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好き、で染まった青春の1ページ

ひ:やっほ。ちゃんと部活やってるー?


サッカー部の朝練中。

幼なじみのひかるが多分暇つぶしにきた。

時間を確認すると、みんなが登校する時間より少し前。


〇:やってるよ。うるさいな

ひ:私と話してサボっていいの?

〇:そっちから話しかけてきたくせに…

ひ:応えるのが悪いんだよ?笑


ほら。やっぱり暇つぶしだ。

満足したのか嬉しそうに学校に向かっていった。


〇:なんで話しかけてくんだよ…


でも内心少し嬉しかった。

そして、ひかるが来る前より朝練が頑張れたのはここだけの話。



ひ:あ、課題やってきた?


教室に帰ってきて席に着くと

前の席のひかるに課題が完了済みか聞かれた。

この時点で次の言葉が予想できる。


ひ:課題見せて?

〇:やっぱりな。

ひ:わかってるなら、はーやーくー!

〇:嫌って言ったら?

ひ:嫌いになっちゃうかも。


嫌と言ったら、嫌いになる。

言葉では簡単だけど、そんなすぐ嫌いになられるのか?

でも少しでも可能性があるのなら避けたい。

大人しく課題を見せることにするか…


ひ:ありがと。これで嫌いにならないで済むね。

〇:ってことは、今は俺の事嫌いじゃないんだ?

ひ:あっ。まぁ…そうなるね。

〇:否定しないんかい。

ひ:否定すると思ってたんだ〜。笑


ひかるは何かとすぐに優位に立ちたがる。

そしていつも俺をバカにする。

まぁ、それが嫌ではないのだけど…

嬉しい、と認めたくない自分がいた。



"えー、だからここの答えが、 "


つまらない授業。

ただ流し聞きで聞いてる風を装っている。

今日もそれで乗り切ろうとしてると

前の席のひかるから消しカスを渡された。


〇:はい…?

ひ:あげる

〇:いや、いらないんだけど…

ひ:私もいらないもん


意味がわからない。

まず授業に集中しろ!ばか!

思ってるだけで声にはしない。

と、自分に話しかけてると今度は紙が渡された。


"ちゃんと授業に集中して!消しカス捨てたら怒るからね"


ほぉ。

そう来ましたか。

手紙みたいに、裏面に今度は俺が書いて渡した。


ひ:なにこれ…

"俺は、ひかるから話しかけられました!って先生にチクっていいんだよ?消しカスは捨てます。"


はい、

今度は少し怒ってるのか新しくまた文字が綴られている紙を投げられました。


"チクっても、〇〇も共犯だから一緒に怒られるよ。女の子からのプレゼント捨てるの?ありえない。"


あぁもう…めんどくせぇ…


"怒られたとして、ひかるは時々寝てるんだから評価終わるよ?ちゃんと考えて。"


"あーあ。そんなこと言うんだ。私は証拠の紙持ってるんだよ?私の方だけ完全に消して証拠品を提出してもいいんだよ?"


"言ってること普通にやばすぎ。友達無くすよ?"


"こんな簡単に友達いなくなりませーん。〇〇じゃないんだから"


"どういう意味"


"そういう意味"


あー、なにこいつ…

めっちゃバカにしてる…

ここは1個やり返してやるか…


"そんなこと言ってたら俺が離れちゃうかもよ?"


ひ:えっ…


…おっと?

なんか今声が漏れたような…そんなような…


"結局私の事嫌いにならないくせに!"


"さぁ?わかんないよ。もしかしたらね?"


"まさか、〇〇彼女いるの?"


いるわけあるか。

…え、ひかるって彼氏いるんだっ…け…?


"彼女いたら、ひかるとの会話付き合わないな"


"そっ。じゃあ彼女いなくて良かった"


えっ…なにこれ…

ほんとにどういう意味…


ひ:あっ…やっちゃった…。


俺に彼女がいなくて嬉しい。ってことか?

うん、待って、まさか…そういう…

いやいや!なわけあるか!

いや、そうなら嬉しいんだけど!!


"じゃあ、ひかる。ここの問題答えてみろ"



ひ:えっ!?

"なんだ?答えれないのか?"

ひ:すいません…


ほら。話聞いてないから。

内心ちょっと嬉しかった。


"じゃあ〇〇。代わりに答えてみろ"

〇:えぇっ…あっ、えーっと…

"はぁ…2人揃ってか…ほんとに仲良いな"

〇:別にそういうんじゃ…

ひ:一緒にしないでください…

"そうだなぁ…"



"ちゃんと授業受けれないんだったら、席離すように担任にお願いするからな?"



ひ:えっ…

〇: …すいません、気をつけます…


どうしても、それは避けたい事を言われた。

席が離れる。

高校生の俺からとったら最悪の問題。

ひかるがどう思ってるかはわからないけど、俺は嫌だった。

多分、これが俺の感情の現れだと思う。


この後、俺はちゃんと真面目に授業を受けた。

たったあの一言でこんなに集中できるんだから、やっぱあの力はすごい。

ひかるも静かになって真面目に授業を受けていた。



ひ:ねぇ、帰り暇…?


