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どらま館相談室extra.:①「上演前の告知」
こんにちは。どらま館制作部の中西空立(たかはる)です。
10月から始まった「どらま館相談室extra.」。
11月は以下の内容で告知、開催しました。
【 📷どらま館相談室 extra.📷】11/30㈭のテーマは「上演前の告知」。最近定着してきた注意喚起。いつ案内する?ネタバレになる?劇作家や制作と実際の事例を共有しながら、トリガーワーニングについて考えてみましょう。もちろんテーマ以外の相談も大歓迎!浜田と中西が在室です。お待ちしています!
今回は「上演前の告知」について、どらま館制作職員の吉田さんの知見や調べた情報を眺めながら、これまでの経験や考えていることをおしゃべりしました。おしゃべりを通して考えられたことを、当日参加した中西がまとめてみました。少し量がありますが、読んでいただけたらうれしいです。
〈ポイントまとめ〉
・具体的な描写なのか、抽象的な表現なのか、は区別できる
・制作の目線として考える、創作の目線として考えない
・マニュアルは「掟」ではなくて、例外が許されるのがデフォルト
・目的は、個別例外なトラブルにこそ丁寧に対応できるようにする準備
〈「描写」と「表現」〉
まず確認したのは、映倫のレイティングシステム。「PG12」や「R18+」等の制限のことですね。(参考:Wikipedia「映画のレイティングシステム」)
ここで確認しておきたいのは、レイティングシステムの場合は判断基準はあくまで具体的な「描写」であって、見てどう感じるかという抽象的な「表現」のこととは関係がないということです。例えば、「人を殴って流血する場面」は暴力シーンとして勘定するけれども、「花瓶が割れる音で暴力を思わせる場面」はどうだろうか、という感じですね。
こうしたレイティングの目的は「どういう映画はどうやって上演したらよいか、を定める」ことであって、つまり観客へ配慮する目的はありません。(そこに手を出すと検閲の問題へ接近します)
それゆえ、つまり作品を自由につくることが許されるが故に、観客と作品との出会いによる出来事については、作り手が対処するしかないのです。
生身の上演で、舞台と距離が近かったり、途中退室が難しかったりする事情がある小劇場の演劇では、特に大切になるでしょう。
〈制作と創作の異なる目線〉
続いて演劇の上演前告知について、最近目にすることが多くなった「観劇あんしんシート」を見てみました。シートのチェック項目を見ると、抽象的なものも含まれます(「ホラー」「グロテスク」等)が、多くは具体的描写(「大きな音」「けむり」「怒る」等)が中心です。
また、この案内は誰に向けてつくられているか考えてみたところ、特に大切なものが次のように整理できました。
①劇場や観劇自体にあまり慣れていない人
②耐え難い不快、アレルギー反応、フラッシュバックなど、観劇が難しくなる条件がわかっている人
このように対象を具体的に想像することで、どういった点を告知すべきか、またはどういった点は告知不要か、が検討しやすくなるのだと思います。
ここで注意したい点は、こうした告知は、創作者の目線ではつくれない、ということです。
創作者は、「表現」での意図をもって「描写」に取り組んでいますから、必然性があります。一方、告知はある意味「表現」「描写」のリスクや是非を考えることです。したがって、少なくとも創作者の目線からは告知を欠くことは難しいのです。
制作の目線としては、事前に記載を検討し観客へ伝えることで、個別の問い合わせや申し立てに対応しやすく、つまり対応すべきものだけに集中しやすくなります。
また、そのような制作の目線から、自分達の作品が抱えているリスクを考えることは、作品が持つ影響力やポイントはどの箇所なのか考えることに繋がり(実は)稽古にとっても無駄ではないはずです。
〈マニュアルの意味〉
こうした告知の作成に関しては、ガイドラインやマニュアルを作ることが有効ですし、実際そのように運営している団体も多いでしょう。しかし、「これをすれば大丈夫」というような記載は不可能です。
ガイドラインやマニュアルですから、「法」とか「守るべき鉄の掟」ではなく、「必要コストを削減する手助け」くらいにしたいところです。「手助け」ですから例外が出て当然で、むしろそれが意義なのです。
「ここまでは必ずやる」「ここは都度判断必要あり」などのあるあるを共有することで一から全部やる必要が無くなって、例外的な事案=トラブルへ丁寧に対応できるような余裕とか遊びが残ります。また、読んで理解できるマニュアルを持っておくことで、それを元にすぐに説明や話し合いに入ることができます。これらの結果、きちんとした対応や謝罪がより迅速にしやすくなるでしょう。
〈結び〉
当然、すべてのトラブルを事前に完封することなどできません。
作品が人に何かを伝えるものである以上、決して人を傷つけないものを作ることも不可能でしょう。しかし外的判断によって作品の自由度が下がる、いわゆる検閲のような結果も望ましくない。
それならば、トラブルに誠実な対応ができる事前の準備をしておくこと、が大切ではないでしょうか。
具体的には、作品中の「描写」と「表現」に注目して、それらがフラッシュバックを引き起こす可能性や、世間一般的な不快感に繋がる可能性について、見積もりを立て、観客に向けて公開すること、になるでしょう。
当然、この話し合いやこの報告記事が、従うべきひとつの「掟」にはなり得ません。制作と創作のふたつの目線を使って、作品ごと公演ごとに、考えていくしかなさそうです。
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