瓶の三ツ矢サイダー
瓶の三ツ矢サイダーが好き
お父さんのおじいちゃんのお葬式で長崎の家に泊まった
ボクは家族旅行と思って行っていた
7歳だった
木彫りの舟を浜辺で燃やして船を走らせながら花火を打ち上げて海におじいちゃんの骨をまいた
それが楽しかった
夏だった
一週間いた
毎日暑かった
山にカブトムシとクワガタを取りに行った
きれいな海に入った
川にカニがいた
全てに興奮と感動があった
墓地に初めて行った
お坊さんを初めて見た
お経を呼んでいるお坊さんを見て『あの人ハゲてる』とオカンにささやいて二人で笑いをこらえた
親父が駄菓子屋でコカ・コーラの冷蔵庫からファンタオレンジの缶を取ってプシュッと空けて一気飲みしてから金を払った
焦りながら親父に憧れた
駄菓子屋のおばあちゃんは何事もなく金を受け取った
不思議だった
初めてうな重を食べた
ほとんど食べれなかった
一生に一度の家族旅行
それは、おじいちゃんのお葬式
おじいちゃんと会った記憶はない
おじいちゃんと撮った写真が一枚だけあった
でも記憶はない
おじいちゃんの家で瓶の三ツ矢サイダーを毎日飲んでいた
最初で最後の家族旅行だった
あの時の瓶の三ツ矢サイダーの味が忘れられない