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議会を“見える化”する!

コロナ禍でも議会活動を知る機会をつくり続ける

コロナ禍でさまざまな制約がある中であっても、私たち市民が議会に関心を持ち、議論の「中身」をチェックできる機会を途絶えさせない

その決意のもとで制作したのが、「議会マイニング」であり、この度公開した「議会マイニング東京都議会」です。

このnoteは、議会マイニングについての説明と、制作に至った背景や目指したい社会の姿、それに課題と今後の展開を記したものです。

4年間の議会での発言を「見える化」するのが議会マイニング

議会マイニングとは、議会のウェブサイトで入手できる議会の「議事録」を「テキストマイニング」の技術によって分析し、頻出して登場する単語などを「わかりやすく」「一目でわかるように」示す可視化の手法(データビジュアライゼーション)です。

議会マイニングイメージ図3

ちなみにマイニングとは「採掘」(mining)の意味で、膨大な文字であふれる議事録の中から頻出するキーワードを「掘り起こす」イメージから、「議会マイニング」と名付けたのです。

議会マイニングを開くと、ある議員の発言を「ワードクラウド」「関連ワード」(専門的には「共起ネットワーク」)の2種類で表示できます。

スクリーンショット (399)

例えばこれは、ある議員の「ワードクラウド」です。ワードクラウド=「言葉の雲」という意味です。議事録の中で頻出するキーワードほど大きいフォントで示していて、「何を言ったか」が分かります(この例だと頻出している「豊洲市場」「築地」が大きく目立っています)。

スクリーンショット (398)

そしてこれが「関連ワード」です。「共起回数」といって、ある単語とある単語とが同時に出現する回数をカウントし、それらの単語の繋がりをネットワークの形で示したもので「どう言ったか」が分かります(この例だと、「教育」―「プログラミング」―「理数」などの結びつきがありますね)。

今回、自治体の議会として日本最大の規模である「東京都議会」を舞台に議会マイニングを制作し公開しました(2021年6月21日公開)。議会マイニングの元のデータが議会の議事録という性質上、これまでの4年間に東京都議会に議席をおいていた現職議員のものしか表示できない点はご了承ください。

それでは、実際に議会マイニングにアクセスしてみてください。

【議会マイニング東京都議会】 http://maniken.jp/gikai_mining/

「比較する」視点を重視したビジュアルに

私は、何かの決定をするためには複数の選択肢を並べて比較することが大切と考えます。議会マイニングもそこは特に重視した点です。

議会マイニングイメージ図4

議会マイニングを開くと、4画面に分割(スマホは2画面)されています。

気になる議員を選択して、4人を比べてみるのも良し、あるいはある1人の議員を選択して「2017年」「2018年」「2019年」「2020年」と4年間を経年で見ていくのも良し、「ワードクラウド」と「関連ワード」をそれぞれ表示させて見比べるのも良し、と使い方は様々です。

一人の議員だけでなく複数の議員、そして一つの視点だけではなく複合的な視点で、議会の中で何が話し合われたのか、議員はどんなことを発言したのか、という見方で是非議会マイニングを使いこなしてほしいと思います。

関心のある政策テーマを選んでいく「議会マイニングkeyword」

ところで、今回の議会マイニングは新たに「議会マイニングkeyword」という機能を追加したので合わせて是非試してみてください。

【議会マイニング東京都議会】 http://mining.pgw.jp/

気になる政策テーマを選んでいくと、そのテーマに言及した回数の多い議員を順にグラフで示します

グラフをクリックすると、議事録本文にアクセスでき、選択した政策テーマにアンダーラインを引いて目立たせています。実際にどのような文脈でそのテーマに言及したのか、本文で確認できるというのがポイントです。

直感的な操作でユーザーの興味をひくことを目的に、回数の多い順にグラフで示していますが、最も大切なことは発言の回数が多い/少ないということではなく、実際にどのような議論をしているのかという中身の部分ですので、最終的に議事録本文にジャンプするという点は特にこだわったポイントです。

議会マイニングイメージ図5

テーマの数は約700種類!気になるテーマを入り口に。

東京都が2016年に策定した「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年に向けた実行プラン~」の全文から政策テーマを抽出(一部手動もありますが)し、約700の政策テーマに絞り込みました。

東京都は、今後の都政の具体的な政策展開を示す新たな4か年の実施計画として、「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年に向けた実行プラン~」を2016年(平成28年)12月に策定しました。
◆東京都政策企画局ウェブサイトより:https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/actionplan-for-2020/

「ペット」も「スポーツ」も「博物館」も

さて、皆さんは、どんなテーマに関心がありますか?

都内のワンちゃん、ネコちゃんの飼育頭数は合計150万頭以上のようです(犬の飼育頭数 50 万頭以上、猫の飼育頭数は100 万頭以上とのこと)。

おうち時間の増加でペット需要の高まりから、短期間で飼育放棄に至る可能性を危惧する声などもあがっていました。犬猫など動物の殺処分をめぐる議論も都議会で行われていたようです。

こうした身近なテーマを一つの入り口にすることが、これまで議会の議事録を読んだり、そもそも議会の議論に関心のあまり無かった人々へのアプローチとして有効であると考えたのです。

(参考)東京都福祉保健局「東京都における犬及び猫の飼育実態調査の概要」(平成29年度) https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/aigo/horeishiryou/siryou.files/29shiikujittai.pdf
(参考)時事通信社2021年2月20日記事『コロナ下のペットブームに懸念 高まる需要、飼育放棄増加―愛護団体「命に責任を」』https://www.jiji.com/jc/article?k=2021022000189&g=soc

高齢者の健康増進、生活習慣の維持、地域コミュニティの活性化、子どもの教育、国際交流など幅広いテーマに通ずる「スポーツ」。今夏開催が予定されている東京オリンピック・パラリンピックの旬なキーワードはもちろん、これまでの4年間ではラグビーワールドカップも東京で開催されました。

身近な地域のスポーツ施設についてのキーワードから議会の議論を覗いてみるのも面白いかもしれません。

「アート」も「博物館」も「ドラマ」もはたまた「シェアサイクル」も、気になるテーマを一つの「きっかけ」にして、都議会でどのような議論がされていたのか、ぜひのぞいてみてください。

議員の4年間は市民との約束を実現するための4年間になっているか?

