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MONSTERが産まれるまで3〜原点回帰的サウンド〜

前回のnoteで書いた通り、本作MONSTERは、高校1年生の時に初めて書いたオリジナル楽曲をモデルにしている。

BPM(テンポ)が速く、ドラムは手数が多く荒々しい。ギターに至っては何を弾いているかわからないほど歪ませ、感情だけをぶつけたような演奏だった。曲の構成は、イントロ→A→B→サビ→短い間奏→A’→B’→サビ’→落ち間奏→ギターソロ→B’’→大サビ→アウトロと王道中の王道で、メロディはポップス寄り。歌詞は語感の良い単語だけを並べた意味があるようでない物語。

音源が手元にないのにここまで鮮明に思い出せるのは、この楽曲が俺の根源である証拠でもある。20年という長い月日を経ても、メッセージ性が抜け落ちた本音のない人間であることは当時も変わらず、モデルに相応しい楽曲だと改めて感じた。

楽曲の主軸となるギターサウンド。現在俺が使用している"テレキャスター"というエレキギターは、「ギャンギャン」といった鳴きわめくサウンドが特徴だが、当初はレスポールという甘く太いサウンドが特徴のギターを使用していた。

「ズンズン」と鳴らすブリッジミュートを多用する本作にテレキャスターは似合わないため、楽器屋をハシゴすることになる。10本以上試奏してもしっくりくるギターに出会うことが出来ず困っていたところ、既に所持していたギターエフェクター兼アンプシミュレーターであるBIAS FXに"Guitar Match"と呼ばれる興味深い機能があることを知った。

"Guitar Match"とは、所持しているギターをパソコン上で別のギターの音に変化させることができる面白い機能で、これを使用することによりテレキャスターからレスポールらしき音に生まれ変わったサウンドは、まさに俺が求めていたそれであった。

ギターのサウンドが決まったところで次は音作り。ギターとオーディオインターフェースを繋ぎ、BIAS FXを通して歪んだサウンドを作っていく。パソコンに表示されたUI上の仮想アンプ。歪みすぎかなと思うところまでGAINノブをまわす。キャビネットに立てるマイクの位置を調整しつつ、太いサウンドを目標に真空管を歪ませていく。

"良い"と認識しやすい音というのは、クリーンもしくはクランチ気味の聞こえやすく抜けた音だが、本作はモデルはあくまで高校1年生の俺自身。聞こえにくくうるさい音を目指してまわせるだけまわす。

ギターの音作りが納得のいくところまで進んだらいよいよ録音。前もってドラムとベースは打ち込み済。録音を初めて数テイク録ったところで、この楽曲の難しさ気がついた。表面上の格好良さを追求するあまり、頭で考えていたフレーズが自身の技量を超え、そのスピードに全くついていけないのだ。

この場合の"難しい"とは、コードが難解であるだとか、雰囲気が足りないといった洒落たものではなく、ただただ「速さ」の問題である。練習量、筋肉量、そもそもの技量の不足。前々回のnoteで綴った「怠惰な生活を送りながら、叶いもしない夢を追いかけようとする」自分を憎んだ。

しかしここで膝をつくわけにはいかず、10テイク、50テイク、100テイクとテイクを重ね、300テイクを過ぎたところでようやく納得のいく演奏にたどり着くことができ、1週間が過ぎた頃、1本目のギターの収録を終えた。

その後もう1本のサイドギターを録り終え、ソロのメインギターへ。昔からソロギターが大の苦手だったため、こちらはサイドギターより苦戦することになる。SNS上で知っていた演奏が上手いギタリストの動画を穴が空くほど見て、真似してを繰り返し、なんとかソロギターの収録も終えることが出来た。

数日後、出来上がったオケを持ってスタジオへ向かう。リハーサルスタジオに持ち込みのマイク、マイクプリアンプ、コンプレッサーを設置し、一番重要な歌の録音。

溜まったモノを吐き出すような歌い方をするメロディのせいで、慣れているはずの歌の録音も苦戦を強いられた。しかし、結果論だが苦戦して正解だった。何故しっくりこないのか、何故うまく歌えないのか、という疑問が本作のコンセプトとリンクし、最終的に表現したかった形を実現できたからだ。

その後、長い時間を使いミックスをし、友人や上司に聴かせては修正を繰り返し、遂に音源が完成した。何故このジャンルなのか、何故このメロディなのか、何故このギターを使って、このフレーズで、何故この歌い方なのか。全てに必然性のある、「本音のない」自分と深く深く結びついた音源が完成した。

作品は出来上がった。しかしこれを世の中に簡単にポンと出すのは絶対に嫌だった。それだけでは、たかが知れている。できるだけ多くの人に、いや、自分が出来る以上に、もっともっと多くの人にこの作品を聴いてもらいたい。聴いてもらって、俺という存在を証明したい。

DTMを初めて2年、コラボ以外で人に頼ったことはなかった。意地をはっていたのもそうだが、後ろ向きな性格が災いして、相談することすらできなかった。そんな自分が、1歩を踏み出す。たかが1つの作品のために、今までどうしても踏み出せなかった、あまりにも小さな1歩を踏み出す。

ー 突然ごめん。初めて自分の言葉で曲が書けたから、相談にのってほしい。MVって、どうやったら作れるんだろうか。

MVの本編公開は、明日、1月28日(金)17時。一人でも多くの人の耳にこの楽曲が届き、俺の思いを受け取ってくれることを心から願っている。

本作の使用音楽機材一覧

ハード機材

  • PC:iMac 27-inch Mid 2011 / macOS high Sierra

  • Speaker:ADAM AUDIO A5X

  • Speaker Cable:KLOTZ MC5000

  • Audio I/F:Focusrite Scarlett 2i4

  • Mic:Café  au Label AMATERAS 8097[S]

  • Mic Preamp:Golden Age Project PRE-73 DLX

  • E.Guitar:Fender Mexico Telecaster

  • Guitar Cable:BELDEN 8412

  • Mixer:MACKIE MICRO SERIES 1202 (初代青文字)

  • Trans:Café  au Label LineTrans 2ch.OEP (Carnhill)

  • Compressor:FMR Audio RNC1773E (Outboard)

  • Power supply:Pro Cable 超越重鉄タップ

  • Power supply cable:Pro Cable WATTGATE 米国製非メッキ透明プラグ

ソフト機材

  • DAW:Studio one 4

  • Drums:TOONTRACK SUPERIOR DRUMMER 3

  • Bass:IK Multimedia MODO BASS

  • Guitar FX & AMP:BIAS FX 2 / BIAS AMP 2

  • Strings:Native Instruments Session Strings 2

  • other:WAVES (Horizon etc) / iZotope (RX , VocalSynth 2 etc) / ANTARES (Auto tune) / …

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