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evolutionという曲の話

僕、Wattan単独でのBaby smoker配信アコースティックライブを終えてからの話。

僕が憧れたTIGHT RECORDSのボスである、アンドリューさんが運営しているレコーディングスタジオ、それがStudio WAKEFiELDだ。
WAKEFiELDに初めて訪れた日の事を僕は今でも鮮明に覚えている。
扉を開いた時に飛び込んでくるオールディーズな雰囲気のロビー、ミックスルームの赤い扉、外の世界から完全に遮断された、独特の空気を纏っている場所だった。
ミックスルームの卓の前にはBaby smokerのバンTを着たアンドリューさんが座っていて、「ああ、僕らはここで始まるのか」と胸が躍ったのを覚えている。

それまでにもデモCD作成の為のレコーディングをした事は何度もあったけれど、事務所に入って世に出す作品を作るとなると、全く別の異次元の物に感じた。
デビュー作である1st フルアルバム「Cycle of the life」のレコーディングは、緊張もあったし若さもあったし、雑な所だらけで、ぶっちゃけアンドリューさんに結構怒られた。笑
今聴くと、「もっとこうすれば良かったなぁ…」とか、「何でこんな早いんやアホなのか」とか、「おいおい、キー高すぎやろ…アホなのか」とか思う事は沢山あるのだが、あれはあれで、あの時の僕の精一杯だったし愛おしい作品でもある。

2ndフルアルバム「SHOUT OUT YOUR SOULS」のレコーディングは、このあいだ書いた内容にもあった通り、父親を亡くした直後だった事もあって、作品を作る嬉しさと、このレコーディングの向こうにあるリリースツアーをやり終えたら活動が止まる事への悔しさで、かなり頭の中がゴチャゴチャしていた。
一言で表すと、エモかった。

PIZZA OF DEATHとTIGHTが合体して、第一弾リリースの作品だっただけに、ここで止まってしまう事が心の底から悔しくて、悲しかったのを覚えている。

ここまで述べたようにBaby smokerの作品は全てWAKEFiELDで作られてきたのである。

そのWAKEFiELDが2022年、6月で移転するという話を僕はアンドリューさんのTwitterで知るのだった。

そのツイートを見た時に僕はかなり動揺した。
それはWAKEFiELDが僕にとっては憧れであり、始まりであり、宝物のような時間をくれる場所だったからだ。
その場所が無くなるのかと。
正確には、移転なので場所が変わるだけなのだが、僕の中のWAKEFiELDは無くなってしまうと思うと、いてもたってもいられなくなり、すぐにレコーディングさせて下さいとアンドリューさんに連絡をした。
アンドリューさんは、いいよ!と一言だけ返事をくれた。

それから進展は特にないまま時間が経って、5月の末だったかそれぐらいにアンドリューさんにもう一度、レコーディングしたいですと連絡をしたら

「え?もう6月で閉まるよ!笑」

と返事が来た。

え、全然時間ないやん、クソやばいやんか…
僕は痛恨のミスを犯していたのだ。
WAKEFiELDは6月で閉まるのに、僕は年内いっぱいまでやってると勘違いをしていた。

「え、マジですか…?もう何とも出来ないですか?何としても今のウェイクフィールドで、アコースティックでも何でもいいので、絶対に録りたいです…!」

とゴリ押しで頼むと、アンドリューさんはOKしてくれた。

「曲どんなの録ろうか?現WAKEFiELDの最後を飾るのがWattanってなると、やっぱり何か一緒にやりたいよね。例えばこういうのはどう?Wattanに、WAKEFiELDの曲を書いてもらうって言うのは。」

アンドリューさんの提案に僕は食い気味に返事をした。

書かせて下さいと。

それから、時間も余り無いので急いで取り掛かるも何だか上手く纏まらない。
出来る気が凄くしてるのに何も出来ない。
それから何も浮かばないままレコーディングまであと2週間を切ってしまった。

締切まで後わずかになった段階で僕は、WAKEFiELDに初めて訪れた事を思い出していた。

1回目、2回目、3回目、4回目、5回目
行くたびに何故だかワクワクするあの空間。

何かが生まれそうな気がした。

ある日、SHANKが難波ハッチでライブでヘイも出るとの事だったのでナオミチと2人で遊びに行った。

昔あんなに一緒にやっていたバンドでも、8年ぶりに会うとなると中々に複雑な気持ちだった。
僕が何もしてない間も皆進み続けているのだから当たり前なのだけれど、僕は自分で、なんだかもう唯の部外者のような気がしていたからだ。

足取り重めで楽屋に行く

扉を開けると皆がいた。
本当に良い意味で全く変わっていなかった。
会話していて、まるで先週ぐらいに会ってたかのような何の違和感も無い感じ。
なんだろう?何でこんなに普通なんだろう。
しょうへい君も、ひょうた君も、ゆうきも普通。
ついでにイガリもめちゃくちゃ普通。

話していく内に肩に乗っかっていた何かが軽くなっていったように感じた。

ナオミチと話した。

皆、何にも変わってなかったな
なんやろう、ピュアよな
皆カッコいいな
皆が僕らを見る目が変わってるんじゃないかとか、そんな事を気にしてたけど、あーそうか。
変わったのは僕らやったんやな。

そう話した。

それからちょこちょこ色々なライブに顔を出しつつ、色んな人達と話したりした。
皆と一緒にいる時間や話してる時間が、僕は少しずつ昔の自分へと戻っていっているような感じがした。

でも、正確にはそれは戻っているのとは少し違う。

僕も昔とは違う価値観や感性を持っていて、良くも悪くも変わってしまった部分がかなりある。
昔のようなマインドに戻っていったとしても、それは決して昔の自分ではないのだ。

じゃあこの現象を何て呼ぼうか

今のこの感覚を、変化ではなく進化と例えたいと思った。

そして、曲を書き出した。

最初はWAKEFiELDのドアを開いて
僕はブースにいる
始まりの場所を思い浮かべれば、過去の自分の事が思い出せる
そして今の自分
今度は各地のライブハウスへ
ライブの光景
お客さんの顔
皆に贈りたい言葉
そして最後にまたWAKEFiELDへ

一気に歌詞とメロディーが溢れ出て書き上げ、それは曲となった。

結果的にはWAKEFiELDの曲というよりも、WAKEFiELDから始まり、繋いでいった物、場所、人への曲になった。

曲解説のような形になってしまって、何だかクソダサいのだけど良かったら皆さん聞いてみてね。

今、ライブで新曲としてやってるので一緒に歌って欲しい。


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