櫂【揺蕩うテナガエビ】:0024
埃が3㎝も積もる納屋を片付けていると、古い杉板を見つけた。
歴戦の埃だと、ねばっこく貼り付いて水をかけるくらいじゃ落ちない。
ゴシゴシこすって磨くと、驚いたことにそれは古い櫂だった。父がまだ幼いころ、田んぼの水路を舟で渡っていたという。その頃に使われたものだろう。
一枚板から切り出されていて、杉のまっすぐな木目が美しかった。
ふと思いついて、熱い湯が張られた浴槽にアヒルさんよろしく浮かべてみると、はっとするほど杉の香りが沸き立った。埃まみれで50年もしまい込まれていたの