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10時打ちの係員負担と不平等

ゴールデンウイークの1ヶ月前、臨時サンライズに乗るために「10時打ち」をした。10時打ちというのは、JRの指定券は1ヶ月前の午前10時に一斉に発売なので、人気の列車の指定券は1ヶ月前に午前10時にみどりの窓口に行き、発売開始時刻と同時に指定を取る。これが10時打ちだ。といっても、今回私が行ったのはネット上のe5489にて自分で10時に操作する「セルフ10時打ち」というものだ。今では窓口でないと取れない指定券はほぼなく、大抵は窓口に出向かなくても完結する。
今夏、今度はウエストエクスプレス銀河に乗りたいなと思ったので、同様にe5489でセルフ10時打ちに挑んだものの、惨敗。また、e5489には「事前予約」という昨日があり、事前に登録しておくと10時に指定を取ってくれる機能があるが、こちらも惨敗。e5489やえきねっとでは午前10時はアクセスが集中して動作が重くなるのと、みどりの窓口で機器を操作するよりどうしても入力が遅いため、1秒で売り切れるような超人気列車に関しては窓口で操作するのには絶対に勝てない。

ではみどりの窓口で10時打ちをしてもらおうと思ったら、近年は「事前受付は廃止しました」「並んだ順に対応します。10時前に並ばれても再度並び直していただきます。10時ちょうどの操作は致しかねます」と貼り紙がある駅が大変多い。そうなってしまうと、もはや数秒で売り切れてしまう銀河などに関しては取るのが大変難しくなっているのが現状だ。

なぜみどりの窓口は10時打ちをやらなくなったのか。これは、この前に記事にした18きっぷ以上に係員負担があったのと、10時打ちが逆に不平等を巻き起こすことがあるからと考える。

まずは「事前受付」について説明する。
私が勤務していた駅では、お盆や年末年始の1ヶ月前に限り、窓口の開店時刻(朝7時)から事前に申込用紙を預かり、10時打ちを確約するという「事前受付」を行っていた。旅客は10時に窓口に来なくてよく、仕事終わりの夜などに受け取ることができる。
この「事前受付」を通年やっている駅もあれば、全くやっていない駅もあり、これが不公平を生み、人気列車が更に取りづらい原因だっただろうと当時から考えていた。

どういうことかというと、私が学生時代に人気列車「トワイライトエクスプレス」を取った時の動きを書く。まず朝6時オープンの川崎駅で事前受付。次に朝6時半オープンの鶴見に移動して事前受付。さらに朝7時オープンの鹿島田に移動して事前受付。徒歩すぐの新川崎に移動して事前受付。さらに事前受付をやっていない中山に移動して10時丁度の時刻はそこで操作してもらう。
このように、開店時刻のずれがあるので、1人で事前受付の1番手(2番手以降だとまず超人気列車の指定は取れない)を何重にもできてしまっていた。
ちなみに5箇所で1番手を取り、10時打ちをしたが、トワイライトエクスプレスのロイヤルが取れたのは鶴見の1箇所だけだった。

そんな事前受付は係員側も大変だ。寝台の数が少ない設備等の超人気列車は1番手でないと取れないが、それ以外はムーンライトながら等の人気列車なら10時をある程度過ぎても取れる。なので、仕事等で10時に窓口には行けないが、なるべく早めに指定を確保したい、という方が多数事前受付を利用していた。私の勤務していた駅だとお盆の1ヶ月前で多くて30名ほどの利用があった。
実際、事前受付に来る人の申し込み内容は新幹線のぞみ号の指定が大半で、それだったらわざわざ事前受付しなくてもEX予約やえきねっとで取れますよ、と思うことはよくあった。
しかも、1番手の方は朝5時くらいから並んでいることも多々あったが、1番手はきっとサンライズのツイン(超人気、10時ちょうどに買わないと取れない)かなと思ったらのぞみ号だった、ということも多い。逆に4番目くらいに並んでいる人がサンライズのツインで、「まず取れないから今からでも周囲の小さい駅に移動したほうが良いですよ」と思うことも多々あったし、実際にそう案内したこともあった。10時打ちといえば鉄道ファンの利用が大半と思うかもしれないが、これらの「10時打ちしなくても取れるものを10時打ちしようとする」「1番手じゃないと取れないものを2番手以降に来る」一般の旅客の方がはるかに多い。

