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Turnout「映画が開く、タゴール・ソングの100年」 (15)”道しるべ”を探して②~スタッフの”真ん中”に届く歌(B面)

[画像]ベンガル地方のインド・西ベンガル州とバングラデシュの国境。手続きをすれば陸路で相手国へ横断できる。映画『バジュランギおじさんと小さな迷子』では、今も紛争状態にあるインド・パキスタン国境をめぐる騒動が世界の感動を呼ぶ。(2014.09.18 道しるべサポーター撮影)

 映画『タゴール・ソングス』の世界にまつわる記事をお届けする、Turnout「映画が開く、タゴール・ソングの100年」。私たちの”真ん中”に届く歌を考える記事の続きをB面(後編)としてお届けいたします。メンバーの”真ん中”に届く歌から、思い出を保存する媒体としての歌、国境を越えて愛される歌をご紹介してまいります!

■想い出を振り返る歌

 想い出を保存する媒体は写真だけではありません。歌は恋愛、友達と過ごした時間、家族との触れ合いと別れ、様々なシーンに寄り添い、その時の心と記憶をそっと写し取ります。

平井 堅 瞳をとじて(2004)

映画『世界の中心で愛を叫ぶ』でおなじみとなった、平井堅のヒットソング。メンバーは、学生時代、友人からプロモーションビデオとともにこの曲を聞かせてもらったことが当時平井堅にはまったきっかけだったのだとか。

Martin Tungevaag - Wicked Wonderland(2014)

Wiz Khalifa - See You Again(2014)

上記の二曲が思い出となったきっかけの場所は、学生時代のダンスサークルでした。
Wicked wonderlandは、完成した踊りを披露できるよう、何度も聴いて練習した体でも覚えている一曲。
See you againは、そのサークルでお世話になった上級生の送別会のBGM。その場の哀愁と切なさを今に留めている歌だそうです。

 サークルや部活に打ち込んだ人には、それぞれ思い当たる歌があるかもしれません。試合の応援で演奏された歌、練習の合間に聞いた曲など、今もあなたの”真ん中”に寄り添ってくれる歌が、そこにあるかもしれません。

■歌は国境を越える編

 Turntoutを展開している合間に、文化・音楽が平和に果たす役割って何だろうとメンバーと意見交換をしていました。その時メンバーから挙げられたのは、言語を超える力ではないかという意見でした。

 音楽や歌は時に言語以上に、きれいな景色のように物事の美しさを心にダイレクトに届けることができます。現代では紛争で戦った当事者同士がオーケストラを組んで合奏することが復興への歩みを支えるなど、単なる平時の心の支えに留まらない効能があるとも言えます。

 今回のTurnoutは、日本ではまだその全貌が知られていない南アジアが舞台の連載でした。タゴール・ソングが育まれた土壌に迫れるよう、南アジア現地の文化のみならず言語にも明るいメンバーとタッグを組んで執筆を進めていきました。

 そんなメンバーが元気の出る曲にチョイスしたのが、現地語の映画の挿入歌でした。

Sabri Brothers Bhar Do Jholi Meri

 北インド・パキスタンではカッワーリーという宗教歌が今もポピュラーです。インド映画の音楽の紹介で宗教音楽すら現代ポピュラー音楽と結びついていることに触れていますが、このカッワーリーも同様に元はイスラーム教神秘主義者の集団歌謡です。

 手拍子の伴奏とフレーズの反復が特徴で、神との合一を重視する教えからトランスへと誘い込む力強さをも秘めています。

 この曲が挿入されていた映画は、インド映画歴代興行第3位という輝かしいヒットを収めた『バジュランギおじさんと小さな迷子』(原題:”Bajurangi Bhaijaan”)。インドとパキスタンを股にかけたインド人青年とパキスタンの少女が繰り広げるヒューマンストーリーに、今なお対立するインド・パキスタンを超え世界に笑顔と感動を届けました。


 個性豊かなメンバーの様々な”真ん中”に届く歌をご紹介させていただきました。皆さんは、この歌と思う一曲は思い浮かんだでしょうか。

 映画『タゴール・ソングス』制作陣の皆さまは1年前の最初の緊急事態宣言発令時に公開が始まり、それ以降「仮設の映画館」プロジェクトでオンライン配信するなど、人々にタゴールの歌を届けるべく奮闘されていたそうです。この映画の歌の中には、不思議と皆さんの心に届く一曲がきっと見つかるはずです。ポケットに忍ばせたくなる、優しく力をくれる一作です。


 再び一都三県に緊急事態宣言が迫りつつありますが、再度東京での公開が始まる予定です。かつてタゴールが圧制に抗議するインドの人々を支えようと「我が黄金のベンガル」を書いたように、この映画も人々に寄り添うために全国を練り歩いているのかもしれません。

【映画公式HP】
1月8日(金)から、再び東京で上映されます!!

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