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観ながら学べるサイレント映画史

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実際に映像を観ながら19世紀後半から1930年代までの世界のサイレント映画の歴史を学べるマガジンです。
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#エジソン

第5回 エドウィン・ポーターと映画の文法の萌芽

黎明期においては映画という新しいテクノロジーは観客を引きつける大きな魅力であり、動いているものを映像として見ることそれ自体が新しい経験でした。しかしながら、1896年に投影式の映画装置バイオグラフを開発したアメリカン・ミュートスコープ社を始めとする競合の会社が出現し、エディソン社はこれらの会社との競争に勝ち抜く必要に迫られます。第3回でお話しした法廷闘争もその対策の一つですが、映像コンテンツ自体の内容でも勝負を迫られるようになります。魅力的なコンテンツを作ることがひいては映画

第4回 騒々しい観客と「アトラクションの映画」

さて、前回の最後に、今回は映画の中で物語を語る技法が発展して行く話をすると予告しました。早速昔の映画製作者たちがどのようにして、クローズ・アップやカット・バックといった映画の中で物語を表現する技法を洗練させて来たのかという話をしたいのはやまやまなのですが、その前に当時の観客が映画をどのように楽しんでいたのか少し考える必要があります。私は前回、映画の中で物語を語る技法は映画製作者たちが映画史の最初の20年くらいをかけて徐々に作り上げてたと言いました。先月みなさんがご覧になった通

第3回 エディソンとその競争相手

前回はリュミエール兄弟のシネマトグラフについてお話ししましたが、今回は映画の起源に関わるもう一人の重要人物トマス・エディソンのキネトスコープについてです。リュミエール兄弟が行ったシネマトグラフの上映会が投影式であり、一方エディソンのキネトスコープは覗き見式であったため、20世紀的な映画観からはシネマトグラフの方が起源として重視されると言いましたが、かと言ってエディソンの発明の映画史への貢献も無視できません。 ウィリアム・ディクソンとキネトグラフエディソンのキネトスコープと書