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PEのシルバーレイク、アントファイナンシャルにPre-IPOで巨額投資ーー米国年金基金が中国テック企業を支える形が鮮明に

シルバーレイクなど米国最大の年金基金をLP投資家にもつ米国のプライベート・エクイティ企業が、アントファイナンシャルのプレIPOラウンドで投資していたという。


米議会には中国への投資を抑制するような動きがある中、アント・グループの新規株式公開から大きな利益を得ようとするこうしたPE企業の動きは物議を醸しそうだ。

Silver Lake、Warburg Pincus、およびCarlyle Groupは、2018年に行われたアントファイナンシャル社のPre IPOラウンドで大量の資金を投資しており、同社にそれぞれ少なくとも5億ドルを投資したという。アントファイナンシャル社は2018年に他にもシンガポールのGIC、Khazanah Nasional Berhad、Canada Pension Plan Investment Board、Temasek Holdingsなどからも調達しており、2018年通して合計約140億ドルを調達したという。

アントファイナンシャル社の価値は現在約2100億ドルと推定されており、もしその評価額でIPOで売却した場合、ファンドは40%のリターンを得ることになるという。プライベート・エクイティ投資家は、おそらく株式をしばらく保持し、さらなる利益を積み上げるとみられる。

こうした米国PEファンドの資金に支えられる中国スタートアップはアントファイナンシャルだけではない。貿易戦争をよそに中国のテック企業の主要な資金源はPEファンドを通して米国の年金基金になっているのが現状だ。コンサルタントのNEPCが行った2018年の調査によると、米国の財団や基金の90%以上が、スタートアップ関連の投資で中国への何らかの投資をおこなっている。実際中国のテック企業は昨年、記録的な資金調達を確保した。ワシントン州やテキサス州などの年金基金から150億ドルの資金をレイズしたSilver Lakeは、アントファイナンシャルのほか、人工知能大手のSenseTimeなど中国のテック企業にも投資している。DJI は、デラウェア州公務員退職制度やミシガン州退職制度を含むベンチャー企業からの出資により、世界最大の商業用ドローンメーカーとなった。TikTokを運営するByteDanceは、ニューヨークとオレゴンの年金基金を介して調達した資金に支えられている。中国テック企業は米国の年金基金によって支えられているのだ。

しかしこうした資金の流れを米国の政治家が問題視しはじめた。米国の上院議員は、米国の年金基金による中国のハイテク企業への支援を抑制するための検査を要求し、マイケル・ポンペオ国務長官はこの分野への米国の基金の投資を精査している。こうした米PEファンドの中国テック企業への巨額投資ルは現在、厳しい目が向けられており、転換点に差し掛かっていると言えそうだ。



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