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潰れたうなぎ

小さい頃は

嫌やったけど

今は

鰻がおいしい

小さい頃は

あんなに

鰻にあきあきしていたのに

今は

鰻がおいしい

でも

鰻て高くなりましたね

かなり高くなりましたよね

気になって調べたら

1990年頃から2000年頃は鰻の価値がすごく安かったらしいです

僕が4歳、5歳ぐらいから14歳、15歳ぐらいまで

その10年間ぐらいだけスーパーでも安く買えたぐらい鰻の値段は庶民的やったらしいです

僕は、

その頃

おそらく外国産の鰻をかなり食べていたと思います





5歳の夏

お兄ちゃんとお母さんと僕で

お家で昼ごはん

うな丼が出てきた

またや

普段サッポロ一番を食べている

普段にゅうめんを食べている

馴染みのあり過ぎる

赤いラーメン鉢で

うな丼が出てきた

またや

またやで

テレビでよく見る美味しそうな高級感のある重箱に入っていないことに毎回ガッカリしていた

でも、5歳年上のお兄ちゃんは喜んでいた

うなぎでいつも喜んでいた

うなぎが大好物だから

うなぎが食べれたら

それで満足のお兄ちゃん

喜んでいるお兄ちゃんのうな丼を見たら

自分のうな丼より

うなぎが一枚多くのっていた

自分だけがガッカリして

さらにお兄ちゃんと

一緒じゃないことに

腹が立った

一気に血がのぼり

「なんで僕のは一枚少ないんよ」

叫んだ

叫んでも怒りはおさまらず

「うあぁっ」

「うあぁ」

お兄ちゃんのうな丼と自分のうな丼に思い切りパンチをした

くっきり僕の小さい拳の形が

お兄ちゃんのうな丼と

自分のうな丼の真ん中にできていた

ヤバい、、

お兄ちゃんに

シバかれる

お兄ちゃんはうな丼の真ん中にできた僕の小さい拳の形を見て

指さして爆笑していた

お母さんも爆笑していた

ん?

お兄ちゃんが

「お前なんで自分のやつにもパンチしたん?」

と爆笑しながら言って

お母さんと

さらに笑いはじめた

僕の怒りは

ふわふわした

少し笑いが落ちついてから

お兄ちゃんが

「はい、一枚やるわ」

と言って

はしっこにあった

潰れていない

うなぎをくれた

僕の怒りは消えていた

お兄ちゃんに

なにも言えなかった

お兄ちゃんは

潰れたうなぎを

いつものように

美味しそうに食べていた

お兄ちゃんのマネをして

潰れたうなぎを食べた

お母さんは

たぶん

見ていないけど

微笑んでいたと思う

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