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スタンプラリーの闇

いまJR東日本ではスーパートレインスタンプラリーという企画が開催中で、私も地道にスタンプを集めている。

その中で見かける文言は「スタンプ台紙は1人1冊でお願いします」とのこと。
ただ、スタンプを押していく人を見ていくと、大体半分くらいの人は2冊以上持って押印している。そしてスタンプが駅員から見えるような場所にあってもまず駅員は注意しない。これはどういうことだろうか。

1人1冊というのは、スタンプを一定の個数集めると景品と交換できるため、1人で何個も交換されては困るということだろう。それはその通りだ。
一方で参加者側はどういった理由で複数冊押しているのか。
まず「スタンプ自体を複数所持したい」ではないか。スタンプを押した台紙は記念に取っておく人もいるだろう。これを閲覧用と保管用で2冊とっておきたい、というのはよく分かる。また、スタンプ自体、押印が少しズレて失敗する可能性もあるので、その保険で2冊持つ、というのもアリだろう。
次に「一部区間は複数人で参加した」もありえる。特にスーパートレインスタンプラリーは50駅も巡る必要がある。最初は親子で巡ったものの、日程の都合上で残りは親だけ、子だけで巡るというのも十分あるだろう。
最後に「景品を転売したい」これも一定数いる。たまに10冊くらい持って押印してる人を見かけるが、間違いなくこのパターンだろう。

では逆に、「1人1冊でお願いします」と言いながら、なぜ複数押しまくってる人を鉄道会社は本格的に注意しないのか。これを本気で考えたところ、ある納得のいく結論にたどり着いた。
それは、「見かけ上の増収になるから」ではないか。
スタンプラリー自体は慈善事業でやっているものではなく、基本的には増収を目当てとして企画される。もちろん参加者に楽しんでもらうのも第一だが、その上でスタンプラリーを実施したうえで利益を出すことが必要だろう。
利益をどう計算するかは場合により様々だろうが、スーパートレインスタンプラリーであればエリアが休日おでかけパスエリアにおさまっているので、無理なく50箇所集めるのに3日かかると仮定すると、
「50駅の交換1冊につき休日おでかけパス3枚(2720×3=8160円)の増収」
みたいな計算をしているのではないだろうか。
実際は1人で10冊持っている人が10冊交換したら、絶対にそんなに休日おでかけパスを使っていないのに
「休日おでかけパス30枚(81600円)の増収」
と計算されるのではないか。
それでは真の増収にはなっていないのに、それで良いのだろうか。
もちろん1人で複数冊持っている人がいることは分かっているものの、「1人1冊でお願いします」と案内しているので複数冊持っている人は建前上いないことになる。
結果、スタンプラリーでの増収効果の計算は「事実上の水増し状態」で計算される。事実上の水増し状態なので、会社としては複数冊所持で利益が増えたわけではないが、スタンプラリーを企画した担当者の実績的には本来より多くの増収に貢献したという実績となる。多分この見た目上の数字が良ければOKというのは結構上の立場の人まで含まれるのではないだろうか。その結果、一応「1人1冊でお願いします」と形式上の注意書きは出すものの、特に注意しないという結果になっていると考えた。逆に、注意してしまうと(見た目上の)減収になってしまう。もしかすると「複数冊押しまくってくれ」と思っている職員もいるのではとさえ思える。