お昼休み。

いきなり振り返ったひかるからの唐突なお誘い。

まぁ、今日は部活も休みだし、


〇:暇だけど。

ひ:じゃあ…久々に一緒に帰らない…?

〇:いいけど…それはまた急だね。

ひ:だって…最近一緒に帰ってなかったし…!


ひかるにしては珍しい慌て方。

普通にただ、一緒に帰りたい、

ってわけでも無さそう。


〇:なにするつもり?

ひ:えっ?

〇:その感じ、なんかしようとしてるんでしょ?

ひ:あー…うん。さすが幼なじみ…笑

〇:で、なにするつもり?

ひ:えーっと…ちょっと…


…あっ、待てよ。

ここまで来て失言をしてる可能性があることに気づいた。

もしかして…そういうやつ…?

だとしたら、かなりまずい。

かなりの、かなり、まずいの、まずい。


ひ:新しいコンビニアイス買って欲しいな〜!って!

〇: …なんだよ…そういうことか…笑

ひ:なに考えてたの〜?笑

〇:うるさいな。ま、別にいいよ。

ひ:じゃあ玄関で待って、ますっ…


…なぜ敬語?

ま、疑いが晴れてよかったな。

…いや、よくないのか。

いっそ、そっちの方が嬉しかったかもなぁ…



ひ:どう?美味しい?


帰り道。

コンビニでちゃんと新商品のアイスを2つ買った。

俺が買ってる時にひかるは雑誌を見てたから、

一応…なんとなく…フリスクも買って食べた。

そして今は、ひかるが電車で通ってるから駅まで歩いている。


〇:ま、美味しい。

ひ:でしょ〜。


アイスは美味しい。冷たい。

でも俺の体の中には別の冷たさがあった。

熱くなってく心を冷まそうとしているような。


ひ:最近暑いね…

〇:そうだねぇ…


当たり障りのない会話ばっか。

初対面に戻ったかのような。

いつもとは全然違う2人の雰囲気に。

自然と2人の歩幅も小さい。


〇:なんか…歩くの遅くなった…?

ひ:〇〇こそゆっくりじゃない…?

〇:いやまぁ…それは…


答えは簡単。

ただ今日は、なんとなく

"2人で歩く駅までの時間を長く感じていたい。"

ただ、それだけであって、

俺からしたらかなりの理由だった。


〇:なんか色々あるんだよ…

ひ:なにそれ…笑

〇:うるさいな…


合わせられない目。

触れそうな距離で前後に揺れているお互いの手。

2人の雰囲気に、心に、熱く照りつける太陽。

柔らかい風になびく髪。

気持ちよさそうに飛んでいるカラスの鳴き声。

心の奥底から、喉の手前にまで出かける言葉。


そんな2人の情景が、2人の想いを近づけてくれた。


ひ:あのさ…〇〇って彼女いないんだよね…?

〇:え、うん、まぁ…

ひ:そうだよね…


少しの沈黙の後、

ひかるは立ち止まって、後ろから俺の手を掴んだ。


〇: …えっ?

ひ:ごめん、いつも冷たくして、ずっと気持ち隠してたけど…もう我慢できない…



ひ:私、恋してた……ずっと、〇〇が大好きっ…!



本当に時間が止まったようだった。

空気も止まって、時間がなくなったような。

ひかるしか見えなくて、

手を掴まれてることすら忘れて、

さっきの言葉が脳内に何度も響いて

目の前のひかるしか感じれていなかった。


〇:えっ…

ひ:なんでかわかんないけど、今日言わないとダメな気がした…好き、って伝えないと…って…

〇:そっ、かっ…


こんな言葉しかでない自分が嫌だった。

呼吸を整えて、煮えたぎったように熱い体を少しでも落ち着かせて

心の奥底にある感情を言葉にした、

ちゃんとひかるの目を見て、言葉に、


〇:俺もずっとひかるが好きだよ。ずっと、ひかるに片思いしてた。

ひ:えっ…ほんとに…?

〇:うん。俺達、両思いだったんだ。笑

ひ:そっか…よかった…笑


一気に体が開放されたようだった。

お互いに恥ずかしくなって照れ笑いをし合った。


ひ:じゃあ…これからはカップルってことでいい…?

〇:もちろん。よろしくね?

ひ:こちらこそ。笑


嬉しそうに笑うひかるを見て、俺は思った。

やっぱり、ひかるが好きなんだな…


ひ:ねぇ、ちょっとこっち来て…?

〇:えっ、なんで?

ひ:いいから…!


少し体と顔を近づけると、

いきなり、ひかるの顔が近づいてきて


ひ:んっ…


キスをされた。

柔らかい初めてのキスは、微かに甘くて、

お互いの好きを心に通わせてるようだった。


ひ: …初めてのキスしちゃったね…笑

〇:別に…いちいち言わなくていいよ…

ひ:ふふっ、照れてるんだ〜?笑

〇:うるさっ…あぁもう!早く駅行くよ!

ひ:えっ、ちょっと待って!


恥ずかしくて少し走ったけど、

ひかるに可愛く怒られてまたゆっくり歩いた。

2人の指を絡ませて、幸せを噛み締めながら。


太陽が沈みかけている夕方。

夏が始まろうとしている中、俺達も新たな関係が始まりました。

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