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今日は国境が休みです、今更言われても

15年前の秋の終わりの出来事。

旧ユーゴスラビアの国を旅行していた。
はじめに訪れたのはクロアチア。

クロアチアの古都ドゥブロブニクの観光を終えて深夜バスに乗った。
国境を越えて、お隣の国スロヴェニアの首都リュブリアーナに行く予定だった。

※ドゥブロブニクの場所は、冒頭の地図参照。
地図はGoogleMapsから引用。

この両国、かつては旧ユーゴスラビアに属した同じ国。しかし現在は別の国なので、通貨も異なる。

紙幣なら国境を越えても両替可能であるが、硬貨の場合は両替してくれない可能性が高い。
クロアチアを再訪する予定はしばらくはない。
残しても仕方がないので、水を購入してお金をほぼ使い切った。

それからバスのに乗り込んだ。
ドゥブロブニクを出発したバスは、途中アドリア海沿岸の町に立ち寄り、国境を越えてスロベニアの首都リュブリアーナに向かう。
距離にして700キロ弱。
東京から神戸ぐらいの距離。夜行バスなので寝る気満々だった。

途中、どこかの町のバスターミナルに立ち寄った。
なかなかバスが出発しない。

そして、突然乗客が降り始める。
「何だろう」と思って、私もバスを降りてターミナルの案内所に行ってみた。
窓口の係員はクロアチア語で説明を始める。
私はクロアチア語はわからない。
英語は通じず。

「困ったもんだな・・・」
そう思っていたら、英語がわかる若者が状況を説明してくれた。

いわく、今日は国境が休みなのでバスはこの町でストップするとのこと。

スロベニアに行きたい、私にとって選択肢は3つ。
1.この町に滞在し明日の同じ時間のバスに乗る。
ただし、明日バスが出るかの保証はない。
宿泊費は自前、かつ宿は自分で探す必要あり。

2.再びドゥブロブニク行きのバスに乗り、元来たバスターミナルに戻る。
ただし、明日バスが出るかの保証はない。
この場合も宿泊費は自前、かつ宿は自力で探す必要あり。

3.これから首都ザグレブ(地図青枠で囲んだ町)に行き、スロベニア行きのバスに乗り換える。
ただし、ザグレブ到着後のスロベニア行きのバスの時間はここではわからない。

当時はネットが今よりも発達していなかったので、スマホで調べようもない。ネットカフェもバスターミナル付近には存在しない。

話を聞いて、選択肢1と2はあり得ないなと思っていた。

英語で説明してくれた若者に
「3つの選択肢のうち、どれが現実的か」を尋ねた。

さすがに「本当に国境は休みなの?」とは聞けなかった。

彼女いわく、「首都ザグレブに行くこと」が妥当だろうと。
更に尋ねるとザグレブ行きのバスは1時間後にあるらしい。
仕方がないので、ザグレブ行きのバスに乗る。
(ザグレブ行きのバス代は無料らしい)

そして早朝4時にザグレブのバスターミナルに到着。
周りは真っ暗、バスターミナルも真っ暗。
バスターミナルの建物は閉まっているようだ。
そんなことはお構いなしに、ターミナル前のレーンでバスから降ろされた。

深夜4時にここにいてもターミナルで休憩できない。
このままいると風邪をひく。
しかも閉まったバスターミナルの周辺にはタクシーもいない。

「困ったなあ、どうしよう」
少し考えてとった行動は、バスターミナルから鉄道の駅まで歩くことだった。
幸いバスターミナルから鉄道のザグレブ駅までは、ほぼ直線の道。
歩いて半時間程度。
一度あるいたことがあるので、何となく地理観もある。

深夜の一人歩きは怖いなあと思ったのだが、タクシーもいない。
それならば、ここで待っている方が危なかろう。

意を決してコートのフードをかぶり、歩き始める。
私は背が高いので、少し大きめのコートだとぱっと見ると女性に見えないから。

途中、夜遊び帰りのお兄さんにすれ違ったぐらいで、危ない目にも合わなかった。
野犬も歩いていなかった(国によっては人間以上にこちらの方が怖い)

鉄道の駅に到着後、窓口でスロベニア行きの列車の乗車券を購入。
時間後の午前6時過ぎの列車があるらしい。

ザグレブ駅のホームの片隅の椅子に座り、列車の時間を待つ。

2時間後、ザグレブ駅に列車が到着。
ギリシャから、マケドニア、セルビアを越えてやってきた国際列車のようだ。

中に乗ると、ずいぶん年季が入っていた椅子だった。
そんなことはどうでもいい。
さすがに疲れたので、指定された席に腰掛け、眠りについた。

日が昇り始める頃、国境を越えて列車はスロベニアの首都リュブリアーナに到着した。
ひとまずアクシデントはあったものの、目的どおりスロベニアに着いたので良しとしよう。

それにしても、本当に国境が休みだったのかな?
謎はいまだ解けず。



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