クレーン 概略と資格
クレーンとは
重量物をワイヤロープ等で吊り上げることによって運搬するための機械装置
吊り上げ荷重が 0.5t 未満では、法令上クレーンやデリックに該当しない
【クレーン・デリック】
クレーンの定義:動力によって荷を吊り上げ、これを水平に運搬することを目的とする機械装置であり、吊り上げ荷重が 0.5t 以上のもの(ただし、後述の「移動式クレーン」を除く)
原動機として、三相誘導電動機が多く使用されている
クレーンの形式
天井クレーン、橋型クレーン(門型クレーン)、ジブクレーン、引き込みクレーン、壁クレーン、ケーブルクレーン、テルハ、スタッカークレーンなどがある
デリックの定義:動力によって荷を吊り上げることを目的とする機械装置で、マストまたはブームを有し、原動機を別置してワイヤロープにより操作されるものであり、吊り上げ荷重が 0.5t 以上のもの
デリックの形式
ガイデリック、スチフレッグデリック、ジンポールデリック、鳥居型デリックなどがある
必要資格:クレーン・デリック運転士など
【移動式クレーン】
定義:動力によって荷を吊り上げ、これを水平に運搬することを目的とする機械装置で、原動機を内蔵し、不特定の場所に移動することができるものであり、吊り上げ荷重が 0.5t 以上のもの
原動機として、直接噴射式ディーゼルエンジンが多く使用されている
移動式クレーンの形式
トラッククレーン、車両積載型トラッククレーン(カーゴクレーンとも呼ばれる)、レッカー型トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン、クローラクレーン(クローラは履帯 = 無限軌道 = キャタピラのこと)など
ちなみにクレーン機能付き油圧ショベルでクレーン作業をする際にも、移動式クレーンの資格が必要になる
また、陸上走行車のみならず、水上を航行するクレーン船(フローティングクレーン)もある
クレーン船 floating crane
起重機船、フローティングクレーン、浮きクレーンともいう、水上での重量物の運搬や設置などに用いられる作業船
船体は喫水(きっすい)の浅い平たい長方形の箱形で、船の長さほどの高さをもつクレーンが装備されている。旋回式と非旋回式がある。推進機関で航走する自航式と、引き船に引かれて移動する曳航(えいこう)式(非自航式)がある
日本には最大 4,100t の吊り上げ能力をもつクレーン船があり、世界最大ともなると 20,000t の吊り上げ能力をもつものまである
参考:起重機船日本TOP3
起重機船世界TOP5
業界で親しまれている以下の通称は商標だ
「ユニック」は古河ユニック
「ラフター」は加藤製作所
「オルター」も加藤製作所
ちなみに「キャタピラ」は元々「芋虫、毛虫」を意味する英単語だが、米国キャタピラー社の商標だ
必要資格:移動式クレーン運転士、大型特殊免許、大型免許など
ただし、後述するように船舶に設置されたクレーンを扱うには「揚貨装置運転士」の資格が必要となる
【揚貨装置】
定義:船舶に設置されたデリックやクレーン
陸から船、あるいは船から陸へ貨物を積み替える港湾での作業に用いられる
必要資格:揚貨装置運転士など
【資格の適用区分について】
(労働安全衛生法、クレーン等安全規則より)
◾️クレーン・デリックの場合
吊り上げ荷重が 5t 以上か未満か、クレーンの運転方式はどうかによる
クレーン・デリック運転士(限定なし)
・吊り上げ荷重に関係なくすべてのクレーンとデリック
クレーン・デリック運転士(クレーン限定)
・吊り上げ荷重に関係なくすべてのクレーン
クレーン・デリック運転士(床上運転式クレーン限定免許)
・吊り上げ荷重が 5t 以上のクレーンで、床上で運転するクレーンで、運転者が走行時のみ荷と共に移動する形式のクレーン
・吊り上げ荷重が 5t 以上のクレーンで、運転者が荷の移動と共に移動する形式のクレーン
・吊り上げ荷重が 5t 未満のすべてのクレーン
床上操作式クレーン運転技能講習
・吊り上げ荷重が 5t 以上のクレーンで、運転者が荷の移動と共に移動する形式のクレーン
・吊り上げ荷重が 5t 未満のすべてのクレーン
クレーン運転特別教育
・吊り上げ荷重が 5t 未満のすべてのクレーン
・吊り上げ荷重に関係なく、跨線テルハ
(クレーン等安全規則からは、5t 未満の跨線テルハについては、講習や教育の義務が課されていないように読み取れる)
つまり、上から順に上位互換となっている
◾️移動式クレーンの場合
吊り上げ荷重が 1t 未満、5t 未満、5t 以上で分かれ、クレーンの形式には依らない
移動式クレーン運転士
・吊り上げ荷重に関係なくすべての移動式クレーン
小型移動式クレーン運転技能講習
・吊り上げ荷重が 5t 未満の移動式クレーン
小型移動式クレーン運転特別教育
・吊り上げ荷重が 1t 未満の移動式クレーン
■揚貨装置の場合
揚貨装置運転士
・制限荷重に関係なくすべての揚貨装置
揚貨装置運転特別教育
・制限荷重 5t 未満のすべての揚貨装置
◾️玉掛け
クレーン作業でフックに荷物の吊り具を掛けたり外したりする作業には「玉掛け」の資格が必要となる。
玉掛け技能講習
・吊り上げ荷重 1t 以上のクレーンなどの玉掛け業務
玉掛け特別教育
・吊り上げ荷重 1t 未満のクレーンなどの玉掛け業務
扱う荷の重量ではなく、当該クレーンの吊り上げ荷重が基準となることに注意
【参考】
クレーン・デリック運転士 テキスト&問題集 (著)山本誠一
移動式クレーン学科試験 (著)山本誠一
世界大百科事典 第2版
日本大百科全書(ニッポニカ)
東京技能講習協会
(一社)労働安全衛生推進協会
安全衛生技術試験協会
https://axtu.org/床上操作式クレーン運転技能講習:講習情報/#:~:text=A:床上操作式クレーン,が必要になります%E3%80%82
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