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いのちの現場から(6)妊娠問題

画像 向かい(左)蓮田太二先生 

  (中央)大熊良樹理事長 (左)ひかり陽子先生

「救命の現場から」①~⑤で、妊娠相談の内情について述べました。⑥では改めて人工妊娠中絶について述べ、⑦~⑩では、いのちをまもるために参考となる事柄を述べたいと思います。
ここで改めて「人工妊娠中絶」の法律や、医療処置、中絶理由について確認してみましょう。
下記を読んでいただき、命の尊さと「中絶の実情」について考えていただければ幸いです。
人工妊娠中絶(じんこうにんしんちゅうぜつ、英: induced abortion)とは、人工的な手段(手術または薬品)を用いて意図的に妊娠を中絶させ胎児を殺すことを指す。刑法では堕胎と言う。俗語では「堕ろす(おろす)」とも。
人工妊娠中絶は、国内で合法的に「堕胎」を可能と規定した、1940年(昭和15年)の国民優生法から始まる。戦後、より中絶可能な範囲を拡大した1948(昭和23)年の「優生保護法」制定以後、中絶が爆発的に増加、さらに1949年の優生保護法の改正で「経済的理由」による中絶が認められるようになってから、日本の中絶が激増した。
一説には、日本人たちはアメリカ軍や映画、テレビで見たアメリカ中産階級の豊かな生活を模倣するために、産むと生活水準が下がると考えた子どもを、経済を理由に中絶したとする指摘がある。
(要注意)よく、国民的人気ドラマ「おしん」のお母さんが貧しさから口減らしのために「流産」するために、自らも命がけで 「冬の川につかる」シーンの話になります。
個々の家庭で「中絶」していたくらいだから、まして国家レベルではどんどん「中絶」していたのだろうなあと考えるかも知れません。しかし、逆なのです。

(1)母体の生死に影響がある医学的中絶、(2)優生学的な考慮に基づく優生的中絶、(3)社会的中絶と三種類ありますが、当時認められていたのは(1)の『母体の生死に影響がある医学的中絶』だけであったのです。
すなわち、基本的に国家レベルで特別な「医療的施術」以外の中絶を禁止していたからこそ、生きるか死ぬかの貧困があった時代。隠れて、しかも「命をかけて」川に浸かる様な危険な事までした…というドラマの内容なのです。よく考えれば、そうですね。あの状況では「母体」も危険でした。。その時代は、食べることもできず餓死したり「人身売買」されていたような時代です。今のような時代の「貧困」とは全く意味が違います。今、赤ちゃんがかけられる天秤は、多くが「娯楽」や「豊かさ」と天秤にかけられている事が多いのです。
現在公式には年間中絶数は19万人といわれていますが、皆さんは、実数だと思われますか?お腹の中の赤ちゃんの「救命の現場」では…その相談件数や、日常の聞き取り調査により、ゆうに3倍から5倍以上はいるのではないかという声が多いのです。まさに小さないのちが、今も「闇から闇に葬られ続けている」わけです。何と言う事か!!

〇中絶する周期ごとの違いについて
・初期中絶(~妊娠11週まで)
8週くらいから心拍が確認できる。11週までに妊娠証明を病院でもらい、妊娠証明書をもらう。母子手帳を保健センターでもらう。そうすれば「14回分の診察券」がもらえる。母子手帳は大切な健康記録でもあるので、いのちを守る親の会では悩んでいても「妊娠証明書」「母子手帳」をもらうことを勧めている。
1980年代にフランスのルセル社で開発されたミフェプリストン(RU-486)という人工流産を引き起こす薬が急速に広まったが、日本ではミフェプリストンは未認可であり、頚管拡張後、掻爬術(独:Auskratzung)や産婦人科器具(胎盤鉗子やキュレット、吸引器など)で胎児をバラバラにして取り除く方法(英語で「拡張と掻爬」という意味で D&C(Dilation and Curettage)とも呼ばれる)といった中絶術が、いまだに行われている。
・中期中絶(妊娠12週~21週目まで)
この時期は胎児がある程度の大きさとなるため、分娩という形に近づけないと摘出(中絶)できない。そのため子宮頚部を拡張させつつ、プロスタグランジン製剤(膣剤、静脈内点滴)により人工的に陣痛を誘発させる方法がある。日本では妊娠12週以降は死産に関する届出によって死産届を妊婦は提出する必要もあり、人工妊娠中絶の約95%が妊娠11週以前に行われている。
・後期中絶(妊娠22週以降~)
妊婦側の申し出による中絶は法的に認められておらず、また医療上の理由で母体救命のため速やかな胎児除去の必要性が生じた場合でも、早産の新生児が母体外でも生存可能な時期以降は帝王切開など胎児の救出も可能な方法を優先すべきである。
しかし、それが不可能な状況のとき又は他の方法を施しても胎児の生存の見込みが無いと判断されたとき、胎児の体を切断したり頭蓋骨を粉砕して産道から取り出す等の緊急措置が行われることもある。

