インゴ・スワン「リアル・ストーリー」(3)
リモートビューイング(遠隔透視:RV)の分野には3つの部門、つまり階層があり、さらにいくつかの非常に微妙な領域がある。「リモートビューイング」と名付けられた現象についての読者の理解を促すために、最初にこの3つの分野を取り上げる必要がある。しかし、後から考えると、これはおそらく別の名前で呼ばれるべきだったろう。
最初の部門は最も人目に付く。それは中央情報局(CIA)によって 1973 年に開始された遠隔透視に対するアメリカ諜報機関の長期的な関与に関するものだ。
諜報機関コミュニティの主流部門と、遠隔透視やいわゆる超能力スパイなどの周辺領域との混合は、20 世紀の最も大きな物語の1つだ。これは巨大な話であるため、メディアは散発的に、そのスキャンダラスな詳細を暴露したり推測したりすることを自らに課し、その結果、時折メディアの熱狂が起こり、その最初の熱狂は 1975 年に満開となった。
それ以来、「政府との関係」に関するいくつかのメディアの波や熱狂が去っていったが、最も最近のものは、1995 年後半から 1996 年初頭にかけての大規模な波だった。すべての波の中で、1995 年から 1996 年のメディアの波は最も情報が不足していた。そして、それが国民を誤解させる一連の情報歪曲を引き起こしたのである。
この特定のメディアの波は、すべての重要な問題の認識を混乱させ、一般に「超能力者」騒ぎに納税者のお金を無駄にしているとの疑惑で諜報機関を嘲笑の対象にした。
「政府との関係」が、秘密主義、超スパイ機関、超能力的愚かさなどで劇的に脚光を浴びる、スキャンダラスで大きな物語として一般に見られていることに疑いの余地はない。 ここにあるのは、実際の文脈から外れて誇大宣伝される内容だ。それは陰謀論マニアや機会を待っているハゲタカのような懐疑論者にとっては、非常に喜ばしく魅力的なものだ。多くの人は、スキャンダラスな話だけが本当の話だと考えている。しかし、それは本当の話の一部にすぎない。 本当の話は「政府との関係」という最初の部門のすぐ下にある。
この2番目の部門は、遠隔透視(RV)それ自体で構成されている。そもそもなぜ諜報コミュニティがそれに長期的な関心を抱いたのかという問題は、リモートビューイングが実際にどのようなものであるかに関係している。
ここで私たちは、RVを取り巻く非常に奇妙な現象に遭遇する。それは特別に指摘されない限り、ほとんどの人が気付かないだろう。 リモートビューイングが実際にどのようなものなのかについて、メインストリームのメディアが実際に知りたがることはほとんどない。そして私の意見では、大手出版社の上位5社がこの本の出版を拒否した理由もここにある。
私は 1972 年の初めから、特に科学者やメディア関係者のによるこの「無関心」に遭遇したが、驚くべきことに、他の超心理学者の間でも同様であった。私はこの現象について長期にわたり綿密な研究を行っており、本書はそのテーマにしばしば言及する。だが、リモートビューイングが実際に何であるかを知ることは、学問上の一般的通念や社会通念を変えることを意味する。ほとんどの人が知識を増やすという考えを支持するが、それが自分たちの「既存の現実」を破壊するのであれば、実際にそのようなことをしたいと思う人はほとんどいない。
リモートビューイングの基本的事実が可視化されていないもう一つの理由がある。 1976年以前に公開され、RVが遠距離知覚の経路であると特定したいくつかの文書を除けば、その責任は研究開発を開始した者とそれに資金を提供した者に容易に降りかかる。この場合、リモートビューイングは潜在的な諜報ツール、つまりその方法論を責任を持って守る必要があるスパイ活動の手段であると考えられていたため、基本的な情報が広く一般に公開されることを誰も望んでいなかった。しかし、CRV (統御されたRV)の概念と方法論自体は決して機密ではなかった。だからこそ私はその基本と詳細を示してこの本を書くことができたのである。
これについては共通の合意があり、そもそも誰も基本的なことを知りたがっていなかったという事実によってさらに守られていた。いずれにせよ、CRV の基本的な部分は、段階的に理解していかない限り、理解不可能な異質な言語のように見えるだろう。
しかし、リモートビューイングには、第3の部門がある。
最初の 2つの部門には、個人、研究プロジェクト、機関、およびより小規模な方法によるあらゆる種類の状況が含まれている。これまで述べてきたように、第1部門の中心となるのは「政府との関係」である。 第2部門の中心はリモートビューイングそのものである。
第3部門の中心は、私たちの種(人類)そのものであり、私たちの歴史の中で、人間がバイオマインド(生体知性)の超能力を本当に持っていることが語り継がれてきたということである。
たとえ社会的に反対されているとしても、あるいはそれについて無知であっても、私たちの種は超能力を持っている。この点を考慮すると、すでに説明した2つの部門の唯一の理論的根拠が得られる。そして、諜報機関がその行動をとった原因はまさにこの問題であり、リモートビューイングがその地位を誇示する機会を拡大した理由でもある。
ここで、ほとんど誰も理解していないことがある。
人間のバイオマインドの超能力は(遠隔透視はそのほんの一例にすぎないが)、人間の意識が従来認識されていた空間と時間、さらには物質とエネルギーの限界を超えることを可能にする種固有の能力として定義できる。もし私たちの種がそのような能力を持っていないとしたら、遠隔透視は絵空事であり、情報機関がそのようなものに関与することは愚かなものとして非難されるべきだろう。
一方、超能力が私たちの種の中に存在しないのであれば、直観、テレパシー、ピーク体験、創造的なプロセス、変性状態など、私たちは多くのものを捨てなければならないことにもなる。そして、物質、エネルギー、時間、空間に関して現在理解されている法則のみが(それが新たな発見により超越されるまで)存在し続けることになる。だが、このような能力が実際に存在するのであれば、それらの研究への諜報機関の参加は正しく、正当化されることになる。
この能力を嘲笑する西洋の近代主義の哲学と科学、 「超能力者」という言葉に対する固定観念的な偏見は異常なほどである。この状況はある程度広範に扱う価値があり、本書内で適切に扱われる。 しかし、ここで注目に値するのは、リモートビューイングが特定され発展する状況を引き起こしたのは、ソビエト連邦のバイオマインド研究と西側の心霊研究に対する固定観念的な偏見との衝突であったということである。 この衝突がなかったら、リモートビューイングは決して日の目を見ることはなかっただろう。
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