だった。

インカレダブルスでは準決勝で対戦している両ペアが全日本選手権の舞台で再び相まみえるという激アツな展開もさることながら、個人的にはやはり北海道出身の増田選手の活躍という点が大きい。

増田選手が高校の時に何度もプレーを見てきて、めっちゃ球の速いゴリゴリのストローカーというようなイメージを抱いていたので、インカレの活躍を見て、ここに来てダブルフォワードで花開くとはどういうこっちゃととても驚いたので、この対戦はそういう楽しみも含めてかなり楽しみだった。

日も傾き始める夕方に始まった因縁の対戦は序盤から熱い攻防が繰り広げられる。
ダブルフォワードで攻める増田竹田ペアに対して、平行陣と雁行陣を織り交ぜて対応する西本黒須ペアという感じだが、序盤はとにかく西本黒須ペアのディフェンスとカウンターが光った印象。
厳しいところに打たれて、ダブルフォワードの圧もあったはずだが、苦しいところからしっかり返してラインギリギリに収まるカウンターでポイントを奪い、逆にプレッシャーを掛けていく見事なプレー。
しかし増田竹田ペアも攻め手を緩めず取られては取り返す一進一退の展開が続いていく。

辺りが少しずつ暗くなってきたところで竹田増田ペアが初めてリードを奪って4-3で王手を掛け、このままの勢いで行けるか!と勝利への期待が膨らんだが、西本黒須ペアが土壇場でまた粘りを見せてファイナルに突入。

ファイナルでは開始から西本黒須ペアが4連続ポイントで完全に流れを掴んだと思いきや、一本のネットをきっかけにミスが増えていき、そこを攻めた竹田増田ペアが怒涛の6連続ポイントで一気にマッチポイントに。
西本黒須ペアも崖っぷちで1つ凌いだものの、最後は儚くもネットでゲームセット。
インカレの再戦は竹田増田ペアのリベンジ成功で幕を閉じた。
熱戦が終わった時にはもうすっかり夜になっていて、いい試合を見た満足感に耽りながら見えたマンションの光の美しさは忘れられない。

日連ホームページにある過去の全日本選手権の結果を見た限りでは、恐らく男子の北海道出身選手が全日本選手権のベスト8に入ったのはこの20年近くでは増田選手が初めて。
ここ数年は北海道勢は多くのカテゴリーの大会で活躍することが増えているが、それでも届かなかった結果を手にした増田選手は偉大な存在になった。
来年もチャレンジして更に上に進んでほしいと願ってます。


名勝負⑧ 全日本選手権男子(天皇杯)準決勝 船水上松ペアvs内本内田ペア

大学時代からチームメイトとして、ライバルとしてしのぎを削って来た、現ソフトテニス界最強ペアの船水上松ペアと内本内田ペアによる黄金カードが、有明コロシアムが舞台の準決勝で実現。
対戦すれば必ず盛り上がる名勝負製造機と呼べるようなこの4人の試合は、今回もやはりソフトテニスの最高峰を見せてくれる素晴らしい試合だった。

この試合が男子準決勝の第1試合で、その前には女子の準決勝2試合も行われていたのだが、そちらもかなり良い試合で見る側のテンションも上がっていたのだが、もう初っ端から男子のスピード感と迫力と凄すぎてわけわからん感がわっと押し寄せてきて更にテンション爆上がり。
船水選手と内本選手のエグい打ち合いも、未来が見えてるのか?というくらいドンピシャの内田選手も、反応も速さも強さもまさに超人な上松選手も、全てが全て凡人の理解の範疇を超えるプレーばかりでずっと興奮するし、しかもどのゲームどのポイントも濃すぎて本当最高の時間だった。

試合展開は、序盤は共に素晴らしいプレーで接戦となったが、長いラリーやデュースなど要所を押さえる船水上松ペアが少しずつリードを広げ、後半になるにつれて内本内田ペアを圧倒するプレーも増えていき、最終的には5-2で船水上松ペアが勝利して、前人未到の全日本選手権4連覇に王手をかけるという結果となった。
しかし本当に競ったポイントが多くて、デュースで何本も奪い合うゲームもあり、ゲーム差程の差は無かったように思える。
今回は敗れてしまった内本内田ペアだが、次の対戦では倒すことができるか、それとも船水上松ペアがまたしてもリードするのか、今後の対決も楽しみになる試合だった。


