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どらま館相談室extra.:②「よりよい稽古場」

こんにちは。どらま館制作部の中西空立(たかはる)です。

10月から始まった「どらま館相談室extra.」。
12月は以下の内容で告知、開催しました。

【 📷どらま館相談室 extra.📷】
12/21㈭のテーマは「よりよい稽古場」。 演劇の稽古場にトラブルはつきもの。ケンカはおろか深刻なハラスメントさえ起こるかも。 安全な稽古場について、先日「稽古場をより良くするための練習会」を主催された平野光代さんと一緒に考えます。ご参加お待ちしています!

元ツイートはこちら

早稲田大学演劇倶楽部出身で、新国立劇場演劇研修所を経て、現在も演劇の分野で活躍中の平野光代さんと一緒に、さまざまな話をしていきました。
平野さんは、様々な公演やWSへの参加の経験を踏まえ、自身でも自主的に「稽古場をより良くするための練習会」を開催されています。相談室では、その際に考えたことやわかったことなどもシェアしていただきました。


〈ポイントまとめ〉

  • 自分たちのルールをつくる

  • 座組の外で、座組での話をする

  • 単独でなんとかしようとし過ぎない

  • 現場だけでなんとかしようとし過ぎない


〈ルールを考えて、つくる〉


昨今では、稽古場でガイドラインを確認したりする機会も増えていますが、そこではいったい何を確認しているでしょうか。前回の記事でも出た話題ですが、ガイドラインなどの取り決めは、運用の中で必ず例外がでるものです。
WSやこれまでの経験を平野さんと共有するなかでフォーカスが当たったのは、自分たちでルールを決めることです。
平野さんが参加したWSでは、「稽古場ルールを考えるWS」を全員で受ける時間が設定されていました。稽古場は、初対面で顔を合わせてから数十日の間日中ほぼすべての時間を共に過ごし、さらに高密度なコミュニケーションを求められるという、かなり特殊な空間といえます。世間一般の通例をなんとなく適用するだけでなく、”この稽古場”の構成メンバーで、毎日活動していくためのルールを最初に検討しておき、それを使って振り返りを行うことで、お互いの気になる箇所や抱える事情をベースにした運営が可能になります。


〈座組を越えて、はなす〉


座組単位で演劇をつくっていて、自分が抱えている仕事や立場の困りごとを誰とも共有できないという辛さに直面したことのある方は少なくないと思います。その大きな原因のひとつは(当たり前ですが)座組にその立場にいる人間があなたしか居ないことです。
平野さんが特に重要だったと話していたのは、参加したWSにおいて毎日設定されていた振り返りの時間です。このWSでは同じ脚本で稽古を進める座組が複数存在したのですが、座組ごとの振り返りに加えて、役割ごとの振り返りも行われていました。座組を越えて、演出同士・俳優同士・演出助手同士が集まって、その日それぞれの稽古場で考えたことや各座組のルール運用を共有します。別の座組の話を聞くことで、座組内での自分の立場やその行動を、相対化して検討することができます。自分ひとりの尺度ではよくないことだと思っていた行動が案外効果的だったり、またはその逆だったりということが明らかになるのです。
ここで重要なのは、役割ごとの振り返りがWS期間中に毎日行われることだと考えられます。こうした役割ごとの話は通常、同業者同士の愚痴として演劇現場の外で、個人のレベルで語られることが多いように思いますが、それ故に現場の中では共有できない辛さが募ってしまうのではないでしょうか。毎日という頻度は座組のレベルでは困難だとしても、公演団体や界隈のレベルで扱い、こうした役割ごとの振り返りと共有を今よりも活発にしていくことは可能なように思います。


〈結び:単独でなんとかしようとし過ぎない〉


ルールを自分たちで決めたうえでそれに則って稽古場を運用すること/座組を越えて役割ごとで集まり、別の座組の話も聞いてみること。これらはそれぞれ、自分ひとりで稽古場をなんとかするのをやめること/座組だけで稽古場をなんとかするのをやめること、であり、現場と同じ場所で振り返りをしないようにする方法でもあります。単独で何とかしようとしすぎず、外部に繋がれるようにすることのよさについて、考えるような会になったと思います。

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