ただ、さすがに複数冊押しまくれる状況では秩序が崩壊するので、対策は必要だろう。今回のスーパートレインスタンプラリーでは「10駅のスタンプを集め、NewDaysで600円以上のお買い上げで景品と50駅用の台紙を進呈」となっている。これは上手く考えたなと思う。
景品の引き換えを自社グループのコンビニにすることで、NewDaysの増収にもなる。景品の交換で買い物をした人の金額もカウントし、その合計額が増収分として計上されるのだろう。
スタンプラリー参加者側にとって600円払わないと景品が貰えないと拒否感もある程度はあるだろうが、基本的には商品を購入した追加のおまけのような形で景品が手に入るのでそんなに損した感じはしないだろう。
ただ、複数冊プレイヤーにとってはそのメリットが大きく、痛くも痒くもないように思える。コンビニなので品物はスーパーで買うよりは高いが、弁当と飲み物でも買えば無駄なく600円が達成できる。腹が減ってない場合のおすすめはミンティアまとめ買い。
なお、一応「複数冊お持ちでも景品は1人1個のお渡しとなります」と書いてはいるが、少し時間をあけるなりして他の店員の所に並べば何も問題なく1人で複数の景品交換は可能だ。
なので、1冊あたり600円必要なため若干は複数冊の抑止にはなっていると思うが、どちらかというと複数冊やってくれた方がNewDaysの増収になるのでより嬉しいという意味合いの方が大きそうだ。

他に対策はないのか。
西武線では度々、アニメとタイアップしたスタンプラリー企画を行っているが、「西武線フリーパス(1000円)1枚につき台紙1枚と交換」となっている。
正直これが最も複数冊対策になると思える。複数冊やるためにはフリーパスを複数購入する必要があるので無駄な出費になり、1人1冊を守って参加する参加者側はフリーパスを活用して多額の出費をせずスタンプラリーに参加できる。
万が一、複数冊プレイヤーがいても、フリーパスを複数購入しているので見かけ上ではなく事実上の増収になる。

今回のスーパートレインスタンプラリーに関しては、50駅達成に関しては間違いなく休日おでかけパスが使われるだろうから、「休日おでかけパス提示で台紙1冊進呈」または「景品交換時に開催期間中の休日おでかけパスを1枚提示」(もちろん景品と交換したパスにはチェックをつけて複数冊防止)くらいやっても良いのではないか。もちろん1日で50箇所押すのは無理なので、2〜3冊の同時所持はできるだろうが、10冊やる人はほぼいなくなるだろう。
なぜそうしないのか。やっぱり見かけ上の増収が、ということなのだろうかと考えてしまう。

とはいっても、今回のスーパートレインスタンプラリーが休日おでかけパスエリア内だからパスと引換方式が検討可能だが、他の範囲で行われるスタンプラリーに関してはそうもいかないだろう。JR東はスタンプラリーに合わせた便利なフリーパスは基本的に設定しないようだ。
ただ、現状ではそもそもスタンプラリーが開催されすぎ
に思える。JR東のサイトでは、「首都圏スタンプラリー情報局」というサイトがあり、開催中のものが見られるが、今日時点で10種類開催されている。また、4月からはスーパートレインスタンプラリー並みの範囲であるプラレールスタンプラリーの開催も発表された。
恐らく、「増収のために何か企画をやらなくては...うーん、スタンプラリーかな」ということだろう。
スタンプラリーをやること自体は否定しないが、正直スタンプラリーは参加者にとって無駄に時間がかかるだけの作業だ。記念品が欲しいから半分仕方なく金と時間をかけて巡る。そんな感じになっていないだろうか。
そして恐らく、これだけ多く開催されていると魅力のないスタンプラリーはほぼ参加者がいない。そんな現状ではないだろうか。
「スーパートレインスタンプラリー」でTwitter検索すると、こちらは大変気合の入った企画なので参加者の楽しんでいる様子がたくさん上がってくるが、試しに千葉県で開催中の「奥房総スタンプラリー」で検索すると...実際に参加したと思われる人の書き込みは見当たらない。まあこちらはスタンプ自体も景品もデジタルデータなので、元々そんなに参加者は想定してないのかもしれないが、この状況だと少々寂しい。

せっかく予算を割いて企画をやるなら、「とりあえずスタンプラリー」ではなく、参加者が楽しめて、事業者も増収になるものをやりたいものだ。
その面白い企画を出すのが難しいのは間違いないが、ぜひ天才的発想を生み出してほしい。

ということで、スタンプラリーについて考えたことを長々と書きましたがスーパートレインスタンプラリー制覇まであと半分、楽しく制覇してきます。

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