名勝負⑨ 全日本選手権女子(皇后杯)決勝戦 志牟田根岸ペアvs前田中谷ペア

女子の日本一を決める戦いは、社会人最強の一角の志牟田根岸ペアと、スーパー高校生ペアの前田中谷ペアによる兵庫県対決となった。

今年の皇后杯は、早い段階からシード選手や有力選手が次々と敗れていく波乱の多い大会になっていた。

その象徴として歳上選手を倒し続けてついに高校生での戴冠まで後一歩まで進んだ前田中谷ペアは、カットストロークや柔軟な陣形を混じえて相手を翻弄し、長身前衛の中谷選手で仕留めるスタイルは、ハードコートやインドアでは特に力を発揮しており、インハイで見た時より更に強い印象を持った。

対する志牟田根岸ペアは、日本最強選手の志牟田選手が全てがハイレベルのプレーで支えて、根岸選手の抜群の動きと決定力でポイントを量産する破壊力抜群のプレーで、波乱の流れに抗い続けて決勝まで進んだ。

試合は第1ゲームから見応えがある接戦。
前田中谷ペアは同郷の最強ペアにも動じず普段通りのプレーでポイントを奪うと、志牟田根岸ペアも繋いで根岸選手の豪快なプレーで取り返す白熱した展開。
デュースデュースの長いゲームになったが、第1ゲームは9-7で前田中谷ペアが取ると、その勢いで次のゲームも連取。

観客の声援も前田中谷ペアのプレーにより大きく湧くような印象で、このまま前田中谷ペアが行くのでは?!という雰囲気が出てきたが、ここから百戦錬磨の志牟田根岸ペアが反撃を開始。
志牟田選手の相手の裏をかくようなパッシングや、根岸選手の読み切ったプレーが増えていって、3ゲーム連取で逆転に成功。

逆転直後のゲームは前田中谷ペアも負けじと応戦してタイに戻したが、志牟田根岸ペアの勢いが更に増し先に王手をかけた。
このまま一気に志牟田根岸ペアが行くかと思いきや、チャンピオンシップポイントで優勝を意識したのか志牟田根岸ペアにミスが出て、前田中谷ペアも本当に高校生のメンタルか?という攻めたプレーで凌ぎ続ける。
このままずっと見ていたいような、早く決まって楽になってほしいような、緊張感漂う雰囲気の優勝のかかった連続デュースだったが、最後は前田選手のバッグアウトでゲームセット。
志牟田根岸ペアが波乱の大会で最後まで社会人の、格上としての意地を見せ続けるような活躍で見事に優勝。

男子ほどのボールのスピードや強さがない分、球際の最後の最後まで届くか届かないかというドキドキ感が強い、女子ならではの面白さが詰まっていた、女子最高峰の最高に面白い試合だった。

残念ながら志牟田選手は今季で引退となってしまうが、その分も志牟田選手を意志を継いだ選手達が更に盛り上げていって、来年もまた最高のゲームを見せてくれることを楽しみにしたい。


名勝負⑩ 全日本選手権男子(天皇杯)決勝戦 広岡長江ペアvs船水上松ペア

初めて日本テニスの聖地有明で行われた今年の全日本選手権の最後の試合は、今年1年間のあらゆる試合の中で間違いなく最も盛り上がり、最も素晴らしい試合だった。

決勝戦は、史上初の天皇杯4連覇を狙う絶対王者船水上松ペアと、最強銀河系軍団NTT西日本の若手&ベテランペアの広岡長江ペアの対戦となった。
両ペアは全日本社会人の決勝戦でも対戦しており、その時は船水上松ペアが圧倒したが、今回のコロシアムでの対戦ではどうなるのか、始まる前からワクワクの止まらない。

