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20240729ふかいメルマガ162回 関心を持つと見える景色

おはようございます。


点の参加で景色が変わる

今年のウェーブの田んぼの稲刈りは
9月13日(金) ・14日(土)に決まりました。
先週、稲を育ててくださっている田中さんから連絡がありました。
田中さんによると出穂(しゅっすい)は8月2日ごろの予定だそうです。

出穂って、まず読めませんでしたが、農水省のHPによると、
「8月上旬から下旬頃に茎の中から、さやを割ってうす緑色の穂が出て」くることを出穂というそうです。
そしてこの穂にお米の花が咲きます。

出穂(しゅっすい) 農林水産省

稲刈りには今回も多くのみなさんに参加していただきたいと思います。
米作りにかかる長い時間からすると、
田植えや稲刈りの「点」のような参加にすぎないのですが、
その毎回の「点」で気づきがあったり、
見える景色が変わったりします。
毎回の気づきが新しい思考を生み、
毎回見える景色の上書きで、
視点が変わったり、視野が広がったりすることを
実感しています。

そのことについては
「2023年4月24日のメルマガ99回 田植えで気づく」で書きました。

知ることで見えること

知ることで気づいて、見えていなかったものが
急に見えてくるということがあります。
先週の月曜日、そんな体験をしました。
22日月曜日、私が事務局をしている(一社)ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)主催のアワードで、2024年度の優秀賞を受賞した企業の社長(太田さん)を取材をしてきました。

詳細は、APSPのHPなどに取材記事として掲載されるので、ここでは触れませんが、太田さんの無関心の罪についての話が印象に残っています。

太田さんの会社がソーシャルプロダクツ・アワード優秀賞を受賞したのは、視覚障がい者を誘導するゴム製マット商品です。

 視覚障がい者を誘導するものと言えば、
目にするものは「点字ブロック」です。

私も目はかなり悪いですが、点字ブロックに頼らずに眼鏡をかけた自分の目で歩けるので、ほとんど意識していません。
意識するとすれば、黄色い点字ブロックの上は歩きにくい、雨の日は滑りやすい、ということですが、これが私自身の無関心さだということに、太田さんの話で気づかされました

自分の目で歩いている私が、歩きにくいと言うことは、視覚障がい者にとっては、もっと歩きにくいということなんです。
さらに、何の問題もなく歩けている私でも歩きにくいと言うことは、足が不自由だったり、松葉づえだったり、車いすだったり、そしてベビーカーも、あのデコボコはつまづきやすく、滑りやすく、通りにくいということです。
しかもハンディキャップのある人たちの方が危険だということは、想像すればわかります。

 
そう思って点字ブロックを検索すると、社会福祉法人日本視覚障害者団体連合のHPが出てきました。
この団体のHPの点字ブロックについての記述には次のようにあります
「他の人の障害になる」と題して
「たとえば、高齢者など足腰の弱い人がつまずいてしまったり、車椅子やバギーの利用者の障害になったり、雨天時や氷結時に滑りやすくなったりするなどの問題点も指摘されており、改善などが望まれています」。

 またこのHPでは他の問題も指摘しています。
それは景観の問題です。
黄色い点字ブロックではなく景観になじむ色に変えることで、視覚障がい者にとっては、認識しにくいという問題です。
 
この件は、太田さんも指摘されていました。
それは色の問題だけではありません。ブロックの大きさの問題です。
色を変えても目立つので、設計上フロアのはしっこの方に同系色の点字ブロックを敷いたり、一部分だけ敷いたりということはよくあるそうです。
そうすると、点字ブロックが頼りの視覚障がい者が、一番遠回りをするルートになっていたり、途中までは誘導されるのですが、途中から完全に点字ブロックが無くなっているということは、よくあるというのです。

ソーシャルプロダクツ・アワード優秀賞 「視覚障害者歩行誘導マット 歩導くんガイドウェイ」

無関心と固定観念の壁

太田さんが続けて指摘されるのはトイレです。
トイレの中ではほとんど点字ブロックを見かけません。
その代わりトイレの外で、音声によって男子用と女性用のトイレの位置がアナウンスされていたり、入り口にトイレの配置図が点字で掲示されていたりします。
私たちが認識するのはそこまでです。
ところが、目が見えない人はトイレに入ってからどうするか。
入口の配置図を思い出しながら進むのですが、便器や洗面所など、結局手で触りながら進むしかないというのです。
 
太田さんの会社は、なだらかに盛り上がったゴムで視覚障がい者の方を誘導する商品を開発し、ここまで挙げてきた点字ブロックのマイナス要素をすべて解決する商品にしました。
そんな画期的な商品、引き合いが次々ときていると思いきや、無関心と固定観念という障壁に阻まれています。


街もビルもデザインして設計しているのはほとんど健常者。
この人たちが、障害を持つ人たちに無関心だと、様々な不自由が見えてこないんです。
そして、「視覚障がい者と言えば点字ブロック」、という一択の固定観念。

少し高い胡蝶蘭で少し社会が良くなれば

この世の中は「健常者」が支配しております
「健常者」はあるところに線を引き「障がい者」をつくりました。
当然「健常者」は利益率の高い仕事を独占し、「障がい者」には利益率の低い仕事をまわします。
それは「何もできない」という理不尽な理由からです。
アロンアロンはお花の栽培を通じて、「障がい者」の利益をしっかり確保できる社会を目指します』
 NPO法人ALONALON代表 那部 智史さんの言葉です。

この団体は、企業のお祝いごとに欠かせない胡蝶蘭を、障がい者、それも重度の知的障がい者を雇用して、育てて販売しています。
胡蝶蘭は、花の中でも値段の高い花です。
そしてほとんどが企業による需要です。
那部さんはそこに目をつけました。
値段が高いということは、利益を生みやすいということ。
そして企業のお祝い需要が多いということは、ケチケチしないということです。
この団体の胡蝶蘭は、値段が通常よりちょっと高めです。

社長就任、新社屋完成、新店オープン、銀座のクラブのオープン(先日すごいのを見ました)など、ずらーーーりと胡蝶蘭が並びます。
その中に、障がい者が育てた胡蝶蘭が、それを意味するプレート付きで並んでいる・・・。

YRK&は、今年になって胡蝶蘭の発注を、東京も大阪もこの団体に変えました。
この団体の関連会社アロンアロンマーケティング池田社長が、「重度の知的障がい者は、一般の会社では雇用が難しいので敬遠されがちなのですが、胡蝶蘭を育てるという仕事をさせ、肩書をつけた名刺を持たせるとイキイキ働いてくれる」と言っていました。

いっしょに活動できなくても、
「点」でしかない接点でも、
そのことで何かに気づいて
見えている風景が少し変わったという人が増えれば、
世の中はきっと変わっていくと思います。

ゴム製の誘導マットをつくった太田社長の会社は
大阪府の八尾市にあります。

月曜日に日帰りでの取材予定だったのですが、
まさかの東海道新幹線の終日不通。
なんとか早朝に飛行機に切り替えて、
1泊2日でお会いして来たのですが、
その甲斐は十分にありました。

 深井賢一
 
 


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