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言ったのは心の中

旧ガキ大将が転校した

「さみしいな」

現ガキ大将はガムを噛みながら

「別に」

現ガキ大将はベンチから立ち上がり

「ジュース買おうや」

「え、うん」

集会所の横にある自動販売機

「なぁ、お前さみしないん」

「タグ先に買えや」

「なんでいつも俺に先買わすん」

「えぇやん早よ買えや」

瓶のリアルゴールドを買った

現ガキ大将も瓶のリアルゴールドを買った

「またか、お前いっつもマネすんなや」

「なぁタグ、転校したらシバくからな」

「え、」

現ガキ大将は噛んでいたガムを俺の顔面に向かって吐き飛ばした


桜が咲いた春


家のチャイムが鳴り玄関を開ける

「おはよう」

学ランを着た現ガキ大将

中学の初登校

「お前遠回りやろ」

「えぇやん一緒に行こうや」

「隣の花谷小学校の奴らも一緒の中学になるな」

「どんな奴らやろな」

俺は1年5組

現ガキ大将は1年4組

5組に花谷小学校のガキ大将がいた

花谷のガキ大将と仲良くなり現ガキ大将に紹介した

意気投合し一緒に遊ぶようになった

エロ本で

アダルトビデオで

深夜番組で

エアーガンで

バス釣りで

ゲーセンで

ヘアースプレーで

ジェルで

古着で

メンチの切りあいで

仲が深まって

友達も増えた


現ガキ大将に約束を破られた

バス釣りに行く約束をしていた

現ガキ大将が待ち合わせ場所に遅れて来た

「遅いねん、あれ釣竿は?」

「俺行かへんから勝手に行けや」

「はぁ!?お前なんやねん」

花谷のガキ大将が歩いてくるのが小さく見える

それに気づいた現ガキ大将が俺を無視して花谷のガキ大将の方へ向かった

現ガキ大将と花谷のガキ大将は池とは違う方へ歩いて消えて行った

「なんやあいつら、俺らだけで行こうや」

他に約束していた奴らとバス釣りに行った

次の日

学校で花谷のガキ大将に

「お前、昨日どういうつもりやねん」

「いや、俺も知らんねん。あいつが急に行かへんて言うから、、」

現ガキ大将は学校を休んでいた

次の日も

次の次の日も

次の次の次の日も

ずっと学校を休んで

次の週も学校に来なかった

4組の奴らに聞いても誰も知らない

1つ上の現ガキ大将のお姉ちゃんに聞こうとしたら学校を休んでいた

現ガキ大将が住んでる団地まで行った

チャイムを鳴らして玄関をノックしても誰も出てこない

何度も現ガキ大将の家に電話をかけたが誰も出ない

担任の先生に聞いた

「先生、あいつなんで来てないんすか?」

「お前、あいつと仲良かったな」

「なんか知ってます?」

「本人の希望で言わんかったんやけど」

「なんすか、、」

「あいつな、転校したわ」

「えぇ!! 、、うそ、、」

「かなり急やって、最後に挨拶したらとは言うたんやけどな、、」

花谷のガキ大将に確認したけど何も知らなかった

他の友達も知らなかった

引っ越し先もわからない

連絡も取れない

家に帰り

部屋で1人

呆然としていた

「まこと~!電話やで~」

「電話~!」

オカンの声

「まこと~!!電話~!!」

「うっさいねん」

「あんたに電話や」

受話器を取り

「もしもし」

「タグ…この前ゴメンな」

「え、お前!!どこおんねん」

「ほんま…ゴメンな」

「だから、どこおんねん」

「言うなって言われてるから」

「どういうことやねん」

「ほんまに、ゴメンな、、」

「もうわかったからさ、」

「俺の家の玄関の横の扉あけて」

「え、なんで?」

「あげるから」

「何言うてんの?」

「ゴメンもう電話切らな」

「なぁ、ちょっと待ってくれや」

「タグのこと絶対忘れへんからな」

「おい、、」

電話が切れた

すぐ現ガキ大将の家に向かって走った

現ガキ大将が泣きながら電話していた声が俺を加速させた

荒くなった息のまま

玄関の横の扉をあけた

現ガキ大将が使っていた釣竿があった

釣竿を手に取ったら

込み上げる気持ちは

1つだけになっていた

「俺もお前のこと絶対忘れへんからな」


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