見出し画像

10時打ち攻略法 昔と今

前回は係員側としての10時打ちを書いた。では、利用者側としてはどうだろうか。ここ10年で事情は大きく変化したので、あの頃と今の状況をまとめておく。

みどりの窓口全盛期時代(2010年前後)
前回の記事でも書いたとおり、基本的には事前受付をやっている駅を朝から巡り1番手を確保、さらに10時に事前受付をやっていない駅に行き、そこでも10時打ちをするのが必勝法だ。
事前受付をやっているかどうかは駅に書かれていないことが多く、また時期によっても異なるので前日に事前受付を申し込む予定の駅をめぐり、「明日10時発売の指定券を買いたいのですけど」と声をかけて受付方法を確認、翌朝に申し込むという流れにしていた。
これが結構小さい駅でも通年事前受付を実施していたり、みどりの窓口の開店前から改札で受付をしているという駅もあった。
記憶に残っているのは、尻手駅で朝7時に受付開始なので7時に1番乗りで事前受付を申し込んだら、2番目の受付番号を渡されたことがある。聞いてみると「7時前から改札で受け付けている」とのことだった。これは事前に確認していなかった私の敗北である。
人気列車を取るには1番に並ぶということが必須である。横浜や川崎といった大きな駅だと、早朝から10時打ちを待つ人が列を作っている人をよく見かけた。もちろん1番でないと取れない人はごく一部なのだろうけど、1番でないと取れない切符を2番以降に並んでいる人も多数いた。
駅員時代にそういった方に近隣の小駅を案内したところ、「え、そんな小さな駅に窓口あるの⁉︎」という反応が大半だった。当時、首都圏ではほぼ各駅にみどりの窓口があるということはあまり知られていなかったのかもしれない。
私が10時打ちを申し込む際は、まず最寄りの川崎駅の様子を確認、大抵5時台から10時打ちを待つ人がいるので先客がいたら開店を待たずに鶴見に移動、1番手なら事前受付、先客がいたらさらに尻手へ移動という流れにしていた。
そうすると大抵、鶴見か尻手で1番手を確保できる。その後の行動は、10時ちょうどに事前受付をやっていない駅に移動するのが必勝法と冒頭に書いたが、これはやってもやらなくてもいい。事前受付をやっていない駅が少ないうえ、そういった駅に10時前に行っても混んでいて実際は10時打ちできないことが多いためだ。1番手を複数確保できていれば、1番手を確保している駅で10時を迎えた方が良いだろう。
というのも、10時打ちの1番手を確保したからといって、10時0秒に打ってくれるとは限らないためだ。中には駅員にも仕事が雑で、「売るのが面倒だから1分くらい遅く操作して取れなかったと言おう」みたいな人もいる。
また、10時前に一般の客が現れて、「10時の指定の発売があるので〜」と断りを入れるのが面倒なので、10時打ちの本人が目の前にいないなら後回しでいいや、としてしまう人もいる。
また、操作方法が分からず、調べているうちに10時を過ぎてしまうという場合もあった。
はまなす号のカーペットカーという、指定席の料金で寝台を利用できるという素晴らしい設備が存在したが、これが発券が難しいと話題だった。
どう難しいかというと、まず本来の列車名は「はまなす」だが、カーペットカーを利用したい場合は「はまなすカーペット」という列車名を選ばなくてはならない。
さらに、指定席なのに設備は「B寝台」を入れなくてはならない。
知っていればそれを入力すればすぐ出てくるものの、知らないと色々と試してエラーの繰り返しで係員がお手上げになってしまうというものだ。
私もある駅でこれを申し込んだ際に、10時になっても係員がマルスを色々と操作していて、切符が取れたとも取れないとも言わない。10時5分頃になって「取れませんでした」とのことだった。
「いや絶対操作分かってないやろ」と言いたいところだが、言ったところで指定が取れるわけでもないし、操作が難しいと分かっているなら事前に操作をこちらで調べておき、必要に応じて係員に伝えるべきだったので私の敗北である。
その経験から、操作が難しいもの(主にはまなすカーペット)は事前受付で1番を取っても安心せず、10時にその駅で見守り、必要に応じて操作を助言することにした。これだと10時打ちなのに早朝と10時に窓口にいる必要があり二度手間だが、これが確実に攻略するためには必要だった。

それに付随して、よく「この駅は10時打ちが上手いからよく取れる!」「この駅は下手だからよくない」みたいな噂を聞くことがよくあった。
これに関して思うのは、正直10時の時報とともに操作するのであればどこでやろうが変わらないという印象だ。国立にあるサーバーとの距離がどうこうという説もあるが、誤差の範囲だろう。
それよりも、駅によって差があるのは、前述の「10時打ちを本当に10時に打ってくれるか」の方だろう。そこの差は確かにある。
大きく分けて横浜のような大きい駅、尻手のような小さい駅と分かれるが、どちらも一長一短だ。
大きい駅はとにかく客が多いので1番手を取ること自体が難しい。ただ、職員は若手からベテランまで多数いるので、発券方法が分からないということはまずないだろう。
小さい駅は1番手が取りやすいのが最大のメリット。ただ、職員が少ないので、大抵はベテランの職員がいることが多いが、まれに詳しくない職員が担当で、操作が分からないという現象が起きることがある。それを考慮しても、やはり小さい駅のほうが私は好きだった。よく使っていたのは南武線の尻手と横浜線の大口だ。京浜東北線から1駅ずれただけで全然雰囲気が違う。