ワクワクドキドキの中ついに試合が始まったが、プレイボール直後の最初のポイントから広岡選手のスーパープレーで会場は一気に湧き立つ。

隙のない長江選手とパワフルで勢いのある広岡選手のダブルフォワードの猛攻と、それを凌いで攻め崩しにかかる船水上松ペアの激しい攻防が繰り広げられるが、序盤から広岡長江ペアの攻撃が勝り、3-1のリードを奪う。
しかし船水上松ペアはここからギアが更に上がっていき、ダブルフォワードの広岡長江ペアを超えるほどの超高火力の攻めで追い上げていき、そのまま一気に逆転に成功で、4連覇に王手をかける。

やはり王者船水上松ペアは負けない。今の船水上松ペアに勝てるペアなんて世界に存在しないんだと、船水上松ペアの4連覇を確信するくらいの勢いだったが、ここから広岡長江ペアが息を吹き返す。
ここまでは積極的に前には来ていない印象の長江選手が攻めに転じると、広岡選手の破壊力抜群のスマッシュが炸裂し始め、怒涛の連続ポイントで追い付いて全日本選手権最終日最初で最後のファイナルゲームに突入。

一度火がついたダブルフォワードの勢いは止まらない。
ファイナル開始から常に主導権を握って攻めて攻めて攻めまくる広岡長江ペアに流石の船水上松ペアでも防戦一方。激しい攻撃をなんとか凌いで繋いで長いラリーになっても最後は広岡選手の気迫のこもったスマッシュで決められて、ジワジワと差が広がっていく。

そして広岡長江ペア4-2リードで迎えた7ポイント目。この試合で最長のラリー。ラインギリギリのボールがアウトになったかと思い雄叫びをあげる上松選手だったが判定はインでラリーが続き、広岡長江ペアが決めに行くも船水上松ペアの素晴らしいカバーで粘る。船水選手が相手の陣形を崩すショットで上松選手がネットに付きボレーを放つが、長江選手がクロスへ鋭いカウンター。船水選手も厳しいコースへ返そうとするが惜しくもアウトに。
このポイントが決まった瞬間の会場の盛り上がり方は鳥肌が立つくらい凄かった。この環境で大会を開催したのは全てこのポイントのためだったのではないかというくらいの最高のラリーだった。
たまたまこの時の自分の席のサイドが船水上松ペアだったのだが、この失点時に船水上松ペアがなんとも言えない苦笑いのような表情をしていて、決して諦めたとか折れたというわけではないのだが、なんとなく雰囲気が変わったような、もうこれで決まったんだなって思うようなあの空気感は印象的だった。

その後はやはり広岡長江ペアの勢いは止まらず一気に連続ポイントをあげて、広岡長江ペアが優勝を掴んだ。優勝が決まった瞬間に2人とも倒れ込み、泣きながら抱き合って喜ぶ姿を見てこの試合の激しさを感じると共に、目頭が熱くなった。

史上初の4連覇を狙う船水上松ペアが決勝戦で敗れたこと。
9年ぶり2回目で20代と30代でそれぞれ優勝という過去に類のないブランク優勝を決めた長江選手。
圧倒的に大卒選手が多い男子で高卒社会人として20数年ぶりに天皇杯覇者となった広岡選手。
全てが間違いなくソフトテニスの歴史に残るようなとんでもない瞬間を有明コロシアムの1番の席で目撃をしたことは、自分のソフトテニス観戦人生の中で最大級に貴重で最高の思い出になった。


以上今年の現地で見た個人的名勝負10選でした。

今年は久しぶりの観戦解禁や、北海道インターハイ開催、全日本選手権観戦遠征などで、コロナ前よりもたくさんの大会へ行くことができました。

来年の予定はまだ何も決まっていませんが、日程と予算の都合が合えばまた少しでも多くの大会に足を運びたいですし、道外の大会も少なくとも全日本選手権はまた観に行きたいなとは思います。他にも1回くらいはどこか行ってみたい気持ちはあるのですがどうなるか……。

何にせよまた来年も素晴らしい試合をたくさん楽しんで、来年もこうやって思い出を振り返られるようにしたいです。