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『あみもの 第四十号』の感想

気になった歌を挙げていきます。短めの感想ですが。

てかうしろ空いてるのに優先座席めっちゃ譲ってもたねんけど もー
隣家には宗教施設のパンフが来ているらしい ソシャゲの通知

「喰らし」/サラダビートル

・一息で言ってる感じがいい。でも発話しているのは「もー」の部分だけだと思う。

・ソシャゲも宗教みたいなもんだしな。

小難しい経済原理など知らん ほしい人からマッチを取れよ

「ずっと不機嫌」/冬寂(なつとふゆ)

・力強い文体に惹かれた。そのマッチの使い道が気になった。

カルピスになった季節のフルーツが等しく白に寄せられている

「アースカラー・デイ」/丁香花古

・あるあるだ! 「似ている」だったりではなく、「寄せられている」なのが上手い。

当選番号が君の携帯の番号と一致してたときの 間

「いない」/CHONO

・今どき携帯の番号を覚えているのか、と思ったけど、わかる。だいぶ深い仲なのか。

エレベーター内で飛んだりしないでください もちろん一人で泣くのもだめです

「OUT OF ORDER」/真ん中

・あれもダメ、これもダメじゃん… でも悪い気はしない。「もちろん」がポップさを生んでるなあ。

リリー でも はがれるように泣いている 納得のいく駅に着くまで

「リリー」/白野

・「はがれるように」「納得のいく」という修飾が良い。ブツ切りな表記もひねり出すようでハマっている。

遊びましょう よく切った喜怒哀楽が揃う事象をAとしながら

「制動と聖堂」/夜夜中さりとて

・「喜怒哀楽」という概念をシャッフルを通して、質量を与えているのすごい。

せつかちな祖父の夕餉の箸使ひみみず捕らへる鶏のごと

「祖父の家」/咲兵衛

・比喩が抜群。箸使いだけではなく、ちょっと首を伸ばしているのかなとか思っちゃう。

礫死体てりたまバーガー駅前の人間たちはちゃんとよけれる

「帰り」/鳥さんの瞼

・びっくりしちゃった。グロすぎ。俺はマイナスな感情を呼び起こす短歌でも、その絶対値が大きければ評価すべきだと思う。「よけれる」という可能さの提示は残酷に映る。

窓側の席を貰った新しい職場でひとり蜜柑を食べる

「いつか来る日を待ちながら」/高野蒔

・居心地の悪さと開き直り。景の具体性の塩梅がいい。

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