どらま館相談室extra.:③「ガイドラインをつくる」
こんにちは。どらま館制作部の中西空立(たかはる)です。
昨年10月から始まった「どらま館相談室extra.」。
1月は以下の内容で告知、開催しました。
〈ポイントまとめ〉
「誰へ」「何を」課すか考える
「誰が居て」「何をするのか」知る
コミュニケーションが成立すること=返事ができること
〈「誰へ」「何を」課すか〉
前回の記事では稽古場における「”自分たちで”ルールを決める重要性」を考えました。それに関連して今回トピックとして挙がったのは、「誰へ」「何を」課すか、すなわち適用の対象および制約の内容という観点です。
まずは「誰へ」について。例えばどらま館でのイベントで考えると、責任者は場合によって様々な立場の人になり得ます(大学、どらま館、教職員、予約団体、外部講師、有志学生etc…)。したがって、イベントの設計に応じてどらま館から誰に制約を求めるかは異なってきます。
サークル演劇で考えてみましょう。稽古場のハラスメントガイドラインであれば、対象は稽古場にいる人であり、演出や俳優に限定されます。しかし公演のハラスメントガイドラインということになれば、外注のスタッフはもちろん場合によっては当日の観客にもある程度の制約を課すことになるかもしれません。サークルのハラスメントガイドラインともなると、総会や合宿の場も適用範囲になるでしょう。
次に「何を」について。どらま館でのイベントの場合、公演以外にもトークイベントやワークショップなど様々な形態の企画があります。議論が白熱しそうなもの、身体的接触が避けられないもの、個人的な経験を強く引き出しかねないものなど、企画形態によって想定される危険は異なるので、ガイドラインの要求内容も的確かどうかをその都度検討することになります。
サークル演劇の場合でも同様に、状況によってフォーカスすべき行為が変わります。例えば稽古場では言葉と身体接触、仕込みでは安全管理や指導、総会では議論の仕方、といった感じです。
つまり、「”自分たちで”ルールを決める」とき、「誰へ」向けて「何を」課すものなのか、を決めることでそのルールを有用なものにすることができます。そして「誰へ」「何を」を考えるためには、「誰が居て」「何をするのか」といういまの状況を把握する作業が必然的に求められるのです。
〈そもそもハラスメントとは…?〉
そもそもハラスメントとは何なのか、「○○である」という断言ではなかなか言えないものですが、それでも考えていく必要があります。
例えばパワーハラスメントの場合、厚労省が作成している「あかるい職場応援団」には以下のように記載されています。
③については言わずもがなわかっていることですが、今回特に注目したのは①の記載です。
「優越的な関係」とは、上司と部下、教員と学生、先輩と後輩、といった例が挙げられますが、このような関係であるから直ちにハラスメント行為になるわけではないでしょう。とするならば、判断基準がプラスして何かもう一つ考えられるはずです。
話していく中で今回提案されたのは、「応答可能性があるかどうか」ということです。言葉であれば”言いかえせるかどうか”や”訂正を要求できるか”、行為であれば”やり返せるかどうか”や”拒否することができるか”という観点になります。
例として「高い脚立に登りなさい」という指示の場合を考えます。指示を受けた人が危険を感じたとして、「登れません」という返答が言い出せそうもない状態或いは聞き入れられない状態はハラスメント的と言えます。一方、「あ、そうなの?やめよっか」となる現場であれば権力差のある関係であってもハラスメント的とは言いにくいと考えられます。
また「人を殴る」という行為の場合を考えると、そのまま殴り返して取っ組み合いの喧嘩になった場合は(事件ではあるが)ハラスメントとは判断できません。しかし、暴力をふるった状況が何らかの理由で抵抗が困難なものだった場合、これはハラスメントであるという判断になると考えられます。
「優越的な関係」のすべてがハラスメントを起こす有害な状況というわけではなく、それよりも行為者と被行為者のコミュニケーションが成立し得る状況か否かが、ハラスメントを起こし得るか否かにおいて重要な観点になるのではないでしょうか。
〈作成してみました〉
上記の内容やその他さまざまな注意点を考慮しつつ、簡潔なものを目指し、この度ガイドラインの第一稿を作成しました。
詳しい内容は、こちらの記事からご覧ください。
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