現代(2024年)
さて、その尻手や大口の窓口も今や閉店してしまった。大半の指定はネットで取れる。そんな現代の10時打ち事情とはどのようなものだろうか。
まず前の記事でも書いたとおり、えきねっとやe5489を用いたネットでの事前予約やセルフ10時打ちで取れないものはほぼない。取れないのはサンライズのツイン・シングルデラックスと銀河のファースト・個室くらいだろう。ただ、これらに関しては逆に窓口で取らないとほぼ取れない。
そこでみどりの窓口に行くことになるが、今や関東では大半の窓口が廃止。残っている窓口も10時以降のオープンとなって10時打ちを物理的にできなくしている駅もあるし、10時打ちはやっていませんという駅も多数。10時打ちできる駅は限られている。利用者が少ない駅へ小旅行してそちらで依頼するのが良いという結論に前回の記事で至った。
今回、ウエストエクスプレス銀河のファーストシートを2名(2席)で利用したいと考えている。
だが、10時打ちで複数席を確保したいときには注意事項がある。まず、設備の個室(サンライズやサフィールなど)に関しては、1回の操作で1室しか取れない。取りたい列車の情報を入力して、マルスの発信ボタンを押すことで予約ができるが、個室を2室取りたい場合は発信→個室確保→画面を戻す→発信と2回操作をしなくてはならない。2室目の操作については3〜5秒ほど出遅れる結果となる。それでもサンライズのソロやシングルなら全然取れるが、シングルデラックスを2室欲しい、といった場合は2箇所の窓口に分かれて10時打ちを1室ずつ依頼したほうが良いだろう。
指定席・グリーン席のような個室以外の座席については1回の操作で複数席を予約できる。
なので、銀河のファーストシート(グリーン席)を2席欲しい場合は、申込用紙に「銀河 グリーン 2名」と申し込めば良いかというと、そんなに甘くはない。
2席で申し込む場合、2席空きがないとマルスは席を確保してくれない。「2席は空いていなかったけど1席だけ取れた」と気を利かしてくれない。
もちろん、10時打ちではない通常の操作であれば、人数を1名に変更して打ち直せば1席だけ取れる。しかし、銀河のファーストのような、10時0秒の1秒間で売り切れる性質のものはそんなことやっていられない。
銀河のファーストは8席しかない。その状況で、10時0秒のバトルが発生している状況で2席取れるか?というと難しいだろう。
そこで、この作戦を考えた。もう席はバラバラになっても良いので、私と妻で2つの駅のみどりの窓口に分かれて申し込み、それぞれで銀河のファーストを1名利用で申し込む。これが複数名の必勝法だろう。
また、小旅行が必要なほどの小さい駅の窓口で本当にちゃんと10時打ちをしてくれるかも気になっていた。なので、全然違うエリアのA駅・B駅(具体的な駅名は殺到を避けるため非公表)の窓口に赴き、どんな対応だったかを記載しておく。

A駅
9時半頃に到着、先客なし。10時打ちをしたいと告げると、申し込みの内容を確認し、マルスに内容の入力をすませてくれた。
しかし「10時に他の方が並ばれていた場合はそちらが優先となります」とのことだった。マジか、とも思ったが、よく考えたら自分より後に10時打ち希望の方が来たらその人は自分より後の対応だろうし、通常の切符を購入希望の人が9時57分頃に来てしまったら、私がその人に事情を話して数分待ってもらえば何とかなるだろう。
ただ、窓口にはほとんど客の姿はなかったが、9時50分頃に2人並んでしまった。1人目は4分ほどで対応終了、2人目は切符の購入ではない問い合わせだったため、1分ほどで対応終了。その後は並ぶ人の姿はなかった。9時57分に「では10時打ちをやりますので」と駅員から声をかけられる。どうやら9時58分や9時59分に客が来たとしても、9時57分の時点で他の客がいなければ対応してくれるようだ。10時0秒、運命の瞬間。無事に確保に成功した。

B駅
9時半頃に到着、先客なし。10時打ちを依頼したところ、「申し込み内容を入力しておくので、10時前にまた来てください」と言われる。外に出ていても良さそうな様子だったが、窓口付近で10時まで待つ。窓口を利用する人は結局10時まで他にいなかった。9時57分、窓口に「対応中のため少々お待ちください」という札が出され、他の客の利用が物理的に止められる。そして10時0秒、こちらも無事に確保に成功した。

ということで、希望の銀河ファーストを2席確保することに成功し、たまたまかもしれないが席も近くの席だった。私が考えた現代の10時打ち攻略法は正解だった。
何でもネットで予約できるようになった現代、プラチナチケットを係員という他人の手を介して手に入れるという体験も、このみどりの窓口くらいだろう。自分の手で操作できないのでもどかしい面もあるが、係員に全てを託し、取れた喜びを係員と分かちあうのもこの10時打ちの醍醐味だろう。ネット予約は今後も進化すると思うが、現在の様子を見ていると、完全にネット予約で全て取れるようになり、10時打ちが廃止される時代はまだしばらくかかるだろう。
今後も10時打ちが必要な際はこの方法を活用していこうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?