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うらかたり 第26話

裏方が語る舞台の裏側の物語『うらかたり』と題して、どらま館制作部技術班が更新するnote記事企画。
年度も新しくなり、今回は第26話を公開いたします。

こんにちは。どらま館スタッフの中村です。

今年度第2弾の『うらかたり』は、劇団てあとろ50’所属の元木真珠さんに書いて頂きました。作中ダンスを踊ることの多い早稲田では、目立つことは少ないながら大切なセクションです。

それでは、よろしくお願い致します!

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初めまして、劇団てあとろ50’ 4年代の元木真珠(もとき しず)といいます。
4年代にもなると現場では初めましての人が少なくなっていって、それはそれで嬉しく感じるこの頃です。

普段は主に役者と舞台監督をやっているのですが、今回は振付ということで。ちょっと特殊なセクションですので、振付ってなんだ、というところからお話させて頂ければと思います。

あ、始めにお断りしておくと、私はダンスを習った経験がありません。私が振付を担当したのって実は2回だけです。どちらも同期の奥山ちひろと共作です。
そんなわたしですが、記事を書く以上は頑張って偉そうに語ってみます。お願いですから大目に見て下さい。

振付とは

まず、振付というスタッフはすべての公演にいるわけではありません。当然ながら、ダンスや身体表現を取り入れている公演にのみ存在します。
私の所属するてあとろでは、OPダンスをやることがあります。伝統と言うと大げさですが、他の早稲田の団体と比べると多い方なのではないでしょうか。
ダンスに限らずOPアクトや映像など、「オープニング」というアイキャッチを効果的に挟むことで、ここまでは導入だよ~ここからが本編だよ~と示唆し、お客さんをスムーズに入り込ませることができます。TVでは定番ですよね。

ではなぜダンスをするのか、というと。
先に挙げたダンス、アクト、映像の中で、最もお客さんの目を引く力が強いと私は考えています。役者の熱量が乗せやすく、かつお客さんはあまり身構えずに楽しく見ることができるからです。一方で脈絡なく感じられてしまったり、話の流れが途切れてしまったりとデメリットも生じやすいので、作品に合わせて手法を変えるのがベストですね。

振付のお仕事

では次に、振付のお仕事がどんなふうに進むのかをお話しようと思います。あくまでも私がこれまで取ったやり方に過ぎませんが、ご参考までに。

まず、依頼の曲を聞きながらやりたいことを考えます。早速雑な感じになっていますが、なんでしょう、自分からの要望とでも言いましょうか。こういう振り入れたいなーとか、フォーメーション複雑にしてみたいなーとか。細部でも全体でもいいので、何かしら自分や他者からの指定があったほうが作りやすいです。依頼主からの要望も含めて指定を列挙したら、いざ動きながら作りはじめます!

サビの頭の振りがぱっと思いつきやすいので、担当した2回ともサビの頭だけ何となく決めて、それに合うように前から作りはじめていました。

具体的にどうやって作るかというと、【拾いたいリズム】と【使いたい空間】で考えることが多いです。

曲自体に印象的なリズムがあればそれを刻む振りにしたり。それがない部分では、さっきは「1、2、34」で取ったから次は「123、4」で取ろう、みたいな感じです。伝わってます?これ。
空間についても同じ要領で、さっきは横移動の振りだったから次は下の空間を使おう、とか、ここで直線的にしてその次に曲線を、とか。

要は、流れで見た時に同じようなことの繰り返しになってしまわないよう、組み合わせを考えてそれを次々につなげていく、ということです。その際にリズムと空間という視点を主に使っているよ、ということですね。

実際の振付から具体例を挙げてみます。
2021年11月てあとろ企画公演『英雄』(元木はBメロ、サビの一部を担当)のBメロは特に空間を意識しました。兄妹役の二人の対比構造、かつ兄の振りを1拍遅れで妹が追いかける、という感じで作品の内容も絡めて作った部分がお気に入りです。
https://youtu.be/KPxrnAWwrcs

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あかなし×劇団てあとろ50’ 企画公演『英雄』 撮影: 久方涼楓様

2回目に作ったのが2022年5月てあとろ新歓公演『ゴールデン・ルーキー』。
役者の数が多かったことと、主宰の要望もあって、Aメロでフォーメーションを細かくつけた上でグループごとのパートに分けました。特に3、4グループ目を比較してみると、リズムの拾い方の違いが見えると思います。
ちなみにこの振付を作るちょっと前にAKB48「根も葉もRumor」という曲にはまって、似たような振りを入れました。そんな風に個人的な好みも大いに取り入れちゃいます。
https://youtu.be/rx0O2RJgDS4

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劇団てあとろ50’ 2022年度新歓公演『ゴールデン・ルーキー』練習中の様子  撮影: 元木真珠

頭で考えるだけでは浮かばないし、動けば何かしら生まれるので、どちらも半日稽古場にこもって一気に作り上げました。
作り終わったら主宰さんに動画を見せて、OKが出たら完成!お疲れさまでした~

と思いきや、作って終わりではありません。役者の皆さんに振りを教えて、時々ダンス指導をします。
指導とは言っても、私も役者さんの大半もダンス未経験者。上手い下手ではなく、まとまったひとつの振りになること、ひいては作品の一部になることを目指して練習します。

小屋入り中に、実際の舞台でダンス練習をすることも重要な行程です。
稽古場では再現しきれなかった段差や実際の広さで踊ることで、ここの移動むりかも!ここで人が被っちゃう!といった発見がしばしばあります…そんな時は振りを削ったり、位置を変えたりして微調整。
実際の舞台美術・音響・照明で踊っている様子を見た時は、ここの振付作ったの私ですが~?って心の中で威張り散らしてます。アンケートをチェックしてダンスを褒めるお言葉を探したりなんかしちゃいます。

さいごに

以上、振付についてのいろいろでした。長々と書いてしまいましたが、楽しさがちょっとでも伝わっているでしょうか。

ちょっと真面目なことを言うと、演劇を芸術として捉えようとすればするほど、その中でOPダンスというのはエンタメっぽく、学生っぽくて疎まれてしまうのは必然のように思います。要らないことも多いし、一歩間違えると内輪ノリに見えてしまうし。
だからこそ、作品と美しくマッチしたOPダンスの一種の正解みたいなものを、いつか作れたら幸せだな、なんて目論んでいます。

ご依頼も、待ってますよ…!!

元木真珠
劇団てあとろ50’ 46期(4年代)
役者のほか、舞台監督、振付として活動。
主な出演作は、2021年11月 劇団てあとろ50’企画公演『英雄』、2021年12月 劇団幻ノ國 第9回本公演『夜叉姫』など。

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