さて、なぜここまで議会での議論の「中身」に注目を促すような取り組みをしているのか?

それは、議員が議員として過ごす4年間(任期)を、選挙のときに私たちと交わした約束(マニフェスト)を実現するために使っているのか?ということを市民が確認できる場が必要と考えているからです。

マニ研顧問の北川正恭・元三重県知事は、候補者が自らの名前を連呼する「お願い」型の選挙から、実行期間や手法、事後の検証を明記した市民との「約束」(=「マニフェスト」)型の選挙へと転換することを提唱しました。

下の図のように、市民との約束=マニフェストを掲げて当選した議員は、4年間の任期を終えると次の選挙で再びマニフェストを掲げるわけですが、「間の4年間」の「中身」が、市民にとってどうしても見えにくいのです。

議会マイニングイメージ図2

東京都議会議員の任期は2017年からはじまったわけですが、4年後未曽有の疾病によって世界的パンデミックが起こるなんて想定していたひとはいなかったはずです。突発的に生じることへの対応が求められることは大いにあると思います。

一方で、4年という限られた時間を計画的に、戦略的に使って、選挙で私たちと交わした約束を実現するために議会活動を最大限活用する、そうした姿勢であって欲しいとも思うわけです。

そのうえで、次の選挙で、任期中にできたこと、できなかったことを検証し、市民に審判を仰ぐ――このようにマニフェストの循環を回していきそれを市民が評価する。
そのためには、選挙のそのときだけではなく、選挙と選挙の「間」にある議会活動に注目する必要がどうしてもあると考えたのです。

議会議事録に注目したワケ

議会活動を知るためには、いろいろな手段があります。例えば、議会を傍聴しに行くことが方法として考えられます。傍聴にいけば、自分が投票した議員だけでなく、ほかの気になる議員もどのようなことを議会で発言しているのか、自らの目で確認できます。

あるいは、議会の議事録を読む、という方法も考えられます。議員の発言の一言一句が文字起こしされて、ウェブサイトで公開されています。簡単にアクセスできますから、議員がどのような発言をしているのか確認できます。

しかし、いずれの方法も完璧ではありません。先駆的なところだと、休日や夜間に開催している議会もありますが、多くの場合は「平日の日中」に議会をひらいています。平日の日中に議会に足を運べるひとはそう多くはないはずです。

議会の議事録は、夜間であろうと休日であろうと自分の好きな時間にアクセスできるので良い方法かもしれません。

ですが、議事録は膨大な分量の文字の単なる羅列です。「見せる」ための工夫はされていません。詳しく読み込むのには、よほどの関心と時間が必要ではないでしょうか。

こうしたことを私は課題ととらえます。だれでも簡単に、そしてちょっとしたきっかけを入り口にして、議会での議論に関心をもってほしい、そこで注目したのが「データビジュアライゼーション」というわけです。

議会マイニングイメージ図1

議事録は情報の宝庫

幸い(?)役所や議会は文字にあふれる「文字文化」でした。大量の文字はデータビジュアライゼーションやテキストマイニングの恰好の舞台です。

むしろ、文字量が多いほどデータとしての蓄積が多量のため、好都合なのです。そして、すべての議員の発言が収録されている。しかも、それが有難いことに誰でもダウンロードできるオープンデータ、ウェブサイト上で公開されている。議会の議事録は「情報の宝庫」「客観的」「入手可能」この3拍子が揃っていたのです。

今後の展開

実際に議会マイニングをご覧いただいた方はお気づきかと思いますが、単語の抽出の精度では、まだまだ改善の余地があります。

話し言葉を抽出していることから、「不要な言葉」まで抽出してしまったり、「知事」や「議員」「○○局長」など役所・議会特有の言葉も多くあります。これらをいかに除外しながら政策テーマと本質的に結びついている言葉だけを抽出できるか、大きな課題として認識しています。

これまで様々なまちの議会で「議会マイニング」を制作し様々反響をいただいてきました。

さて、これからですが、最終的には「議会マイニングあなたのまちバージョン」をそれぞれの地域で自由に作ってもらえるようにしたいと考えています。ビジュアライゼーションの方法も、現行のものにこだわらず、もっと良い見せ方をみんなで考えながら、競い合うようにバージョンアップしあえるような状態が理想の姿で、引き続き議会マイニングの可能性を皆さんとともに探っていきたいと思います。

というわけで、最後まで読んでいただいてありがとうございました!
私たちが日々感じるあれやこれやの困りごとの多くについて解決策を話し合っている自治体議会。そこでいったい何が話し合われ、何が決定されていくのか、客観的に分析し、比べ、そして最終的には投票の際の一つの参考にしていく―「くらべて選ぶ」選挙の実現に向けて!

(著)早稲田大学マニフェスト研究所 ローカル・マネージャー 山内 健輔

早稲田大学マニフェスト研究所では、東京都議会議員選挙に向けて「各党・会派公約比較」、「公約できばえチェック」、議会改革の分析等をウェブサイトにて随時更新予定です。ぜひ合わせてご注目ください。
早稲田大学マニフェスト研究所:https://www.waseda-manifesto.jp/

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