ソフトバンクはなぜWirecardに「投資」したのか

2019年4月24日、 ソフトバンクが Wirecardと提携と資金援助を発表し、ファイナンシャルタイムズの調査報道で揺れていた同社の株価に10億ドルの株価の急上昇をもたらした。Wirecardが、ソフトバンクの関連会社が5年物の転換社債を通じて約5%の株式を取得することを発表したのだ。ソフトバンクという大投資家がWirecardという企業にたいして信用保管を行なった形だ。また、ソフトバンクは戦略的パートナーとなり、同社が支援した数十社のテック系スタートアップにWirecardを紹介するとした。アナリストたちは、こぞってWirecardがUberやソフトバンクが支援する他の巨大企業の支払いを処理する可能性を評価モデルに組み込んでいた。


そして今年になりWirecardは先月、FTが追求していた会計スキャンダルが事実であったことが明らかになり、あらためてこの取引に注目が集まっている。ソフトバンクは、Wirecardに投資したことで一時的に同社への信頼回復の役割を果たしたが、のちにこの取引の詳細が明らかになるとソフトバンクはWirecardに投資したわけではなく、単に同社の債権を購入し、即座にそれらを証券会社を通じて売り飛ばしていたことが判明した。世間的にはWirecard社に全幅の信頼をしてお金を突っ込んだように見えたが、実態はソフトバンクは何らリスクをとってなかったのだ。このソフトバンクが横流ししたWirecard の債券を購入した投資信託や年金基金は現在巨額の損失を被っている。


ソフトバンクはなぜこのような奇妙なディールをやったのか?それを紐解いていく。


鍵となる人物がソフトバンク幹部のアクシェイ・ナヘタ氏だ。彼は昨年初め、Wirecardに興味を持った。

元ドイツ銀行アクシャイ・ナヘタ氏の売り込み

昨年初め、ソフトバンクのアクシャイ・ナヘタ氏は、東京に戻って経営陣に売り込む案件を探していたところ、割安感のある案件を見つけた。そして見つけたのがワイヤーカードだった。このドイツの決済会社は、ファイナンシャル・タイムズ紙の不正会計の報道や空売りにより株安だった。同社にとってはソフトバンクのような大口投資家からの承認印が必要だった。

ナヘタ氏は、ソフトバンクがこの会社への投資を大々的にアピールした。未上場企業に主に投資するビジョンファンドがなぜすでに上場している企業の投資に熱心なのか?それはビジョンファンドの幹部を固める面子が伝統的なベンチャーキャピタル上がりではなく、ドイツ銀行をはじめとした公開市場で名を馳せた人間たちだからだ。その一人がナヘタ氏であり、彼の上司であるビジョン・ファンドのチーフのラジーヴ・ミスラ氏もそうした一人のうちだ。ミスラ氏は、複雑な公開市場取引を得意とし、孫氏にソフトバンクが部分的にシードした数十億ドル規模のヘッジファンドを設立させるよう2年にもわたりプレゼンテーションしてきた。

SoftBank investment chief pushes hedge fund after Vision Fund stumbles

39歳で元ドイツ銀行トレーダーのナヘタ氏は、wirecardへの9億ユーロ(10億6000万ドル)の転換社債投資を提案した。この取引に詳しい関係者によると、Wirecard の株式が好調に推移すれば、リスクのすべてを他の投資家に分散させることができ、さらに大きなアップサイドを維持することができると説明した。

ドイツ人投資家のクリスチャン・アンゲルマイヤー氏に支払われた謎の手数料


WSJによるともう一人Wirecardとソフトバンクの間で仲立ちの役割を果たした人物がいる。その人物がドイツ人投資家のクリスチャン・アンガーマイヤー氏だ。

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source : Crunchbase

このドイツ人投資家のクリスチャン・アンゲルマイヤー氏が、ナヘタ氏を Wirecard の最高経営責任者マルクス・ブラウン氏を含む幹部に紹介したことで、なぜか数百万ドルの仲介手数料を受け取ることになったという。ビジョン・ファンドのコンプライアンス・チームがなぜこれを承認したのかについてコンプライアンスに詳しい専門家などの多くは疑問視している。ソフトバンクやワイヤーカードのような公開企業が、単に知り合うためだけに仲介手数料を払うことはまずない。しかしアンガマイヤー氏の役割は、知り合いだった2人の男性を紹介することだけだったという。ソフトバンクのコンプライアンスチームはその成果として手数料を承認した。


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