そんな内容の申込用紙を受け取ると、まず10時前、9時45分くらいに用紙の内容をマルスに入力していく。マルスにはワンタッチという機能があり、ボタン一つで登録した内容を呼び出せるというものだ。10時になってから一件一件内容を入力していては時間がかかり、指定が取れなくなってしまう可能性もあるので、事前受付の内容は全てワンタッチに登録、10時以降にスムーズに発券という流れだ。
そして10時に発券を終えると窓口の営業を再開して通常営業に戻る。しかし手元には事前受付で発券した大量の切符が。この内容が申込内容と相違ないかの確認と、旅客用に掲出する受付結果の表の作成などをする必要があるが、窓口には客が絶えないので、そんなことをしている余裕はない。そのため、こういった事前受付の処理は泊まり勤務を終えた者が残業で対応していた。これはまあまあな負担だろう。

やはりこの「残業の負担」「事前受付しなくても取れる申込が大半」「受付開始時刻のずれによる不平等」といった理由で、事前受付は2020年頃には順次廃止されていった。これは廃止すべきだと前々から思っていたので、当然の結果だろう。

では、「事前受付」を行わない時期に10時打ちを依頼されたらどのように対応していたのか。
私が勤めていた駅では、お盆や年末年始の1ヶ月前以外の「事前受付実施期間外」に「10時打ちをして欲しい」という依頼があったら、事前に内容を伺い、マルスにワンタッチ入力だけしておく。
大抵は9時50分前後に来る方が多いが、早い人だと朝7時頃から来る場合もあった。
そして、事前受付ではないので、10時まで窓口の付近で待っていただくよう案内する。
10時前までは他に並んでいる方の対応を行い、9時57分頃に一旦他の方の対応は切り上げて10時打ちの対応をする。それが終わり次第、引き続き並んでいる方の対応をする、という流れだった。
これなら事前受付と違い、1人1箇所しか申し込めないので平等だ。
この対応をする頻度はそこまで高くなかったが、やる時は結構気を使う。私のいた駅は利用者がそこそこ多い駅だったので、みどりの窓口は行列がほぼ絶えない。それを、10時打ちのために一旦遮り、数分間流れを止める。その間も行列が増えていく。9時57分頃に並んでいる方の対応を切り上げる予定が、誤操作などで操作に時間がかかってしまったりして10時が迫ってきてしまう。1番手で並んだ方の10時打ちを10時ちょうどにできず、指定が取れなかったらクレームものだろう。
そういった対応の順番を前後させるのがなかなか大変なので、結果として大半の駅が「並んだ順に対応します。10時前に並ばれても再度並び直していただきます。10時ちょうどの操作は致しかねます」となってしまった。確かにこれなら操作の順番は考えずに済む。

ただ、現状の「10時ちょうどの操作はいたしかねます」システムだと、1秒で売り切れる性質の指定(サンライズや銀河の人気設備)はもはや取ることができない。ではどうすれば取れるのかというと、10時ちょうどに操作してくれる駅で依頼するということになる。
10時ちょうどに操作してくれる駅とはどこかというと、「利用者が少ないため、そもそも10時の時点で誰も並んでいない駅」である。
私の住む四街道の最寄りのみどりの窓口は佐倉駅だが、ここは1日の乗車人員は1万人未満で、千葉以西の各駅と比べるとだいぶ少ない。それでも10時頃の様子を伺ったところ、平日でも3〜4人並んでいた。関東では窓口が大幅に削減されたため、窓口が残る駅に客が集中する。もはや一都三県で10時打ちはほぼ不可能だろう。
やるとしたら、みどりの窓口が現役かつ利用者の少ない駅を見つけ出してそこで依頼するのが確実だろう。具体的な駅名を書くと殺到してしまうので書かないが、もはや切符を取るために小旅行が必要なレベルだ。

とはいっても、10時打ちしないと取れないきっぷは本当に稀で、サンライズと銀河の一部設備くらいだ。JRとしては、それに乗りたいなら利用者が少ないみどりの窓口へ小旅行くらいしてくれ、その方が増収になるので。のような考えなのかもしれない。
みどりの窓口は廃止すべきという記事を書いたものの、現状では私が乗りたい銀河の切符は窓口で10時打ちしないとほぼ取れない。10時打ちは小旅行というのを今風のスタイルだと前向きに捉えて、なんとか銀河の切符を確保しようと思う。

※その後、無事に銀河の指定を取れたので、次回「10時打ち攻略法 昔と今」へ続きます。

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