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71日間地球ひとまわり(26)スロベニア、牢名主ならぬ先客がいた元監獄ホステル

スロベニアの首都、リュブリャーナのバスターミナルから徒歩15分の場所にあるホステル。
15年近く前にスロベニアに旅行した時に一度泊まったことがある。
今回リュブリャーナに予定よりも長居したのは、こちらのホステルに泊まりたかったからである。
それはなぜか。
実はこちらのホステルは、100年近く前のハプスブルグ時代の監獄だった建物をホステルにリノベーションした建物である。
といっても部屋が監獄チックなわけではない。
リノベーションの段階で、アーティストたちが参画し、部屋ごとに家具や壁のデザインが異なる、アートなホステルに生まれ変わった。
以前スロベニアに旅行したときは、2泊して日によって部屋を変えてもらった。
しかし、こちらのホステルの個室は二人単位。
一人旅だと誰かと同じ部屋になる。
しかも性別で分かれているわけではないので、同室者はほぼ男性。
なので2泊とも男性だった。

それから10年以上時間が経過していたので、そのことをすっかり失念したままにネットで部屋を予約した。
部屋は選べるらしいが、空いていたのが今回宿泊した写真の部屋のみ。

しかも予約したときには、この部屋を貸し切りだと思っていた。
そして当日、ホステルにチェックインに向かった。
チェックイン開始時間から半時間過ぎていた。

チェックインを終えて鍵を渡されて部屋に入ろうとすると人の気配がする。
「しまった、ここの宿は個室を選ぶと誰かと同じ部屋になるのだった」
今更ながらにそのことを思い出した。

仕方がないので、ドアをノックして鍵を開けた。
すると、扉の隙間から脛が見えた。
どう見ても女性じゃない。


ドアを開けると、ベッドの1階部分に男性が寝転がってパソコンで作業をしていた。
そう、同室者はすでにチェックインを済ませて階下のベッドを占領していたのである。
「やられた」

私のベッドは2階部分である。
なのでいちいち、このハシゴを上り下りしなくてはならない。
私が足腰の調子が悪かったら、ベッド交換の交渉をするのだが、それは無理。
なんせ8キロ近い(見た目は5キロぐらいに見える)を背負って、つかつかと部屋に入ってきたのだから。

仕方がない、入り口のドアの横にリュックサックを置いて梯子を上り、まずはベッドメイキングをした。

この部屋、狭いながらもテーブルとイスはある。
写真のようにテーブルというか壁に作り付けのもの。

テーブルも椅子も先客のあんちゃんが占領していた。
ここで日本の感覚なら、だれから来るだろうと全ては占領しないだろう。
しかしここは日本ではない。
まずは、テーブルを半分開けてもらい、椅子も明けてもらった。
「荷物を置く場所がないからとイスを借りたい」と話した。
あんちゃんは嫌な顔をせずに開けてくれた。
しかし、テーブルの横はベッドで、あんちゃんが寝転がって作業をしている。
写真の机の横に椅子を置いて使うと、パーソナルスペースが近すぎる。
そりゃいやだ。
だから、机の上は洗面用具を置いた。
椅子に座るのをあきらめて、椅子は荷物置きにした。

この部屋にいても、息苦しいので部屋を出て建物内を散策した。
前回宿泊したときは気づかなかったが、こちらはかつて監獄だった建物。
その名残が建物の一角に残る。
1階の共用スペースの横にある地下への通路。
これはかつて監獄だったころの名残である。

地下に降りることができるので階段を下りて暗闇に向かった。
かつて房だった狭い空間を残している。

さすがに息苦しくなったので、階段を登りもと来た道を戻った。
地下に降りるときは意識しなかったが壁には絵が描かれていた。


地上が見えてきたので、ほっとした。

1階に戻り、館内を引き続き散策。
共用スペースに立ち寄った。
こちらはインテリアにこだわったシャレた空間。
居心地が良い。
部屋に戻ると息苦しいので、こちらで本を読んでぼんやりと過ごした。

そして日が暮れる前にシャワーを浴びて、髪を乾かしてさっさと寝ることにした。
ちなみに2階のベッドから下を眺めると写真のような感じである。
都度梯子を登るのは面倒だけれど、上を覗かれることはない。
しかし、上から下側は簡単に覗くことができる(あえて覗かないが)。
ある意味、2階でよかったのかもしれない。

翌朝、朝早い便でスロベニアを立つ予定だったので、朝食開始時間になるや否やダイニングに向かった。
そしてビュッフェ形式の朝食を急いで食べた。

朝食を食べ終え、チェックアウトを済ませてから宿を後にした。

そして、徒歩10分の場所にある鉄道駅に向かった。
クロアチア行きの国際列車に乗るためだ。

クロアチア行きの列車は定刻からら大幅に遅れているようだ。
結局クロアチアの首都ザグレブ行きの列車は1時間遅れで出発となった。

さようなら、スロベニア。

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