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薄紅の頬

春の早朝は翠の匂い 私の心は浮遊し 絡繰の果て 空想の彼の地

亭午、あの華の香りを嗅ぐ 春の吐息

穏やかな優しい心にする香りである

櫻の花は上品だね そめいよしの この名前すら気品があるよ

薄紅 清楚可憐 静謐なる少女 

香り薄し それも良きかな 優美なり

顔を熱らせながらの善行 少女が席を譲る

平静を取り繕い 厳粛な顔 しおらしい

つつましい老夫婦 しわくちゃ笑顔 仁愛か

我々が最も愛すべき性質はこの車両に有るのだ

罪伴わぬ善行 私はそれを守る為に全てを捨てよう どんな怪物にも立ち向かうよ

厳粛、諦観、嗚呼なんてつまらない言葉

少女の優しい心が老夫婦を癒し 夫婦ははにかみ 私の目尻に小さき皺

この優しさに日々励まされる 浮世もまだ捨てたものではないね

天爵は尊し 我、人の世に愛の灯火を発見したり! 我はマリアなりや?

少女下車 歩く背後に花びらの幻想 今年は は早咲き

老夫婦下車 老爺の丸い腹 靡く白い長髪

我下車 一駅乗り過ごす 茫然と阿呆漢

ホームからは紅の蕾 良きかな 春の白昼夢

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