〇中絶方法 ―ある産婦人科の広告より―
掻爬(そうは)法と吸引法の違いについて
初期人工妊娠中絶手術の掻爬法と吸引法を比較しますと、この2つの手術方法の手術操作による危険度の差はほとんどない。しかし、吸引法は使用機器の消毒方法において、器械に前回手術を行った方の血液や組織が付着したままになり易く、衛生面に問題が出ることがあるため、日本で中絶手術を行う医師の殆どは掻爬法を用いて人工妊娠中絶手術を行う。
1.掻爬法による中絶
手術方法:特殊なハサミ状の器具(胎盤鋏子)を使って、子宮内の胎児や胎盤を掻き出す。(日本で人工妊娠中絶手術を行う多くの医師はこの方法を用いて手術を行う。)
メリット:手術に使用する器具が非常にシンプルで感染症などのトラブルが起きにくい。
危険性:子宮筋腫などにより子宮の形状が変形していると、手術に時間がかかる。
2.吸引法による中絶
手術方法:筒状になった金属棒を子宮の中に入れ、そこに吸引をかけることで子宮内の胎児や胎盤などを吸い取る。
特徴:胞状奇胎などの特殊な病態の時に使用されることが多い。
メリット:手術時間が短く済むため、その分母体にかかる負担が減る。
危険性:使用した機器の洗浄や滅菌に手間がかかる。機器を正確に滅菌しないと感染症を引き起こす原因となるので、滅菌・消毒に時間がかかり、1日に2件程度しか手術を行うことができない。
人工妊娠中絶手術において、掻爬法と吸引法のどちらが良いかは、手術経験の豊かな医師であればその手術による後遺症の発生に差は出ません。
多くの大学病院で主として行われる手術法は掻爬法です。中絶手術自体が、結果に差がでるような難しい手術ではないので、同じように手術方法による差を出すことは困難です。
両方とも簡単な手術方法のため、その手術方法の違いで手術後に後遺症が出るとか、将来的に妊娠がしにくくなるなどのようなトラブルが発生する様な原因や差が出ることはありません。
つまり、使用する機器に対する慣れの差とは、例えて言うと、右ハンドルと左ハンドルの車を運転するのではどちらが安全かといったレベルの話であるそうです。両方のハンドルに慣れていたり、最初からその車に乗っていれば差はほとんどでないように、要は機器の扱いに慣れているかいないかの問題なのです。(中絶を車の運転に例えられる神経が信じれませんね。。)

〇中絶胎児の処理法
中絶胎児は、移植や難病の治療薬のために利用されることもあるが、12週未満の大部分の中絶胎児は医療廃棄物(感染性廃棄物)として廃棄される。一方、12週以上の死胎は、墓地埋葬法に規定する「死体」として火葬・埋葬すべきことが定められている。
2004年、横浜市の産婦人科が「一般廃棄物(不燃ごみ)として中絶胎児を処分していた」疑いで捜索されたことを受け、環境省および厚生労働省は法的な処理規定が曖昧だった12週未満の中絶胎児の取扱いについて各自治体へアンケートを実施し、「12週未満であっても生命の尊厳に係るものとして適切に取り扱うことが必要であり、火葬場や他の廃棄物とは区別して焼却場へ収集している自治体の事例を参考とするように」との見解を示した。

〇中絶する理由について
世界でも例がない事であるが、日本国においては、経済的事由により無条件で中絶が行われている。95%が親の都合であり、近親相姦、強姦、胎児の状況による例はわずかである。他の調査結果も同様である。
1% – 近親相姦や強姦による妊娠
1% – 胎児に致命的な異常がある場合
4% – 母体の健康
50% – 片親、夫婦間の問題
66% – 経済問題
75% – 自分たちの生活のため
(母子健康管理研究機関アラン・グトマハー研究所による)
強姦(犯罪)は1%。胎児の致命的異常1%。母体危機4%。これら合わせて6%です。それ以外は、「世間体」や「経済不安」や「男女関係」など親の事情です。極端な事例では「ディズ二ー」の年間パスのために中絶した人や、車のローンと天秤にかけて中絶したような方も多いようです。
中絶は赤ちゃんだけでなく母体も妊婦さんの心も傷つきます。
参考:人工中絶術後ストレス鬱(PASS)
「いのち」です。あなたが「赤ちゃん」でしたら「いのちだけは助けて!!」といいませんか?中には「貧乏で辛い人生なら」中絶した方が赤ちゃんのためと言いますが、本当にそうなのでしょうか。生きているからこそ「愛する人にも出会える」「家族もできる」「喜びもある」のです。できればあなたが育てて下さい。
もし無理でしたら「養子」「里親」制度を活用して赤ちゃんのいのちを救って上げて下さい。10万人以上のお母さんお父さんが赤ちゃんを受け入れる準備をして待っています。

〇人工妊娠中絶を回避するための諸制度
♥養子
中絶に至る人の中には、妊娠したものの社会的なバックアップを得られず、子供を育てる自信を失って中絶に至るケースがあります。
1973年には、宮城県石巻市の菊田昇医師が中絶を希望してきた女性に出産を奨励し、子供のいない夫婦に斡旋していた事件が発覚したが、この赤ちゃん斡旋事件をきっかけに、生誕した赤ん坊を実親との親子関係を消滅させ(従来の普通養子縁組では縁組後も実親との親子関係が並行して継続)養親の戸籍に入れて実子同様に扱う特別養子縁組制度が設けられました。
中絶や新生児殺害をなくす他の動きには赤ちゃんポストの設置が挙げられます。2006年12月15日、カトリック系の医療法人「聖粒会」が経営する熊本県熊本市の慈恵病院(蓮田太二理事長)が様々な事情のために育てることのできない新生児を引き取る為の設備「こうのとりのゆりかご」を計画しました。こちらは2007年4月8日に熊本市から設置の許可を受け、2007年5月10日から運用を開始しています。
(ご注意)安易な赤ちゃんポストの活用は勧めません。
私たちは「こうのとりのゆりかご」赤ちゃんポスト支援団体です。関西イン「こうのとりのゆりかご」の支援団体でもあります。しかし安易な赤ちゃんポストの活用は勧めません。赤ちゃんが「孤児施設」にいれられるからです。(多くの人が思っているよりも、孤児施設でも愛あふれる養育を受けているようです。しかし)「こうのとりのゆりかご」は、あくまでも赤ちゃんのいのちを守る非常事態の緊急措置だと思って下さい。
10年で100人以上の赤ちゃんのいのちが救われています。親がわからないと、養子への手続きが難しくなります(ここが大切!!)。その前に「匿名で良いですから」電話で相談すると、同じ「こうのとりのゆりかご」に託したとしても、スムーズに養子を見つけて下さり、赤ちゃんも「実の子として」育てていただけます。早い電話が大事です。事情があり困っての電話でしょう。身元は公になりません。安心下さい。

熊本慈恵病院理事長・蓮田太二先生と、いのちを守る親の会・大熊良樹理事長。右は京都大学医学部のY先生(いのちを守る親の会本部長・助産師)(平成27年)
♥里親制度
中絶件数や虐待被害を減らすために、18歳までの子供を他の親に育ててもらう事が出来る里親制度に関する条例を制定をしている自治体もある。参考:いのちを守る親の会(里親特集)

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